行間になにを見るか、作家の凄みがわかりました『ぼんぼん彩句』
よく「この句を読んで、著者の思いをこたえなさい」みたいな問題があるじゃないですか。
そうすると、目をつむったら浮かんでくる家族の情景とか、子どもの笑い声とか、その背景に美しい景色。みたいなものを想像しがちですよね。
”散ることは実るためなり桃の花”
という句を見て、私が想像した景色は、宮部さんにかかるととんでもないサスペンスになり、サイコパス家族みたいな人が出てきて怖ーい話になっていました。
こんな感じに、実際の句会で読まれた歌を物語として展開したのがこちらの小説です。詠む(というかこの会が)のも楽しそうですが、こういう楽しみ方もあるのねー という新しい驚きがあります。
とはいえ、表紙から想像される明るさのイメージは少なく、展開される話は割と「ちょっと怖い話」寄り。
え、この行間にこんな複雑な人間関係を読んじゃうわけ?と。
面白かったけど、それ以上に怖い。そしてすべてが短編ということで、読者に投げかけて読者側で考えるべき空白が多いのがまた怖い。
そんな作品集でした。
これを読むと、何を読んでも著者の思いなんてこたえられる気がしないな。という気持ちになってくるのでありました。