クールな殺し屋たちが健在『777』
デビューしたところから、ずーっとずっと追いかけてきた伊坂さん。どうにかしてこの人の本を売りたい、みんなに知ってほしいと思ったあの日から気づけば20年以上が経過してるんですよ。いやー歳を取るわけだ。
ベストセラーになり、映画になり、というのはあたり前の出来事になったとして、一番感慨深いのが新入社員たちが紹介してくる本に入ってる「好きな作家:伊坂幸太郎」という文字ですかね。
伊坂さんの作品に出てくる人物というのは、得てしてクールでして「クールを気取ってる」という域を超えて、なんかオカシイ感じがあるんです。デビューして数年は「こんな血圧低そうな人ばっかりが登場人物だったらいつしか飽きちゃう日がくるんじゃないか、たまには熱血漢を…」なんてな、いらん心配もしてたころもあるのですが、20年経っても飽きないですね。
その中でも、このちょっとズレた感が一番ハマるのがこの殺し屋シリーズではないかと思います。
映画のアウトレイジが「全員悪人」を掲げてましたが、こっちも負けず劣らず全員悪人。躊躇なく殺す、殺す、殺す。ただ、良く言えばクール、そして悪くいっても言わなくてもなんかオカしい殺し屋たちなので、命をなんだと思ってるんだ、という道徳的な事を考える暇もありません。
さらに上手いのは、その殺し屋たちよりもさらに上にいる「悪」をきちんと設定して、読者を勧善懲悪のルートにさそいこむあたりですね。ま、いわば現代の必殺仕事人です。
血塗られた惨劇の舞台はホテル。あれだけ人が死んだなら、かなり強烈なゾンビや亡霊が出そうだから、あのホテルを舞台に誰か違うミステリを書いてくれよ。と思ってしまいました。とにかく、あー、面白かった。
シリーズ未読の方はまずこちらからどーぞ