竹田悠一郎先生に物申す!聖乃あすか主演『PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-』
例によって写真が『Dream Chaser』なことは許していただきたい。私が最後に観劇したのは桜蘭記なのである(これは佳作だった。上田久美子先生ナイス!)
話を元に戻すが、現在スカイステージでは花組の聖乃あすか主演、『PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-』の放映を行なっている。演出は100期生であるほのかちゃん(聖乃あすか氏の愛称)と同期生で入団したという竹田悠一郎。
以前、「和希そら主演、夢千鳥を観劇して思うバウで名作に当たる確率」で書いたように、バウホールで主演できる数は片手の数ほどしかない(数が増えすぎるとトップスターになるのも遅れる)。この中で良作に当たる可能性はやはり低いと言わざるを得ない。
主役はヘンリー7世。ヨーク朝最後の暴君と呼ばれるリチャード3世と、その統治下で行われたことが概ね分かっているヘンリー8世の間にあって、薔薇戦争による混乱を収め、『謎が多い男』としてヘンリー7世を描くとしている。
・・・リチャード3世は兄を2人死に追いやり、王位を得た。その非道さはある程度想像がつく。そしてオペラでも有名である。
・・・そしてヘンリー8世は離婚したいがためにイギリス国教を作り、スペイン王女と離婚、その後結婚したアン・ブーリンとキャサリン・ハワードを姦通罪で処刑し(後者は事実であったようだが)、後のメアリー女王とエリザベス1世を庶子に落とした。キャサリン・パーがなかったら英国の海軍の全盛期など生まれなかったかもしれない。
(このあたりはミュージカル『レディ・ベス』に詳しい。ベスが父を慕いきっているところが若干謎なんだけど。)
そしてヘンリー7世を扱った『PRINCE OF ROSES-王冠に導かれし男-』である。竹田先生は、この作品を作るにあたり、ほのかちゃんのため、たくさんの膨大な資料の中から、ヘンリー7世をどう英雄として扱うか、頭がひっくり返るほどに考えたのだろう。それはすなわち、「自分の頭の中には資料がいっぱい!あとはそこから取り出すのみ!」なのだったろうと思う。そのためにたくさんの問題点がある。
・思惑のある人が多すぎて、誰がいい人で誰がダメな人かの区別がつかない
・伏線をたくさん撒き散らしているんだけど、「回収したつもりで回収できてない」
ex)例えば、ウィリアムが星空美咲ちゃんを「エリザベス!」と呼ぶシーンがある。登場人物はそれだけでその子が本当は誰であり、どんな思惑を持ってヘンリー7世に近づいたのか把握するのだが、それ以前にエドワード4世の娘の名前は片手で足りるほどしか出ていない。
「エリザベス」といったありふれた名前を呼ばれたってどのエリザベスかわからない。
・リチャード3世を王冠に取り憑かれたような、哀れな最後にするのであれば、前半からその片鱗を出して欲しかった。前半は冷酷な悪役であの悪役っぷりはタカラジェンヌが憧れる悪役だ。
・しかし、優波 慧くんが0番で踊る姿を見られたのは貴重だ。ここだけはきちんとファン心理を掴んでいる。
そして、どうして竹田先生のミスに私が気づいたかというと、「これは私の中の思考回路から吐き出される言葉と同じ」だと気づいたから。
自分の中では話が分かりきっていて、どんどん論理が飛躍してしまうと、こんな作品がきっと出来上がるに違いない。そう思ってこの文章を書いているがこの中にも論理の飛躍はあるのだろう。
ここのところ、女性演出家デビューの佳作が続いていただけに、惜しい。
そして同じ100期生である風間柚乃くんの主演のバウホール演出は谷正純先生(宝塚の演出家は苗字縛りでもあるのか)。ここは派手に『皆殺しの谷』を見せて欲しいものである。