小田原旅行記
神奈川県の旅割を利用して小田原に、六月十三日に一泊旅行してきた。宿は天成園小田原別館でJR小田原駅から徒歩5分ぐらいで、駅に近く便利なホテルである。箱根湯本のお湯を運んでいるので、十四階にある大浴場は天然温泉である。そこからは、海と小田原城が見える。ライトアップされた小田原城の夜景がとても綺麗だ。
ただ、シングルの部屋はとても狭い。ベッドでいっぱいである。それでも部屋の窓から海が見えるので、圧迫感はない。朝食バイキング形式で、好きな物を選んで食べることができる。鯵の干物とおでんが美味しかった。
小田原城の紫陽花は五分咲きで菖蒲の花がほぼ満開でとても綺麗であった。菖蒲の花がこれほど群生しているのは、生まれて初めての光景である。小田原城は、二十年ぐらい前の印象では、動物園と小さな子供用の遊園地のイメージしかなかったが、今は綺麗に整備されて見応えがある。
コロナ禍で海外からの観光客がまだ制限されているので、観光地としての賑わいはない。高校や大学が駅前にあるせいか若い人の姿が多い。サラリーマン風の男女の姿は少なかった。朝もあまり通勤する人を見なかったので、街の印象は廃れている典型的な地方都市という感じである。この地域は工場が多いので、駅前のオフィスへ通うよりも、自家用車で工場勤務に向かう人たちが多いのではないか。
新幹線が駅がJRや小田急線と併設されているので、新幹線通勤で都会に通うのもいいかもしれない。何しろ海と箱根の山がすぐ間近にある。自然と温泉を堪能できる都市はそう無い。老後に暮らしたい都市の一つである。
駅から歩いて十五分ぐらいで海に出る。西湘バイパスの地下道を超えると御幸の浜である。明治天皇がこの浜に寄られたことで、御幸の浜を名付けられたと地元の看板に書いてあった。海に向かって左側に遠く江の島や三浦半島が見える。右側は伊豆半島である。熱海の沖にある初島も見える。沖合には伊豆大島が見える。
ここも人が少ない。釣り人が数人と小さな子供連れの家族が数組いるのみである。私のような一人旅で海をのんびりと眺めている中高年が数人。曇りで天気は良くなかったが、暑い日だったので海辺でのんびりと過した。海岸線は砂浜ではなく、小石がゴロゴロしている。波がその小石を巻き上げて、また海へ引き下ろすので鳴き石浜と呼びたいである。石が鳴く現象を生まれて初めて見ることが出来た。普段は砂浜か岩場の海にしか行ったことがないので、これはとても珍しい現象で、生まれて初めて石が波に泣かされるのを聞いた。
帰りは小田急ロマンスカーで、一番前の展望席が取れた。これまた生まれて初めての経験で、とても気持ちがいい景色を見ることが出来た。この歳で生まれて初めての経験を二つもした。