エピローグ
私は昔から、ものすごくリアルな、戦っている夢を見る。
起きてから、現実だったんじゃないかってよく思う。
いや、きっと異世界、パラレルワールドで起こった現実なんだ。
ある日、またリアルな追いかけられている夢を見て、夜中に起き上がった。息が切れ、恐怖で体が震えていた。
一人じゃもう抱えきれない…、そう思った私はタケシを電話で呼び出した。3コールで奴は出た。
「話が、あるんだけど…。」
「なんだよ、ルイ。久しぶりだな。愛の告白か?」
「そんなわけないでしょ。」
「あ、そう。また病んでんのか?聞いてやってもいいぜ。」
「いつもの場所に来て。」
「わかった。」
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タケシと私は幼なじみだった。
幼い頃から仲が良くて、いつも私の家の屋根の上で二人で話したりしていた。(母親からはよく危ないと怒られていた。)
付き合ってるんじゃないかと噂されることもあったが、実際は何もなく、仲の良い友達止まりだった。
たまたま小・中・高・大と同じ学校に進んだが、最近はあまり会っていなかった。だがたまに連絡を取り合っていた。
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いつもの場所とはルイの家の屋根の上だ。
今夜も月と星が綺麗だった。
「どうしたんだよ、急に。」
「私、昔からすごくリアルな怖い夢を見るの。」
「あぁ、前から言ってた気がする。」
「最近は回数が多くなってきてて…やばいんだよね。」
「なにがやばいんだよ、ただの夢だろ。」
「違うよ!きっと現実なんだよ。パラレルワールドなんだよ。」
「あ?お前頭大丈夫か?病院行ったか?」
「行ったよ。睡眠薬渡されただけ。」
「そうか…。」
タケシは困惑した表情を浮かべていた。
「私、そろそろさ、その異次元の世界から戻れなくなるような気がするの。」
「は?そんなわけないだろ。しっかりしろよ。」
「やっぱり、わかってもらえないよね。」
「わからねぇよ、映画の見すぎなんじゃないの。ルイは昔からSF映画が大好きだったもんな。」
「それのせいなのかなぁ。私も確信があるわけじゃないし、わからないけど。だけどハッキリ覚えてるの、夢の中の風景、匂いや感触を。空を飛んでる感覚も。誰かを殺したり、殺される感覚も…。」
タケシはギョッとした。
「そうか…、お前、重症なんだな。」
そう言って、憐れみの目を向けてきた。そして、急に閃いた顔をして、こう言った。
「わかった!お前の見たその夢をさ、本にしてみたらいいんじゃね?なんかおもしろそうだぞ。」
「そんな、人に公開していいものなのかな?宇宙人に消されるかも…。」
「大丈夫、大丈夫だって。ベストセラー作家になってさ、俺に奢ってくれよ。美味しいもん食べに行こうぜ。」
「ねぇ、なんかふざけてない?」
「全然、俺はふざけてないし、真剣だよ?ルイが元気になればいいかなって思ってさ。」
「わかった。夢日記はつけてるから、とりあえず続けてみるよ。」
「いいじゃん!本、楽しみにしてるからな。」
タケシは屈託なく笑った。
タケシに相談したことがキッカケで、私は自分一人では抱えきれない思いを今までよりもちゃんと書き残していくことにした。
全部はいつも覚えていないので、記憶の断片を残していくことになる。
戦闘系の夢が多いが、戦闘ばかりではなく、幸せな夢や、わけがわからない、ノージャンルな夢を見ることもあった。
印象に残っているリアルな夢の話、あとついでにタケシとのやりとりとか、私の日常的なリアルなリアルも書き記していこうと思う。
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