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結末がわかっていても、泣いてしまう「君が最後に遺した歌 」
涙は、なぜ流れるんだろう。
おかしいと思うんだ。だって人間は、その全てが生き延びるためにできているはずだから。
お腹が空くのは生きていくために必要なエネルギーを得るためで、寝るのは細胞を修復したり免疫を高めるためで。
同じように、涙は瞳を潤して、目に入るゴミを洗い流すという役割がある。
けれど、流す程の涙の必要性がわからない。
しかも、これは制御できない。勝手に涙が溢れてくる。
悲しい結末になると予想できているのに、それでも泣いてしまう。
君が最後に遺した歌 / 一条岬
クラスメイトからは鉄の女と呼ばれ、誰とも馴染まず、いつも一人で行動する綾音。
詩の存在に救われ、育ててくれてた祖父母のために、役場の職員を目指して真面目に勉強する春人。
この2人が出会い、一緒に歌をつくる。
美しい歌声を与えられた綾音が、いくつもの障壁を乗り越えて掴んだデビュー。
それなのに病魔に襲われ、余命は1年半。
奇跡は起きることなく、旅立ってしまう。
小説のタイトルを見た時点でも、物語を読み進めていく中でも、確実に君がいなくなってしまうことはわかる。
わかっているのに、その場面を読み進めるのが悲しくて、勝手に涙が出てくるんだ。
泣きたい時には、きっとこの小説を読んだら良い。
もちろん悲しいけれど、悲しいだけじゃないから。
歌が題材の本を読むと、実際の曲で聞きたいなと思ってしまう。
あー、綾音と春人でつくった歌が聞きたい。
イメージは、YUIかな。
少しクールな見た目とかわいい笑顔、そして、心に真っすぐ届く声。