人間を無意識に道具化してしまう傾向
親から子へ、先輩から後輩へ、上司から部下へ、時に親しい間柄同士で、
使えないや気が利かない、替えがきくといった言葉をかける。
おそらくかけている方は大して何かを考えているわけではない、
感情的に、衝動的に、あるいは習慣的に言葉が出てきているだけでしょう。
ですが大して考えてもいないのにそういう言葉がふと出てくることは、
かなり恐ろしいと個人的には思ってしまう。
使えないや気が利かない、替えがきくという言葉はつまり、
相手を機能化、機械化し道具化していることを意味するからです。
道具化、つまりある一定の機能によって貢献することを相手に求めている、
自分が期待した機能を相手が発揮することを前提に考えている。
だから、その貢献や前提が崩れると道具がその役割を果たさなかった、
期待外れだったり事前に把握していたスペック不足を感じた時のように、
使えない、気が利かない、替えがきくといった言葉が出るのでしょう。
それを大して考えてない状態で発するということはそういう考え方が、
その人の無意識、思考傾向の奥深くまで入り込んでいるということ。
とは言え入り込んだのはおそらくその人が非人間的な存在だからではなく、
現代社会を支えている資本主義の影響が強いように思う。
資本主義はお金を媒介にして全てを1つの単一的な価値に変換する、
価値と言えば聞こえは良いですが実際には道具化すると言って良い。
お金という基準に合わせてあらゆるものを変換可能な物へと変え、
お金によって取引される機能へと変えている。
それは人間であっても例外ではない、人件費という言葉があるように、
資本主義では人を扱う件もまたお金で変換される物の一部に過ぎない。
物であるが故に使えなければお金で替えることができると考えやすくなる。
意識しているか否か、自覚的か否かに関わらず現代人は、
そういう思想を軸とした社会で生きている。
その影響によって生まれるのが人間の機能化や機械化、
引いては道具化であり相手に一定の機能を求める心理を生む。
しかし、当然ながら人間は道具ではないしあれない。
意識と無意識、2つの思考傾向を持つ人間は常に揺らぐ存在であり、
機械などの道具のようにある機能を一定のあり方で発揮できない。
しかし、揺らぐが故の柔軟性、成長性があり自分の意志はもちろん、
触れる環境や人間関係によっていくらでも変わり発展することができる。
揺らぐ存在としての心をある程度であっても理解し寄り添うことができる、
機能では決してまかなえない精神的な支えとなることもできる。
道具にしかできないこともあるでしょうが人間にしかできないこともある、
しかし先に話したように現代では人間も含め全てのものを無意識に、
道具化して見て接してしまうことが多い。
それは言い換えれば相手の人間性を否定するということ。
であれば当然ですが相手もまた自分を人間としては見てくれない、
他者を道具化するということは自身を道具化することと同じです。
道具に対して例えばその心を汲み気を使ったり、
相手の求めるものを事前に考えて実践してみたり、
相手のためにもっと頑張ろうと成長発展してみたり。
そういったことは望めなくなる、道具は確かに一定の機能を発揮する、
包丁は食べ物をその切れ味や技能等に応じて切ることはできるけど、
包丁自身が気を利かせて何かを切ってくれることはない。
純粋な道具であっても持ち手のあり方が影響する。
それと同じように道具化された人間は道具以上の機能を返さない、
むしろ揺らぐ分だけ道具以下のあり方しかできない。
あるいは相手もまた道具を扱うのと同じように自分の益のために、
利用しようと考える程度の関係性を築くぐらいが限界でしょう。
繰り返しになりますが相手を道具化することは自分を道具化すること、
そして道具化は現代社会において無意識にしてしまいやすいということ。
この2つは意識しておくことが大事に思う。
大して何も考えていなくとも、むしろ何も考えてないからこそ、
日常的に、習慣的に表れる言動が相手に与える影響は大きい。
それが相手を道具化するものであれば相手の人間性を否定する、
それは同じように自身へと返り道具化され関係を無機質にする。
対等の間柄であれば関係が悪化するだけですむと言ってはあれですがすむ、
しかし親や子、先輩や後輩、上司や部下、段差がある関係性であれば、
片方が大きく相手を抑圧したり時に心を壊したりするかもしれない。
そして大きな抑圧や破壊が起きるほどその反動も大抵は大きい、
時に取り返しのつかない言動につながることもあるでしょう。
ですから、そういう相手を道具化する人間からは距離をおいたほうが良い、
関係性次第では難しいでしょうが人間性が否定され破壊されること以上に、
害となることはそこまで多くはないと個人的には思う。
そして自身が無意識にそのような言動を取っていないかどうか、
時間をとって振り返って見ることも大事になる。
相手を道具化する者は自身も道具化される。
今の自分が道具のように扱われている時、
自分が先に道具化している可能性もあるからです。
そうして周囲との関係を人間に対する関係としていくことで、
より良い状況を生み出せるのではないかと思うというお話です。
では、今回はここまでです。
ありがとうございました。
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