「ビジョンをイラストにしたい」と思った時に読むnote
「うちのビジョンをイラストにしたいんだよね!でも......」
ビジョンの可視化を専門にお仕事をしていると、このような言葉をいただく機会が増えました。しかし、詳しくお話を伺うと、なかなか一歩踏み出せない状況にあることが多いです。
先ほどの「でも」の先には、こんな言葉が並ぶことがしばしばあります。
組織や事業のビジョン(またはミッション、パーパスなど)をイラストで表現しようとすると、それなりの工数・予算・エネルギーを費やすことになります。「せっかく貴重なリソースをかけてつくったのに活用されなかった」という失敗は、確実に避けなければなりません。
こうした失敗から悲しい思いをする企業を1社でも減らしたいという想いから、本noteでは「ビジョンをイラストにしたい!」と思う方が満足度100%の作品を完成させるために知っておくべき「要件定義の知識」を7ステップにわけてご紹介しています。
発注前の基礎知識から制作後の活用イメージに至るまで網羅的にまとめているので、ぜひご自身のプロジェクトを進める中で必要な箇所を適宜ピックアップしてご覧いただけますと幸いです。
※「このページを見ればビジョンをイラストにする前に知っておくべきことがすべてわかる」という状態を目指して書いているため、本記事は約1万2000字超ほどあります。
「プロジェクトを推進される方が何度も立ち戻って読み直しながらご活用いただけるものを」と思い、制作しております。あらかじめご了承くださいませ。
◎簡単な自己紹介
自己紹介が遅れましたが、私は妄想アーキテクツ株式会社という企業で、言葉では伝わり切らない思考・概念を1枚イラストで可視化する「ビジョンピクチャー®︎」というサービスを展開しております、代表取締役兼ビジョンイメージデザイナーの髙松です。
ここ3年以上、毎日この仕事だけに専門的に向き合ってきました。
その中で、お問合せや商談の場面でよく質問される「あるあるな疑問」と、そのアンサーがまとまってきたので、一知見として発信したいと思います!
◎このnoteをおすすめしたい人
本noteは、以下のような方に届いたら嬉しいです!
※本noteでは、ビジョン・ミッション・パーパスといった「言葉では伝えきれない世界観」を総称して「ビジョン」と表現しております。自分が可視化したいものに置き換えて呼んでいただけますと幸いです。
◎Step1:制作フローの全体像から考える「適切な依頼先」の選び方
まず、「ビジョンをイラストにする」にあたり、以下の4つのフローがあります。
それぞれのフローの詳細はこちらです。
「イラストをつくる」というと、多くの方は④のフローのみをイメージされますが、実は「ビジョンを理解して構造化できる人(①と②と③)」と「実際に手を動かして描く人(④)」は異なる場合がほとんどです。
この違いについて、もう少し詳しく解説していきます。
▶Step1-1.「イラストの要件定義をする人」と「イラストを描く人」は違う
企業のビジョンをイラストにするためには、「イラストを描く以外のスキル」が必須です。
・企業理念や事業内容、組織カルチャーを深く理解するビジネススキル
・経営者や現場社員へのヒアリングスキル
・ヒアリングで得た膨大な情報を構造化して整理するスキル
・構造化した情報を1枚のイラストの中に適切に配置するスキル
・お客様とのディスカッションにおける場のファシリテーションスキル
……などなど、イラスト以外のスキルもフル動員してラフ制作を進めていく必要があります。
一般的なイラストレーター(=イラストを描くことが専門の方)の方は「イラストを描くこと」がメインの業務となるため、ヒアリングをする習慣がなかったり、そもそも経営者が語るビジョンの内容を理解できないという場合があります(※もちろん個人差はあります)。
そのため、イラストレーターの方にビジョンのイラスト化を依頼する場合は、「こういう目的でこういうイラストを描いてください」と具体的に指示する必要があります。
