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エンドレスヒール#64 -3.11

3月17日(木)震災7日目

夕べ遅く、和美の夫が帰って来た。
一週間、会社で寝泊まりしたので、なんとか通常の時間帯に戻れそうだと言う。
昼間、向かいの奥さんにいただいた温かいご飯。
まさか、帰ってくると思っていなくて、一人で食べてしまったことに罪悪感を覚えた。

しかし、和美がそのことを言いかける前に、夫は玄関に入るなり首をかしげた。
「5丁目だけ、電気 ついてないな。」
昼間。向かいの奥さんが3・4丁目が電気がついた、と言っていた。
もしかしたら、夜には うちも電気がつくかと期待していたが 付かなかった。

「どういうこと?」
「帰る途中、ほかの団地や周辺を見て来たけど みんな電気 ついてたな。こっちも、1丁目から7丁目まで、全部着いてたけど。
・・・うちの周辺だけ、5丁目だけ ついてないみたいだ。」

何故??
そんな会話をした翌日。
夫は、震災前のように 朝 会社に行った。
相変わらず 電気は つかない。
そうだ。友達のところで、携帯だけでも充電させてもらおう。

隣の住宅地に、子供が幼稚園の時に仲の良かった人がいる。
今も、交流がある。
電話も通じたのだから、頼んでみよう。
隣の住宅地の友人は、二つ返事で了解したが、よくよく聞いてみると 隣の住宅地は電気は来たが水が出ない、という。

和美は、幼稚園時代の友人たちや、ご近所の方で水が必要な方に声をかけてくれるよう友人に頼んだ。
水は、和美の家では出ている。
少しでも 何か出来ることがあれば。
車で友人の家に行くと、すぐに携帯を電源に繋いでもらった。
それから、友人やそのご近所の方に頼まれた水を入れる容器を持って、再び家に戻った。

大きいもの 小さいもの。ペットボトル大・小。やかん や 水等。様々な入れ物に水を汲んだ。
5ドアの後ろのシートを倒して、乗せられるだけ水の入った入れ物を車に積み込んだ。

続く
2011年5月20日(金)

エンドレスヒール#64 -3.11

かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

次回 エンドレスヒール#65 へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nfd66a0452eff

前回 エンドレスヒール#63 は こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n3de642576583



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https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921

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水月あす薫SIRIUS
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