キャリア的視点184 伝統的なキャリアとニューキャリア論① -バウンダリレスキャリア-
毎日ブログ 184日目(2020/8/30)
キャリアに関する論文を読んで
先日、私が所属している「プロティアンキャリア研究会」の課題として、
「組織内キャリア発達における中期のキャリア課題」
という神戸大学教授:鈴木隆太氏の論文を読ませていただいたのです。
初論文と言うこともあって、どう読み解いていけば良いのか戸惑いましたが、今日はその論文から感じたこと、考えたことを書いていこうと思います。
プロティアンキャリア研究会にて登壇頂いた法政大学教授:田中研之輔氏、通称タナケン先生に聴くと、
鈴木教授は「組織学」を専門としており、「キャリア学」は専門ではないため『尖った論文』を書けるのだと言われていました。
もう一度書きますが、初論文なのでこれがとがっているかどうかもわからずに読んでいたのが本音ですけどね^^;
これまでのキャリア理論
論文の趣旨としては、これまでのキャリア論でなかなか触れることが少なかった「中期キャリア(40代~50代)」の課題に対して、時代の変革に合わせてニューキャリア理論に変わっていくべきである、と結論付けています。
「これまでのキャリア理論」とは新しく出てきた(と言っても2000年頃には既に提唱されていますので、いかに日本のキャリア界が遅れているかを物語ってしまうのですが)「ニューキャリア理論(New Career Study)」に対して便宜上の表現なだけです。以下、「オールドキャリア理論」と呼称します。
大まかに言えばドナルド・E・スーパー氏からエドガー・H・シャイン氏あたりまでを指すことが多い様です。
様々な理論があるために、まだまだ紹介し切れていませんが、例えばこんな記事なども書いているので併せてお読みください^^
そして日本においては更に、世界的にも独特の「日本型雇用システム」も絡んできてしまい、日本はまさに縦型の『役職的な上進』だけがキャリアだと捉えてしまうガラパゴス的な考えを持つに至っています。
日本人は好きですよね、独自の進化^^ 昔のガラパゴス携帯なんてのもありましたが、キャリアに関しても独自の進化を遂げてし合ったのかも知れませんね。この場合は世界的にみて「劣化」にあたりますが…囧
余談ですが「劣化」も「退化」も進化の一種です。進化の対義語は「停滞」であって「退化」ではありません。
バウンダリレスキャリア
オールドキャリア理論とニューキャリア理論、特にバウンダリレスキャリアの大きな違いは、この退化にあるように思います。
ニューキャリア理論はまた大きく分けると「バウンダリレス・キャリア(境界のないキャリア)」と「プロティアンキャリア(変幻自在なキャリア)」に分かれます。
バウンダリレスキャリア…
バウンダリーレス・キャリアとは、ひとつの組織の中だけでキャリアが展開される従来の組織キャリアに対して、1つの企業や職務といった境界(バウンダリー)に閉ざされた範囲を超えてキャリアが構築されるもの
日本におけるオールドキャリア理論のおいては、前章の通りひとつの組織の中だけで起こる展開において「昇進が成功者、降格が敗北者」という捉え方が一般的です。
しかしこの考えでは、労働者の将来はピラミッド型の組織図を考えてみても想像できるのではないでしょうか。
いずれ頭打ちになります。
トップにまで昇れるのは極僅かであって、ほとんどの人はピラミッドの途中で立ち止まる事になります。いわゆる中間管理職です。
それを感じた時に多くの方は「キャリアの停滞(キャリアプラトー)」に陥るのです。
ところがバウンダリレスキャリアでは、
成功や目的は主観的なものであり、個人の意味付けによって変わる。
としています。そして会社組織という境界を超える転職も含めた、縦横斜めにバウンダリレスに発展していくのです。
個人の心理的な成功や目的のために、これまでは「退化」「逃げ」「負け」とされてきた下や後ろ方向への進化も進んで行うのです。
それはエドガー・H・シャイン氏のキャリアコーンをさらに発展させたイメージです。
もう一つのニューキャリア理論のプロティアンキャリアに関しては、明日、改めて記事にさせていただきますので少々お待ちください^^;
だからニューキャリア理論
最近耳にする機会の増えた「出世したくない症候群」はオールドキャリア理論では理解されない対象です。なぜなら出世こそがサラリーマンの目的であり唯一のキャリア展開だったのに、それを拒否するのですから。
記事内では彼らはプロティアンだと書いていますが、個人個人の中にはバウンダリレスキャリアの方も多く含んでいると思うのです。
私自身も日本型雇用システムは当然として育ってきた世代です。オールドキャリア理論に犯されたまま仕事をして来ました。呪縛と言っても良いでしょう。
数々のキャリア理論を学び、キャリアコンサルタントの資格を取って尚、組織内に限定されたキャリアパスに閉塞感を感じていました。
だからこそニューキャリア理論にしっくりしているのは否定しません。だからと言って働く人全員がニューキャリア理論に該当するとも思いません。
しかし論文の中で鈴木教授は書いています。
現在の中期キャリアの問題である、キャリアの停滞と組織内の責任の回避という問題が、組織と個人の責任の所在の認識によって引き起っている可能性がある
これは言い換えれば、組織内部における個人の役割が定まっていない状況を引き起こしていると言うことです。キャリアプラトーに陥ることで、周囲からの役割期待と本人の意識のずれが起こってしまうのです。
人は本来保守的なところがあります。パーソナルスペースと言う言葉もあるように、どこかに領域を設けたがるのです。そして簡単にはその境界を超えることはしません。安定から不安定への移動は、精神的なパワーを必要とする場合が多いのです。
バウンダリレスキャリアはその境界を越えていきます。
これを読まれているあなたがもし、
「自分はこのままで良いのだろうか?」
と考えている様なら、それはキャリアプラトーに陥っているのかも知れません。
だからこそ、パワーを引き出すためにもニューキャリア理論に触れてみると良いのではないでしょうか。一助になると思いますよ^^
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