言い換えると、「イラストを描く前工程」のいちばん大変な部分を自社でやる必要があります。
とはいえ、図のように「こんなイラストをお願い」と完璧な完成イメージを提示できれば困らないのですが、「こんなイラスト」がそもそも一体どんなものか分からないのでビジョンをイラストにされたいという方が多いかと思われます。
このような場合、次に紹介するチーム体制でプロジェクトを組み立てるケースがほとんどです。
▶Step1-2.ビジョンをイラストにするための一般的なチーム体制
イラストレーターだけではビジョンがイラスト化できない場合、コンサルタントやディレクターを混ぜた下記のようなチーム体制で制作に臨む場合が多いです。
このような体制であれば、「活用できるイラスト」ができ上がる可能性が格段に高まります。
ただ一方で、プロジェクトに関わる人数が増えると人件費がかさむため、予算は膨らみがちになります。
プロジェクトの期間や提供内容等に応じても変動しますが、大企業の場合だと1,000万円〜が予算の最低ラインになると耳にすることもあります。
また、分業体制なので、デザイナーがよい作品をつくれるかどうかが「ディレクターの腕」に左右される確率が高まります。
デザイナーがクライアントと直接話すことなく、プロジェクトが進行する場合、「あれだけ濃密な議論をしたのに、デザイナーまで伝わっていなくてぼんやりとしたアウトプットになってしまった」という失敗エピソードを耳にすることも少なくありません。もし不安であれば、デザイナーの方にも打ち合わせの場に同席してもらったり、議論に参加してもらえるようなチーム編成でプロジェクトを進行すると良いかもしれません。
▶Step1-3.要件定義から制作までを一気通貫で行えるケース
特殊なパターンですが、すべて一気通貫で担う専門家もいます。
妄想アーキテクツの髙松(私)もその1人です。
このパターンの場合、分業するよりもコミュニケーションの齟齬が少なくなるため、クライアントの想いをダイレクトに作品に反映できる点がメリットになります。
要件定義フェーズも伴走するため、イラストが活用されずに形骸化してしまうリスクを防ぐ観点を持ちながら制作できる特徴も強みと言えます。
しかし、日本ではこのような専門家は少なく、私自身もまだ出会ったことがありません。
なので、短所としては「プレイヤーの母数が少ないので出会いにくい」「抱えられるプロジェクトに限りがある」という側面があると言えます。
(余談ですが、そのため弊社では全フェーズに対応できる人材育成を目下推進しております!)
◎Step2:イラストにできること・できないことを知る
世の中には、記事や動画、写真、漫画など、さまざまな表現手段が溢れています。
「なぜわざわざビジョンをイラストにするのか?」「イラストだからこそできることとは何か?」を整理してから制作物を決めないと、
・後から「やっぱりあっちを作ればよかった......」となる
・別のメンバーから「他の表現手段ではダメなのか?」と言われてプロジェクトに巻き込みにくくなる
といったことがよく起きます。
そのため、プロジェクトの具体的な部分を詰める前に、まずは「イラストにできること」を把握するのが先決です。
▶Step2-1.私たちの思う「イラスト」だからこそできること
あくまで私たちの目線ではありますが、漫画や映像をはじめとしたイラスト同様に視覚的に訴える媒体と比較した際の「イラストだからこそできること」をこのパートでは紹介していきます。
①一目で直感的に意味を理解してもらえる
漫画や動画の場合、どんなにつくり込んでも、見るにあたって数十秒〜数分間は相手を拘束させてしまいます。さらに、ページをめくってもらったり再生ボタンを押してもらったりといったように、受け手側が能動的にコンテンツを体験しようとしないと中身が見られないという制約があります。
一方、イラストの場合、そうした受け手の主体性を求めなくとも、パッと目にしただけでコンテンツを体験してもらえる強みがあります。
イラストの細かな点まで隅々まで見てくれるかどうかは別の問題になりますが、「大枠として、こういうことが書いてあるイラストだな」と直感的に認識してもらうことが可能です。
