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拗らせ受験生の私は

時は90年代。ティーンの私は、「ありのままの自分でいいの~。」と高らかに歌い上げられるはずもなく、茨城の片田舎でただ自意識を拗らせていた。

女子高生向けファッション誌『セブンティーン』を毎日穴のあくほど読んでは、「制服のスカート短くして、ビューティーラボで髪の毛染めて、ピアス開けて、メイベリンのマスカラつけて、スミスのルーズ履いて…」
みたいな女子高生に憧れていたのに。実際の自分はそれとは程遠い。
「高校デビュー」して大人っぽくなっていく中学の同級生と会うたび自分だけ成長していない気がして居心地が悪かった。自分ダサい、イケてない、消えたい…みたいな感じ。

私の通っていた高校は、気の弱い女性はその名を聞いただけで卒倒する事でお馴染み茨城を南北に横断するJR常磐線から、さらにローカル線に乗り換え2駅目(ちなみに1駅目は無人駅)のド田舎の進学校。辺境から素朴な優等生が集まってくるため全体的に地味な雰囲気だった。入学式張り切ってチークを塗っていったところ同級生に「ほっぺ赤いけど、大丈夫?」と言われてしまった。そんなところでひとり『セブンティーン』を体現するとただただ浮いてしまいそうだ。

更に家では戦闘能力高めの母が目を光らせている。
高校生の娘が多少色気づくのくらい想定内ではないかと思うのだが、母のチェックは、髪色(染色NG)、耳(ピアスNG)、眉(アムラー風細眉NG)、指先(ネイルNG)…と細部にまで余念がない。下手に反抗するとマジで殺られそうである。
いつまでたっても中1からほぼ変わらぬ容貌のまま、大学生になったら思いっきりキラキラするんだい、と息巻いていた。
そう、セブンティーンライフを諦めCanCamライフに賭けることにしたのである。

高3になると、CanCam誌面でもよく見かける都会的な雰囲気のミッション系私立大学をターゲットに受験勉強を始めた。いい塩梅に家から通えないため下宿をすることになるだろう。そしたら母の監視下からも逃れられる。私のやりたいフランス文学の授業も他大に比べて充実してそう。(ってゆうのは後付け)

華やかなキャンパスライフの中で洗練されていくキラキラ女子大生な私♪
相変わらず浅はかで夢見がちな奴である。 

お得意の空想にワクワクしながら赤本を9年分繰り返し解いた。
家じゃ勉強できないから友人と放課後教室で残って勉強した。
英作文が毎年出ると分かれば、英語の先生に特別に添削をお願いした。
夏休みには、柏の予備校まで足を運び、カリスマ予備校教師の講義を受けた。
英単語帳には、休日父に連れて行ったもらったキャンパスで撮影したチャペルの写真をしおり代わりに挟んで、眺めていた。
模試の結果が悪くて落ち込んだ時は、一人電車に乗りキャンパスまで足を運び、校門前で「神様、どうかここに通えますように、パンパン(二拍手)」、と願掛けして帰ってきた。

てな感じで一通りの受験生活を全うし、無事志望大学へ合格することができた。

ところが、自信がついたからか、気が抜けたからか、はたまたただ面倒だったからか。
結局念願のおしゃれ大学入学後、大しておしゃれを頑張るでもなく、頭ぼざぼざほぼノーメーク、ユニクロのジーンズに履き古して運動靴と化したコンバース、というズボラないで立ちで4年間過ごしてしまった。
CanCamライフはどこへやら。

とまあ、動機は何であれ目標に向かい一直線に努力するって気持ちいいものだ。
なりふり構わず合格を目指していた受験生のあの頃が一番キラキラしていたかもしれないな。

編集:ほん さち

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