世界一高い!?幻のネコの糞コーヒーはいかが?
離れて暮らす両親が毎朝のコーヒーの時間を大切にしている事を知っている。ブランド品を買ったり海外旅行に行ったりということもなく、日々小さな家でそれはそれは実に質素に暮らしているのだが、コーヒー豆だけは、やれエピオピアだグアテマラだと遠い国の名前を得意げに口にしながら市内の老舗コーヒー店でこだわりのコーヒーを買ってくる。豆の状態で買ってその場で店員さんに引いてもらう。粉だと酸化しやすく風味が落ちるのだとか。そんなこだわりのコーヒーをハンドドリップで淹れる。この新聞を読みながら朝ドラを見ながらのたった10分ほどが、老夫婦にとって一日の中で一番満たされる時間のようだ。
娘の私も両親ほどではないもののコーヒーが好きだ。昨夏のバリ島旅行ではコーヒー栽培所を訪れた。
コーヒー豆を食べたジャコウネコから排泄された糞からコーヒー豆を取り出し、よく洗って乾燥させた後焙煎させたというびっくりなコーヒー「コピ・ルアック」を、そこで飼育されている当事者ジャコウネコを愛でながら試飲してみる。
ネコの体内で12時間自然発酵させることで独特の複雑で深い風味を得たこのコーヒーは旅の疲れをすっと取ってくれた。
「コピ・ルアック」は、ジャコウネコの腸を通すため一日少量しか採れない。その希少性から日本のホテルで飲むと一杯5千円とか8千円するとも言われる高級コーヒーだ。一説には「世界一高い」と言われるほど。バリ島はコーヒーの産地で、「普通のコーヒー」もたくさん売られているのだが、現地でもそれらに比べて格段に値が張る。それでも私はコーヒー好きの両親なら喜ぶと思い、この珍しく美味しい「コピ・ルアック」を買い求めた。
帰国後実家に立ち寄り得意げに「コピ・ルアック」を手渡し、どんなコーヒーかと熱っぽく説明したところ、「え~!ネコのフン??気持ち悪~い!」と一蹴されてしまった。ちゃんと洗ってると伝えたが、「でも洗ってるところを見てきたわけじゃないでしょ?」と反論。バリではリゾート気分も手伝って清々しい気持ちで一気に飲み干したが、清潔大国日本でそんな事言われてしまうとは。こちらも弱気になってしまう。。
無理強いできないまま時は過ぎ、やがてこの高級コーヒーは賞味期限切れを迎えてしまった。そんな両親の今一押しのコーヒー豆は、「ホンデュラス」産。調べたところホンデュラスは、有名なビーチや遺跡などを有する中米の美しい国のようだが、一方で殺人率世界一というパンチの効いた国だった。旅行ついでにコーヒー豆買ってくるにはちょっとハードルが高い。
喜ばれるお土産って難しい。
編集:アカヨシロウ