コンテンツを体験してもらいやすいことから、他の表現手段よりも人の記憶に残りやすいので、「あのイラストの会社ね」と思い出してもらいやすいという強みも兼ね備えています。
②説明の仕方をTPOに応じて多様にアレンジできる
イラストの場合、人によって語り方や語る時間を変えられるという特徴があります。
ビジョンについて社長が語る時もあれば、現場社員が語る時もありますし、1分で語ることもあれば、1時間語ることもあります。
語る人や場面に応じて、説明をアレンジしやすいのがイラストの特徴です。
漫画や動画の場合は、誰でも同じようにマニュアル的な説明ができる強みがありますが、最初から最後まで全部見ないと中身が伝わり切らないため、上記のような説明時のアレンジが効きづらくなります。
また、ストーリーもすでに決まっているので、「自分なりの解釈でビジョンを語りたい!」と思ってもそれが叶いにくいという側面があります。
③社外広報から社内研修まで活用範囲の幅が広い
オフィスに飾れるのはもちろんのこと、HPのキービジュアルや社内イントラのヘッダー画像、名刺・クリアファイルをはじめとするノベルティなど、毎日目にしてもらいやすいツールに展開できる点が特徴です。
飾ったりグッズにすればパッと見て自然と目に入るようにできますし、漫画や動画のように「PCやスマホがなければ見えない」といった制約が少ないのも美点です。
また、ビジョン理解研修の学習素材としても活用することが可能です。
弊社のこれまでのお客様の例でいくと、絵の内容を自分の言葉でプレゼンできるような研修を企画されたり、「みなさんはこの絵の中のどこで何をしていたいですか?」といった問いを中心にワークショップを開催される企業様がいらっしゃいました。
▶Step2-2.「イラスト」の種類とそれぞれの長所・短所
一口に「イラスト」といっても、図解的なポンチ絵から抽象的なアート作品まで、種類はさまざまです(実際、商談の場で「この場合は図解の方がマッチしていますね」とお伝えする場面も少なくありません!)。
ここでは、よく質問を受ける3種類のスタイルを比較する形で、それぞれの特徴を整理してみました。弊社のサービス「ビジョンピクチャー®︎」も入っており大変恐縮ですが、他2種類との違いがより分かりやすくなるかと思います。
どのスタイルを選ぶかは、左脳的な「説明力」と、右脳的な「世界観(ワクワク力)」のバランスをどうとるかで決まることが多いです。
また、「イラスト」といった時に、描き手となるイラストレーターやデザイナー、アーティストによって、得意なイラストのスタイルは異なります(私は抽象的なアート作品は作れません!)。
そのため、イラストに求める期待や役割に応じて、どのスタイルのイラストを作りたいかを事前に吟味した上で、どの人or会社に依頼するかを検討するのがオススメです。
◎Step3:失敗しない「イラストの制作目的・ゴール」の設定方法
お問い合わせを受ける中で、
と、いきなり具体的なお話を受けることがあります。
ただ、イラストの目的・ゴールが無いorブレている状態で、いきなりこの手の話をすると危険です。
上記の質問は、「イラストの制作プロセス」「成果物となるイラストそのものの内容」「イラストの活用方法」の3つに分類できますが、あくまでそれらは「目的・ゴールを達成するための“手段”」です。
なので、まずは上記の3つを通じて、「何を成し遂げたいのか(=目的)」「成し遂げる上でどんなマイルストーンをクリアしなければならないのか(=ゴール)」を解像度高く設定してから、プロジェクトや成果物の詳細を詰めていくのがベターです。
▶Step.3-1「目的とゴール」の解像度は“5W1H”で書くと高まる
「目的?そんなもの明確だよ!」という自信のある方はスキップしていただいても構いませんが、目的の解像度が低い場合と高い場合でどのような差が生まれるのか、「理念浸透」をテーマに下記に例を挙げてみたいと思います。
