追憶
アレキサンダーは由緒正しき王家の、純血な王子であった。
幼い頃から、神童と呼ばれ、学問も運動も、とにかくなんでもできる子供だった。
アルバーナ国、国王のカルロスは王子を大変可愛がっていた。
「世界で1番、強い兵士にしよう」
そう言って、ずっと武道を習わせていた。
国王は戦好きで、次々と他の国を支配し、国を拡大していった。
「いいか、お前もこの国の王になり、
世界を征服するんじゃ。」
アレキサンダーは武道の才能があり、同年代の間では負け知らずだったが、父親の考えには共感できなかった。
皆が平和に暮らすことが一番なのに、どうして戦おうとするのだろう、、と思っていた。
ある日、アレキサンダーは友達のトムと外で遊んでいた。
突然雨が降ってきたが、トムは川から出ずにずっと遊んでいた。
「トム、そろそろ帰ろうか」
アレキサンダーは何度か呼びかけたが、彼は帰ろうとしない。
雨は急に激しくなり、川の流れも激しくなった。トムは石の上で足を滑らせてしまい、川に流されてしまった。
アレキサンダーはすぐに助けに行き、トムをなんとか陸に救い上げたが、自分も陸に上がろうとしたところ、流れが更に激しくなり、アレキサンダーはそのまま流されてしまった。
濁流に逆らおうと、もがき苦しんでいる中、意識を失った。
少年は目が覚めると、森の中にいた。
すると、ぼんやりとした視界の中に、大きな黒い帽子に、黒い眼帯をした魔女が現れた。
「目が覚めたかい?」
アレキサンダーはビックリした。
起き上がった瞬間、足に激痛が走った。
「痛っ、、、!」
「おっと!まだ動いてはいけないよ。」
魔女はアレキサンダーを、もう一度寝かせた。
アレキサンダーが自分の足を見ると、包帯がぐるぐると巻かれていた。
「どこかの川石にぶつけたんだろう。」
「もしかして、、、助けてくれたの?」
「たまたま、見つけたんだよ。川に天使が流れているのをね。
こんな雨の日に川で遊んじゃいけないよ。」
「ありがとう!君の名は?」
「・・・Lucia」
「Lucia、いい名前だね。
僕の名前はアレキサンダー、仲良くしようね。」
アレキサンダーは笑顔で手を差し出した。
小さな少年の手を握り、魔女はニッコリと微笑んだ。
「よろしく。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?