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元祖 巴の龍#12(地図付き)
「ほれ、これだけあれば当分食いつなげるだろう」
闇夜になってから突然大悟が帰って来た。その手から三羽の山鳥と、やはり二羽のうさぎが落ちた。
「何を驚いておる。この母狼、生きれるかどうかはわからんぞ。
いずれにしろ当分は食うてゆくのに困るであろう。だが、後はこやつらの運しだいぞ」
「兄上・・・」
菊之介は大悟にしがみついた。
「兄上がどこかに行ってしまわれたかと思いました」
「俺がおまえを置いて、どこに行くというのだ」
大悟は菊之介の頭をぽんぽんと叩くと、頭をくしゃくしゃになるまで撫でた。
翌日、菊之介と大悟が旅立つ時、遠くで狼の遠吠えが聞こえた。
*****************サライの村
サライは海辺に面した漁村で、他国の船も出入りする商人の村でもあった。住む人も目の色も肌の色も服装も様々で、山育ちの大悟には見るもの聞くもの珍しかった。
菊之介は新城で姫として暮らしていたので、欲しいものは何でも手に入ったせいか、大悟ほど惹かれるものはなかった。
「菊之介、あの女子(おなご)たちは何をしているのか。きれいに着飾って店の前に立っているが」
大悟が覗き込むように見ていると、ひとりの女が近寄って来た。
「お兄さん、中にはいりませんか」
香水の匂いか、つんと鼻につく。菊之介はむっとした。
「兄上、いきますよ」
菊之介は無理やり大悟を引っ張ると、引きずるようにしてその場を離れた。
「ちょっと待てよ。何をそんなにカリカリしてるんだ」
「今のこと、芹乃殿に会ったら言いつけますよ」
「芹乃?なんでそこで芹乃がでてくるんだ。
菊之介、何か誤解してないか。芹乃とはただの幼なじみで・・・」
大悟が言い訳し始めた時、菊之介はもう別のことが気になりだしていた。
歳の頃は十いくつになろうか、少年が大人を相手に素手で戦っている。
続く
ありがとうございましたm(__)m
地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)
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【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名はこちら
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そして、またどこかの時代で
次回 元祖 巴の龍#13はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nf260928e9ebb
前回 元祖 巴の龍#11はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n9a6925682cde
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「巴の龍」(「元祖 巴の龍」の後に書きなおしたもの、一話のみ)はマガジンこちらから
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