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<A社の場合>
■目的:
創業●周年のタイミングで、リブランディングしたビジョンが社員に伝わるようにする。
■ゴール:
・全社会議の場でお披露目できるイラストを制作する。
・ノベルティグッズにして配布する。
<B社の場合>
■目的:
創業●周年のタイミングで、社長だけではなく、経営層・リーダー層が自分の言葉で会社のビジョンを語れるようにする。
■ゴール:
・経営層・リーダー層が語りたくなるようなイラストを制作する。
・経営層・リーダー層がビジョンを語る上で必要となる情報が盛り込まれたイラストを制作する
・経営層・リーダー層以外の社員もイラストの内容を自分の言葉で語れるようになるためのビジョン浸透ワークで活用する。
・オンライン・オフライン問わず、日頃からどこでもビジョンを語れるようにツール展開をする。
============
A社の場合、リブランディングの場面で使いたいことがざっくり決まっているものの、どう使いたいかを詳細にイメージしていないため、イラストが完成したとしてもあまり有効活用できずに形骸化してしまう可能性が高いです。
一方、B社のように、5W1Hで「いつ・どこで・誰が・誰に対し・どのように使うのか?」を細かく言語化しておけると、こうしたリスクを回避することができます。
特にB社の場合、プロジェクトの成功には「経営層・リーダー層」を巻き込むことが必須であることが予想できるので、「成果物」「イラストの活用方法」だけでなく、イラストの制作プロセスも自然と決まってきます。
▶Step.3-2.「社内向け」か「社外向け」かを事前にハッキリさせる
お客様からご相談をいただく中で、このような声をよくいただきます。
「理念浸透(社内向け)のためにビジョンをイラストにしたけど、社内だけで留めるのはもったいないから社外にも出したい!」
「採用目的(社外向け)だけど、理念浸透を兼ねて社内メンバーを制作プロセスに巻き込みたい!」
事前にしっかりと設計できていれば、「社内向けにつくったものを社外広報にも」「社外向けに作ったものを社内の理念浸透にも」活用する自体は可能です。
ただし、プロジェクトの途中から“一石二鳥”を狙うパターンが最も目的がブレやすくなり、かつ成果物の内容・効果が半減しかねないケースが多くなるので注意が必要です。
たとえば、「第2創業期のリブランディングに際し、社内への新たなビジョン浸透を目的にしたイラストの制作プロジェクト」を実施するとします。
メンバー同士の対話が深まり、「生々しいけど、これがうちのやりたいことだよね!」と議論も盛り上がりました。
しかし、途中から「社外向けにも出すイラストにしていこう」という場面になると、「議論ではよかったけど、社外から見たらネガティブな印象を持たれかねないから」と、せっかく出したアイディアがお蔵入りになることがあります。
イラストの内容を再度考え直さねばならない上、せっかく出したアイディアが不採用となるとプロジェクトメンバーのモチベーションも下がりかねません。
また、「どっちつかずがゆえの説明のしづらさ」に後から悩むこともあります。
上記の例では、「社外の人に伝えること」を第一目的に置いてイラストを描いていません。なので、いざ社外に説明しようとしても「なんか伝えづらいな」と感じてしまったり、説明を受けた社外の人からしても「社内の人じゃないと伝わらない部分が多いな」と思わせてしまうリスクがあります。
こうした事態を防ぐために、社内・社外の両方に見せるイラストを制作する場合は、「あくまで社外向けの成果物としてクオリティを高めたい」のか、「社員の理解や共感を最優先したいのか」をハッキリさせてから制作するのがオススメです。
◎Step4:制作プロセスの設計方法
ここからは、言語化した目的・ゴールに紐づく形で考えていく前提で、誰をどのような形でイラストの制作に巻き込むかなどの「制作プロセス」を考えていきます。
(ちなみに、弊社が最も受ける質問が、このStep4で取り上げる「プロジェクトに誰を巻き込むか?」です!)
