見出し画像

トンニャン過去編#24 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

トンニャンはふふっと笑った。
「コーラ、天使とルームメイトになってしまうなんて、さすがに魔女の劣等生ね」
「ちょ・・・何よ、その言い方」
「悪魔には違いないけど、まだまだ魔女の修行も中途半端。努力という言葉とは無縁みたいね」
コーラはふてくされたように、足を組み横を向いた。

「チェリー、あなたは何故天上界からここに来たの?
コーラと、私の正体なんて探ってる暇があったら、やる事があるでしょう?」
「トンニャン、私は・・」
「ルーシーが気になるんでしょ。自分の思ったとおりに行動しなさい」
チェリーがまた何か言いかけると、トンニャンの姿がフッと消えた。
「コーヒーおいしかったわ。また、ごちそうしてね」
チェリーの耳に、トンニャンのささやくような声だけが残った。

 
 
翌日、チェリーはルーシーがスクールバスに乗るのを見計らって、同じ時刻のバスに乗った。そして、ルーシーが降りる時、少し遅れてバスを降りた。
「ここは・・・」
そこはロンドン郊外でも、アメリカのスラムのような小さな町外れだった。その古い、今にも壊れそうなアパートにルーシーは入っていった。

チェリーは、ただ呆然と立ち尽くしていた。
酷い、ここは酷い。こんな所に住んでいる人もいるのか。
しばらくすると、ルーシーが出てきた。チェリーは思わず近くのポールに身を隠す。
ルーシーは別人のように厚化粧をして、背中の大きくあいた派手なワンピースを着ていた。

チェリーがそっと後を付けると、近くの明らかに水商売と思われる飲み屋に入って行った。
チェリーはルーシーに声をかけられなかった。
店の前でためらいながら、再びルーシーのアパートに足を向けた。
ルーシーがあの飲み屋に遊びに行ったとは考えにくかった。
と、すれば・・・。

 
ルーシーのアパートの前で、またチェリーはためらっていた。
何をしようとしているのか、何をしたいのか、自分でも整理がつかなかった。
ドアにふれると、鍵がかかってないのか、ギギッと音がした。
「どなた?」
中から、年配の女性の声が聞こえた。チェリーは黙ってドアを開いた。
部屋の中は狭く、ベッドに身を横たえる女性が見えた。

「あの、私、ルーシーの友達で・・・」
女性は少し身体を起こそうとした。チェリーは急いで近寄ると、その身体をささえた。
「ありがとう。私がこんなだから働けなくて。ルーシーは、学校から帰るとアルバイトに出かけているの」
アルバイト・・・。
「あなたは?」
「あ・・・チェリー・エンジェルです。たいした用ではないので、明日学校で話します。
・・・おかあさまですよね?あの、ご病気なんですか?」

その女性、ルーシーの母は、ゆっくり瞬きをした。それから咳き込みだした。
チェリーは背中をさすりながら周りを見回し、近くのテーブルに用意してあったピッチャーから、ルーシーの母に水を飲ませた。
「・・・ごめんなさい。チェリー・エンジェル?主人も天に召されて、天使に囲まれているのかしら?」
「・・・ルーシーのおとうさま?」
「亡くなったの。あの人が生きてさえいれば、ルーシーにこんな苦労はさせなかったのだけれど・・・」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#24 ネッド・グラウンド(原題「天使チェリー」)


※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「チェリー・エンジェル」の続きです。

トンニャン過去編#25ネッドグラウンドへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n1ccbc6603a1a


トンニャン過去編#23 ネッドグラウンドこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n540896068c10

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

いいなと思ったら応援しよう!

水月あす薫SIRIUS
もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)