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元祖 巴の龍#19(相関図付)
来良(らいら)の冬はもう近くまで来ていた。年が明ければ、兵衛は十七、葵は十六になる。洸綱(たけつな)は時が近づいてきたのを感じていた。
ある日、兵衛(ひょうえ)と葵(あおい)を揃えて呼んだ。
「父上、改まって何の話ですか」
葵はいぶかしげに言うと、神妙に座っている兵衛にも目を移した。
「良いから黙っておれ」
洸綱に言われて、葵はいつもと違う空気に不安を感じた。兵衛は先ほどから静かに正座している。
「話というのはほかでもない。おまえ達も年が明ければ十七と十六になる。年明けを待って祝言を挙げたら良いのではないか、と思うのだが」
洸綱は二人の顔を交互に見た。葵は驚いた顔をしていたが、兵衛は覚悟ができていたかのように、顔色一つ変えなかった。
そして
「義父上、謹んでお受けいたします」
と手をついた。
「す・・・少しお待ちください。私は突然のことで何が何やら」
葵はあわてて言った。
「兵衛では不足と申すのか」
「い、いえ、そうではのうて、ただ心の準備が」
「じゃから、年が明けてと申しているではないか。もし異存がなければそのつもりで支度せねば。のう、兵衛」
兵衛はうなずくと葵の方を向き直った。
「わたしのような者で良ければ、夫婦(めおと)になってはくれまいか」
葵はにわかに自分の頬が染まるのを感じていた。そして下を向くと、こくりと首を動かした。
洸綱の部屋を出て、兵衛と葵は黙って歩いた。兵衛が外に出ようとして履き物に手を置いた時、やっと葵は口を開いた。
「兵衛、初めからこの話、知っていたのか」
続く
ありがとうございましたm(__)m
※相関図、写真が下手で、曲がってて、すみません。2001年作成。
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そして、またどこかの時代で
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