▶Step4-1.巻き込むメンバーの選定
制作プロセスに誰を巻き込むかの観点ですが、目的に応じて変わる前提ではあるものの、多くの場合は「経営者」「役員層」「新卒メンバー・次期リーダー層」「特定の部署・職種・階層のメンバー」「社外のステークホルダー」の5つにわかれます。
この中でも、特に注意が必要なのが「1.経営者」の巻き込みです。
経営者は最もビジョンを解像度高くイメージできる反面、発言力が大きいゆえに現場メンバーが意見を言いづらくなってしまう場合が少なくありません。メンバーの発言が少なくなるほど、イラストへの愛着は減り、結果として「社長しか使わないイラスト」になる可能性が高まります。
かといって、現場メンバーのみを対象にヒアリングをスタートすると、具体的なビジョンのイメージがなかなか湧かないことから、抽象的でふわっとした情報量の少ない回答だけに落ち着いてしまうリスクが生じます。
では、どのタイミングでどのように社長を巻き込めばよいのか?ですが、以下に参考までですがプロセスの一例を紹介します。
①のように、社長にイメージの大枠を先に出してもらえれば、現場メンバーも「この絵のこの部分は賛成・反対」と自分の意見を具体的に乗せやすくなるので、深いディスカッションを自然と発生させつつ、最終的に理解度・愛着度の高いイラストを完成させることができます。
とはいえ、社内だけで上記を完結しようとすると、社長にフラットに意見ができる人がいなかったり、客観的に質問をしてくれる人がいなかったりと、課題も多いので難易度が高くなるのも事実です。
第三者として意見ができる社外のファシリテーターに協力を仰ぐと、プロジェクトの成功確率がグッと上がるので、可能であればそうした方への依頼も視野に入れるのがおすすめです。
▶Step4-2.「巻き込む人数の目安」と「巻き込み方の注意点」
巻き込むと言った際に、「プロジェクトのコアメンバー」として巻き込む観点と、「ヒアリング対象にしたい現場メンバー」として巻き込む観点の2つがあるため、別個に解説していきます。
①プロジェクトのコアメンバー(プロジェクト推進チームのメンバー)
企業規模にもよりますが、チームとしての機動力や1人あたりの発言量・責任感、日程調整の難易度を考えると、プロジェクトの推進メンバーは「2〜5名」が経験上ちょうどいいように感じています。
それより人数が多くなっても推進自体はできますが、その場合は各メンバーの役割や責任範囲をハッキリさせた上で巻き込むようにできるとチームの熱量が下がりにくくなります。「この人はこの部署の観点から意見を言う」「この人は参加必須メンバーでこの人は任意参加」といったように前提をすり合わせておくと、「やる気なさそうな人もいるし、自分もほどほどでいいや」といった空気が生まれることを回避しやすくなるのでオススメです。
②ヒアリングやワークショップのみ参加するメンバー
前提として、巻き込む人数が何人になってもイラストを制作すること自体は可能です。100人の組織で100人にヒアリングをし、100人分の意見をイラストに反映させるということも、やろうと思えば実現できます。
ただし、巻き込む人数が多ければ多いほど、ヒアリングの期間は延び、描く情報の構造化に必要な時間が増えるため、プロジェクト全体の予算・期間は人数に応じてかさむのが現実です。加えて、巻き込み方によっては現場メンバーから「ただでさえ忙しいのに別で時間を取られるのか......」と反発を受ける可能性もあるので、事前のコミュニケーションには注意が必要になります。
このように、実際は「予算」「納期」「現場メンバーの感情」の3つの観点から、巻き込む人数や巻き込み方が決まるケースがほとんどなので、プロジェクトの目的と前提条件を洗い出した上で検討されることをオススメします。
▶Step4-3.プロジェクト期間の目安
実際のところ何ヶ月くらいかかるのかについて、あくまで弊社が担当する場合での目安ですが「10〜50名程度であれば最低3〜6か月」「100人以上であれば最低6ヶ月〜1年程度」が目安になります。
巻き込む人数が多くなるほど、ヒアリングの工数や、ヒアリング結果をイラストに反映するための制作工数が膨らむため、プロジェクト期間は長期化していきます。
時間の内訳としては、あくまでイメージですが、6:4の割合で「イラストを描く前段階のヒアリングやディスカッション」が多くを占めます。
意外と長いですねと言われることも多いのですが、プロジェクトが一度はじまると「もっとディスカッションしたい!時間が足りない!」と驚かれることがほとんどです。
弊社が制作するビジョンピクチャー®︎の場合、イラストに描く人物や建物、小物に至るまでのすべてがビジョンに紐づいた意味を持って描かれるので、お客様も途中から手を抜けなくなるという特徴が影響しているかもわかりませんが、とことん議論するほどビジョンの理解やイラストへの愛着も深まるので、この時間はなるべく省略しないようにした方が確実によいです。
