元祖 巴の龍#88 最終回
芹乃は粛清で刀鍛冶の修行を続けていた。そしてその傍らには、親方の作った大悟の矢と弓があった。
妻と三人の息子を失った丈之介は、一緒に新城に戻ってほしい、という洸綱のたっての頼みを断り、粛清で鍔細工を続けることを選んだ。
しかし、桔梗の太刀だけは、手放さなかった。
洸綱と葵は念願の新城に戻り、新しいくに作りに励んでいた。葵の元には夫・兵衛の形見である、涼原家伝来の太刀が残された。
一年の後。
「洸綱様!葵様、無事ご出産されました。母子ともに健やかでございます」
侍女の知らせで洸綱は自分の部屋を飛び出した。
孫が生まれた。涼原の血を継ぐ子が生まれたのだ。
「もうしばらくお待ちください。今、お引き合わせしますから」
産婆やら乳母やら、てんやわんやで走り回っている。
「洸綱様、どうぞ」
産婆に言われ、洸綱はやっと葵の部屋に入った。
「でかした、でかしたぞ、葵」
葵は床の中で微笑んでいる。
洸綱はそっと赤子を抱き上げた。そして少しだけ戸を開けた。
「桔梗、見るがよい。この子は兵衛と葵の子ぞ。わしと桔梗の孫じゃ。
おまえの子供たちが命がけで守ったこの国を、この子が受け継いでいくのじゃ」
朝の光が差し込んできた。赤子はまぶしそうに、顔を歪めた。
おわり
原案一九九四年平成六年一月二十四日(月)(ぼんやりとした夢)
思案二〇〇〇年平成十二年十一月一日(水)(先のいくさの後、桔梗と丈之介が逃げる途中で月の三つ巴の龍に助けられる)
二〇〇一年平成十三年十一月九日(金)(この作品、三人兄弟、とりわけ菊之介が主人公)
データ化二〇二三年令和五年一月二日(月)
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