再会


真夜中、アレキサンダーは敵から逃げるため、街を抜け、林の中をひたすら走っていた。

武器はもうポケットの中のナイフ1つしかなかった。

追手は10人、20人、いやもっといるだろう。

足の速さには自信があったが、疲れも感じていた。

鬱蒼とした森に逃げ込んだ。敵を巻かねばなるまい。

月明かりを頼りに、走り続ける。
森の中には、古びた塀が続いていた。その上を走り抜ける。


すると、暗闇からなにか、動物のような声がした。


ブォォ・・・

その声は、森の奥から迫ってきた。

巨大な獣が現れた。見たこともない、悪魔のような顔をしている。

大きな腕を振り上げ、アレキサンダーに襲いかかってきた。

「!!!」


塀を飛び降り、なんとかその腕を避け切った。

アレキサンダーはひたすら前へ前へと走って逃げた。

獣は、もの凄く鋭い爪で何度も手を振りかざしてくる。

アレキサンダーは身軽だった。

枝から枝に華麗に飛び移りながら、逃走する。

しかし、肩と足に獣の爪が当たってしまい、深い傷を負ってしまった。血がどっと噴き出す。

アレキサンダーは咄嗟に高木に登り始めた。

獣よりも高い場所を目指して、上へ上へと登る。

しかし、魔の手はまた振りかかり、背中に一撃をくらった。


アレキサンダーはみるみる落下していき、地面に打ちのめされた。

よろけながらもなんとか立ち上がり、振り向くと、目の前に獣が立ちはだかっていた。


獣は、勝算あり、と言った表情で微笑んだ。


戦うしかない、とアレキサンダーは覚悟した。
ポケットのナイフを取り出して、全身に血を流しながらも、獣と向かいあった。

その瞬間だった。

突然、空から雷が、獣の真横にあった大木に向かって落ちて来たのだった。

大木は見事に切り裂かれ、燃え上がった。

燃え上がった大木は獣に降りかかり、獣は叫びながら燃えていき、灰になった。


アレキサンダーは突然の出来事に、びっくりして、ただただ立ち尽くした。

「危なかったな。」

その声に振り向くと、黒いマントに身を包んだ、
青白い女が立っていた。風に揺れる黒くて長い髪に、眼帯・・・。

「君はもしかして・・・」

朦朧とする意識の中で、記憶が蘇る。

「Lucia...」


アレキサンダーがその名前を呟くと、女はニヤリと微笑んだ。


そこで、アレキサンダーは気を失った。


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