周年記念やサービスリリース日などの「ベストなお披露目タイミング」に合わせて納期が設定されるケースがほとんどですが、上記の理由からディスカッションが長引く前提で、プラス1ヶ月間ほどバッファを持つ形でスケジュールを組むことを強くオススメします。
◎Step5:イラストに盛り込みたい要素の洗い出し方
次に「イラストに盛り込みたい要素」についてです。
ビジョンと一口にいっても、事業内容や事業計画、組織カルチャー、顧客や自社メンバーの姿など、「未来」は多様な要素で構成されています。
そのため、「今回描こうとしているイラストでは、誰がどんな状態になっている姿を描きたいのか?」をざっくりとでも構わないので、可能な限り洗い出せると制作をスムーズに進行させられることが可能になります。
具体的にイメージいただけるよう、過去に弊社が担当したイラストで説明してみたいと思います。
1枚目は、奈良県にて葬祭業を展開する有限会社ながたに生花のビジョンピクチャー®︎です。
こちらのイラストは、組織のビジョンを1枚絵にしたケースのため、「創業精神」「サービスコンセプト」「ビジョン」「10年後の未来」「行動指針」の大きく5つが描かれています。
一方、新規事業のビジョンの1枚イラストになるとこのようになります。
こちらは、レオス・キャピタルワークス株式会社の新商品で、未上場企業と上場企業のどちらにもハイブリッドに投資ができる投資信託サービス「ひふみクロスオーバーpro」のビジョンピクチャー®︎です。
こちらのイラストは、イラスト全体で「サービスで実現したいビジョン」と「サービススキーム」を描きつつ、部分で見ると「投資家の未来」「投資を受けた未上場企業の未来」「サービス価値(レオス・キャピタルワークスメンバーが投資家と未上場企業に提供するサポート内容)」が描かれています。
(※厳密には全21場面が描かれていますが、大きく分けると上記の5つの大カテゴリーでイラストが構成されています)
いきなり描きたい内容を細かく出すのは非常に骨が折れるため、まずはざっくりとでも大きなカテゴリーで描きたい未来の要素を列挙し、そこから具体的な場面・人物を洗い出してみる進め方がオススメです。
その後は、イラストレーターやディレクターの方と相談しつつ、イラストの中で特に強調したい要素を何にするか決めながら、要素を足したり引いたりしてイラストを完成させていきます。
◎Step6:ビジョンをイラストにした後の「活用方法」の決め方・アイディア
最後に、「イラストの活用方法」についてです。
Step3-1の通り、目的とゴールをどれだけ解像度高く言葉にできるかに応じて、活用先も明確になります。
特にツール展開となると、あるあるなのが「つくりっぱなしになりがち」という状態なので、ここでも「いつ・どこで・誰が・誰に対し・どのように使うか?」の目的から企画していく姿勢が欠かせません。
Step5で紹介したように、弊社のビジョンピクチャー®︎のように伝えたい情報を構造化しているイラストの場合であれば、トリミング利用を逆算してイラストを描くこともできます。
そのため、下図のように「サービスLPにイラストの一部を切り取って活用したい」という活用目的を当初からイメージできていれば、その実現を見据えてイラストを制作することも可能です。
ただ、目的からブレイクダウンしていくだけでは活用アイディアの幅が広がらない可能性もあるので、ここではそのブレストで出す材料を増やす意味合いで、過去の弊社の実績をもとにした活用アイディアをいくつか例として列挙します。
経験上、ビジョンをイラストにされたい方は「飾れるイラスト」でなく「語れるイラスト」を望んでいる方がほとんどです。
「イラスト」はあくまで手段なので、ビジョンを語る場面や活用方法を明確にイメージしてから、プロジェクトをスタートするようにしましょう。
最後に
正直なところ、文字数の関係からもっと省略して書いた方がよいのではとも思ったのですが、省略したくなる細かな部分こそ「ビジョンのイラストの効果を最大化する鍵」なので、今回はなるべく網羅的にこれまでの経験に即した知見を書いてみました。
「ビジョンをイラストにする」という行為は、想像以上に予算・時間・熱量を投資するプロジェクトなので、ちゃんと設計してやりきれば予算以上の効果が生まれる可能性があります。
反対に、プロジェクトの設計が甘いと、「たくさんリソースを投資したのに使われないイラストができただけだった」という悲しい結末になります。
前者の方が増えるようにと、今回のnoteを書いたので、ぜひビジョンをこれからイラストにしたいという方のお役に立てれば幸いです。
※「もっとここを詳しく聞きたい!」というリクエストやご質問があれば、以下のどちらかに連絡くださると大変嬉しいです!
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