グローバル化を目指す前に知るべき真実『ボーダー 移民と難民』
佐々さんに初めてお目にかかったのは『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』の刊行を記念して行われたトークショーの時のこと。
某氏からの「対談にしたいので相手役やってください」という類を見ない無茶ぶりを受け、慌てて本を読み、対面したのがトークショー開始30分前くらいのことでした。
”ノンフィクション作家”という肩書から、勝手に堅いイメージを持っていたのですが、目の前に現れた佐々さんは太陽かヒマワリか!といった明るいイメージを持つ人でした。(そこで初対面で盛り上がりすぎた二人の話は今日はおいておきます)
そんな明るい佐々さんは、その中にどれだけの重いものを抱えて持っているんだろう。彼女の作品を読むたびにそう思うのです。
今回の作品『ボーダー』は移民や難民の実態を描いたノンフィクションです。本文中にも書いてありますが、佐々さんはもともと日本語教師という経歴をお持ちで、多くの在留外国人と接してきました。
ウクライナ難民の存在でここ最近難民問題が注目を集めていますが、佐々さんが目にしていく難民や移民、そして入管の実態は身近にある地獄といってもいい状況です。
確かに、テレビなどのメディアなどでもちょこちょこ取りあげられ、問題視されていた問題ですが、それを忘れようとしていた自分にも気づくことになります。
ある章で佐々さんのこんな心の中のつぶやきがあります。「日本がベトナム人を受容れることができるかという心配をしているんじゃないんです。私は、ベトナム人が日本を見限るんじゃないかと危惧しているんです」
至る所で”グローバル化”が叫ばれる中、私たちは国際社会の一員としてやるべきことをやっているのか。。。この佐々さんのつぶやきが心に深く刺さりました。
難民がいる一方で、それを救おうと動く人、そしてそんな人の波も大きくなってきています。佐々さんが1ヶ月暮らした難民センターの様子は、私たちに「出来る事」「やるべき事」を示してくれるものでした。
自分で読んでいない本を引くのもなんなのですが、これから出る本で紹介した
『親切の人類史』という本の紹介に”本能的に利他行動をとる動物はヒトだけではないが、海を越えて見も知らぬ個体を手助けするのは人間だけ。”という一文がありました。海を越えても手助けをする事はできるものの、身近にあっても知らぬものは手助け出来ない、ということでもあるのです。
国際社会で生きる、という前に、身近にある問題を知らないとならないよね。と改めて考えさせられた作品です。