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話題の『侍タイムスリッパー』を出版業界と重ねて考えてさらに深くかんがえさせられています

番外編で映画感想です

「低予算」「単館でも話題」「第二のカメ止め」「めちゃくちゃよかった」
観ると決めた理由は何人かの知人のコメント、いろいろなところで目につき始めた記事のタイトル、そんなところでしょうか。
もしブームが起こるのであれば、超話題になる前に観たい…ということで、上映館が広がったタイミングで慌てて観に行ってきました。

拡大上映のタイミングでのGoogleトレンドの動きはこんな感じ。

Googleトレンド「侍タイムスリッパー」のキーワード動向

先に観てあると、ここからグラフがどーんと伸びていくのを、応援団の気持ちで見ていられるようになるんですよね。
*本で言うところのプルーフもそうなんだけど、応援団の気持ちと当事者の気持ちをどうやって上手く山にできるのかって割と大きなテーマかも

監督が11役もやっている。という情報もちらっと見ていたので、どれだけ器用な役者なんだと思ってびっくりしたんですが、そうではなくて裏方全部でした。高校や大学の文化祭だってもっとスタッフを使うんじゃないかと思うくらいの小規模体制で、内容以上にエンドロールにびっくりしました。

低予算とは言ったって、カツラもの、時代劇を撮るとなったらそれだけでもそれなりの予算がかかるじゃない…どういうこと?と思いながら見ていたものの、その疑問はすぐにふっとびました。
まさに情熱が映画人たちの心を動かしたからこの映画が出来上がったんですね。

「やりがい搾取」という言葉があります。時代劇衰退の中、それでも自分の矜持にすがって時代劇の仕事をし続ける登場人物たちなどはまさに「やりがい」の搾取をされている側なのかもしれません。
劇場が、テレビが、撮影所が活気に溢れていた頃の事を語る人たちの言葉と、今の現状の落差は心に迫るものがあります。でもね、この映画を見ていて思ったんですよ。「搾取を責める前に、そういう矜持や情熱を知らしめて世の中を変える努力をしてみた方がいいんじゃないか」って。
そんなことを考えれば考えるほど、自分の身を置く出版業界と重ねちゃってそれだけで泣けてきます。

雷に打たれて幕末から現代にタイムスリップしてきた。
という設定もあり、どこか昭和のコメディドラマのような気配も漂います。そんな目で見てたところ、主人公(会津藩士)の高坂が現代でケーキを頬張るシーンでいきなり涙腺がやられました。周囲(私が見た回は、人はぽつぽつでしたが)でもすすり泣きが聞こえたので、きっと心を動かされたのは私だけではあるまい。
笑えるし、泣けるし、本当にいい映画でした。

低予算をうたっているだけに、派手なCGなんてどこにもないし、なんならテレビで観ても感動するとは思うけれど、この映画は映画館で観るべき映画ですよ。きっと。
時代劇という歴史を紡いで来た先人たちのリスペクトと、今その仕事を支える人たちの矜持が心に刺さり続けています。

『キネマの神様』を読んだときの気持ちを思い出しました。


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