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新しいおひとりさま物語、かも『襷がけの二人』

表紙に二人の若い女性がたすき掛けをして、家事をしながらおしゃべりをしている姿が載っていたので、女中さんの友情物語かしらと思って(いつものことながら他は何も見ず)読み始めた作品。
読み終わってから振り返ると、ある意味ちょっと風合いの違った「おひとりさま」物語なのではないかと感じています。

表紙を飾る二人は、女主人と女中さん。この二人の人生そのものが襷がけのような関係でもあります。
戦前~戦中~戦後、というきな臭く、辛い時代を生きているという感じはこの二人から受けません。(読むまでは江戸の人情物語かしらと思ってました)戦火に焼かれることは、彼女たちの人生に大きな傷跡を残すことにもなるのですが、それを知ってもなお、このどこかのほほんとした空気だけが心に残っています。
年はかなり違うはずですが、彼女たちの関係はおしゃべりに興じる女学生のような感じでした。ぽかぽかした縁側で、のんびりと過ごす彼女たちのこの日々にも、大きな苦悩が横たわっていたのにもかかわらず。
もしかしたら日本人の大半は、こんな感じでのんびりしたまま戦争に引きずり込まれたのかもしれません。

様々な家族の形や生き方が論議されている中ではありますが、改めて「家族の形なんて様々よね」と、思うのでした。支えたり、支えられたりして、人は家族になっていく。結局は最後は誰もがひとりだけど、それまでの生き様次第でひとりにならなくてもいいのかもしれない。
そんな「新たなるおひとりさま像」を見た気がします。

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