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レモンシフォンの約束
「覚えてる? もし高校生になってもお互いに相手がいなかったら付き合おうって約束したこと」
夕日が沈みきった公園、さびついたブランコ。そこに腰かけているのは、ミディアムの外はねの茶色が混じった黒髪を秋の風にたなびかせる制服姿の女子高生。最後に会ってから5年以上経っているにも関わらず、なにも変わっていない。クラスで1番かわいいと言われていたあの顔も、天真爛漫という四字熟語が似合いそうなオーラも。強いていうなら、少し大人っぽくなってテンションも当時より落ち着いた気がする。当時のあいつなら、ブランコが視界に入った時点でブランコに飛び乗り高く高く空へ向かってブランコを走らせこぐだろうな。そう考えると、今揺れていないブランコに座っているあいつは大人になったってことだ。
「あー……いつの話?」
ブランコをひとつ間を空けて座ったように、ワンテンポおいて訊き返す僕。自分の声なのに、思っていたより声量も覇気もない声だった。
「小3のとき。席が隣でさ、給食の時間に小学生のうちから誰かと付き合うなんてばからしいよねって話したときだよ」
文末に毎回促音がつきそうな話し方をする彼女。アメリカ帰りは違うな、なんて言い訳にならない言い訳を考えてみる。
「うん……まぁ」
正直に言うと、覚えてなかった。後ろの席の女子が隣のクラスの男子に告られたという話を受けて誰かと付き合うなんてどうかしている、そんな話をした記憶まではある。だが、僕の自室と同じように整理されていない脳内をひっかき回し探し回っても、高校生になったら付き合おうなんて約束した記憶は発見されなかった。残念ながら、高校生の“こ”の字も出てこなかった。
「じゃ、付き合おっか。約束は約束だし」
握手をしようとしたのか、こちらに伸びてくる色白な右手。こいつと約束なんてしたことあったっけ? まぁ僕が忘れてしまったのかもしれないな。
「えぇ……わかったよ」
僕はひとつため息をついて握手をするために右手を伸ばした、が。それは彼女の右手にぺちっとはたかれた。僕とあいつ以外誰もいない彼誰時の公園に、その音だけがむなしく響いた。
「嘘だよばーか」
「はへ?」
右手をはたかれた衝撃とその台詞に、僕の口から情けない音がこぼれる。
「嘘だよ嘘嘘。久々に見かけたと思ったらなんか暗い顔してたからさ、元気になってくんないかなーって思って」
「なんだよ、それ」
どうりで約束した記憶がなかったわけだ。冷静にそう考えると同時に、僕はあいつに対して腹が立ってきた。意味わからん嘘つきやがって。
「改札から出てきたときの顔死人以上に死んでたけどさ、高校ってそんなに疲れる? うち的にはめっちゃ楽しいんだけどな」
「疲れるんだよ俺は」
いらいらが声ににじみ出て、それがあいつにも伝わったらしい。
「そうか。じゃあ疲れてるのに公園まで連れてきて余計なお世話だったな」
「おぅ。もう二度と会いたくねーわ」
僕は感情に任せて、テキトーな言葉を口走る。
「こちらこそ、もう二度と話しかけてくんな」
「話しかけてきたのお前じゃん」
俺のツッコミにあいつは椅子にしていたブランコから降りて
「That's right!!」
帰国女子だってことを感じさせる流暢な発音と小学生の時より落ち着いたテンションでそう言いながら、僕にウインクを飛ばした。そして、軽やかなステップで公園から去っていった。
その姿を見送る僕の口角が少し上がっていることにも、僕の周りにあったどんよりとした空気がなくなっていることにも気付きたくはなかった。
あいつと交わした約束は、レモンシフォンのように淡かったけれど、レモンシフォンのように涼やかで爽やかに僕を元気にしてくれた。
あいつのおかげか? 違う、間違いなくあいつのせいだ。
〈Fin〉
どうも齋藤です。
3ヶ月強小説を書いていなかったのでリハビリ的な感じで書いてみました。これで1500字くらい。
3日くらいかかったかな?以前は1時間で500字~1000字書いていた気がするのでまだまだですね。((まぁあのときは火事場の馬鹿力感あった))
クオリティーもひどいですね。ほんとは推敲したいとこたくさんあるのですが、推敲しすぎると公開するのが怖くなるかなーと。((たしか以前Aさんがおっしゃってましたよね))ということでこの状態で公開させていただきます。
あとはなんか、恋愛もの書くのが嫌で小説書くのやめたのに恋愛じみたストーリーってゆーのがしゃくにさわりますね((お前が書いたんだろうが))
ここまでお読みくださりありがとうございました。
齋藤が尊敬するFさんとAさん、ゆるっとしたコメントください!()
リハビリなのでスローペースでも定期的に投稿できたらいいな。