予知夢
久しぶりにルイに会った後の帰り道、タケシは小学生だった頃を思い出していた。
朝、いつも通りに友達と横断歩道を渡っていたら、いきなり後ろから突き飛ばされた。
「なにす…」
振り返ったら、血の気が引いた顔のルイがいた。
そして信号無視で走り込んできたバイクが、ルイの後ろを走り、トラックにぶつかっていった。
大騒ぎになり、近くにいた大人が警察と救急車を呼んでいた。
「ルイ・・・、助けてくれたのか。」
ルイは泣きながらタケシに抱きついた。
「タケシがバイクに轢かれる夢見たから、慌てて追いかけて来たの。」
「ルイ、ありがとな・・・。」
タケシはただただ驚き、泣きじゃくるルイを抱きしめた。
高校時代、タケシはテスト勉強なんか全然やってなかったので赤点続きだった。期末テストの前日、ルイが紙を渡してきた。
「なんだよ、これ。」
「ここに載ってること、全部明日のテストに出るから覚えて。」
「なんでわかるんだよ。職員室に忍びこんだのか?」
「違うよ。夢で見たから。今度また赤点だったら留年でしょ?これ覚えなよ。」
もしかしたらと思い、書いてあることを必死で覚えた。
ルイは100点、タケシは70点だった。
「お前、スゲーな。毎回夢に出てきたら、毎回満点だな!」
「毎回は無理。今回はタケシが赤点だったらヤバかったから出てきたんだと思う。また見る保証ないから、ちゃんと勉強してね。」
「はーい。」
ルイはタケシの危険を夢で察知したり、夢で見たことをタケシに教えて、タケシを助けてくれたり、そんなことがたまにあった。
「ルイ、予知夢見れるなんてスゲーな。」
「私、なんかおかしいのかな?」
「おかしくなんてねぇよ。俺はルイに助けられてきた、スーパーラッキーボーイだな。ルイはヒーローだよ。」
「ヒーローなんかじゃないよ。私、なんのとりえもないし。むしろ、ヒロインがいいんだけど。」
「悪ぃけど、俺はヒーローじゃない。俺はルイの後ろに隠れて進んでくぞ!」
そう言ってルイの後ろに回り込んで、ルイを盾にして歩いた。
「もう!頼りないな!」
ルイは笑いながらそう返した。
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