パラダイスな器たち
数年ほど前引っ越したタイミングで多くの器を処分した。引越し先は単身用のコンパクトマンションで収納スペースに限りがあるし、器に限らず本当に必要なものだけ吟味して持っていくことに決めていたからだ。
にしても減らしすぎたかな。
作り置きした惣菜をタッパーからそのまま食べていて、なんだか残念な気持ちになった。
コーヒーや紅茶、ハーブティー、なんかもお気に入りのティーカップで楽しめたら、もっとステキなおうちカフェ時間が楽しめるはずなのだ。
そんな話を何気なく友人にしたところ、「じゃあ引越し祝い、なんかいいもの送りたいと思ってたから器にするよ、アラビアとかどう?」と言ってくれた。優しい。しかもアラビア。大好きすぎるけど自分で買うにはちょい気合いがいるお値段設定。嬉しい。
程なくして憧れのアラビアの器セットが新居に届いた。友人は失職中だったし皿1枚くらいを想定してたのだが、白い箱を開けるとそこにはマグカップ、深皿、大判のプレートが詰め込まれていて驚いた。彼女のお財布事情は分かりかねるが奮発してくれたんだろうな。
さらに私を唸らせたのは、全部ひとつずつだったこと。
器ってペアで購入すること多くないですか。かつてのわたしもそうだった。
あんまなんも考えてなかったが、今思えばなんとなくそれは自分と彼氏の分、という想定なのだ。その割に大体の場合、彼氏なんて全然いないのだ。
でも彼氏がいなきゃいけないもんだって思い込んでたし半分願掛けだったような。
しかし、友人はわたしより分かってくれていた。いつも彼氏ができない結婚できないと大騒ぎしているくせに結局はいつもひとりでいるわたしの事。
「ひとりでも大丈夫」とか「ひとり時間楽しんで」とかそんなメッセージだろうか。
ちなみに友人がくれた器はパラティッシという人気のシリーズ。白地に果実やお花をモチーフを描きパラティッシ、つまりはパラダイスを表現しているのだとか。
始めは使うのがもったいなかった。わたしにとっては高級品だし大好きな友人からの大切な贈り物だし。特別な時だけ使おうか、なんて思っていた。けれどその方がもったいないし、手持ちの器は数少ないし、で結局普段使いしている。
この器と過ごすひとときはまさにパラダイスなのである。
文:べみん
編集:鈴木乃彩子
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