感染症や災害への対応力強化についての動向(1126介護給付費分科会の動向)
昨日行われた、介護給付費分科会における感染症や災害への対応力強化についての動向について、見ていきたいと思います。
感染症や災害編対応力強化については、以下の4つの論点で議論がされています。
特に新型コロナウイルス感染防止対策に関わる論点①、昨今の福祉施設の自然災害に関わる論点②については、早急な対応が求められる内容といえます。
論点①:感染症対策の徹底
論点としては、各サービス事業者の感染防止の取組強化や感染対策を図りながら継続的なサービス提供を求めるために、どのような対応策が必要か議論されています。
施設系であれば、上記のような対応案はすでに感染症委員会で実施したり、施設内研修で訓練(シミュレーション)なども行っていると思います。
しかし大事なのは、いかに職員や来訪者が施設にウイルスを持ち込まないかであり、委員会の開催や指針を整備する云々はあくまでも表面的なことと言わざるを得ないでしょう。
ある施設は、施設の入り口に移動できる簡易の手洗い場を新たに設置し、施設に入る前に手洗い・うがい・検温・手指消毒を行ってから施設内に入るよう徹底していたり、来所者の入っても良いエリアを線引きし、職員や利用者との接点を完全に区切っている施設もあります。
いかに法人・施設・事業所の新型コロナウイルスをはじめとする感染症に対する危機意識を持つかにより、大袈裟かもしれませんが、結果的に感染しなかったという安心につながる可能性は非常に高いと評価できると思います。
福祉サービス第三者評価で訪問した通所系事業所では、デイフロアで利用者が座るテーブルにアクリル板を設置したり、マスクの着用を徹底している事業所もありました。
認知症などによりマスクをつけたがらない利用者への対応やテーブルに対角線上に2名しか座れないため、テーブルを増設したり、利用制限をかけている事業所もあると思いますが、いかに飛沫感染のリスクを軽減できるかが通所系事業所の課題といえるでしょう。
あるデイサービスでは、家族の意見もあり、長欠になっている利用者に対して、事業所から月間予定表や脳トレ、自宅でできる機能訓練プログラムを持参して提供するなど、関係性が切れないよう配慮している事業所もあります。
そうした気配り、心配りを継続すること、また事業所における感染対策についてホームページやブログ、 SNSなどを通じて発信し、利用者、家族、ケアマネジャーなどの関係者に安心、安全を訴えていけるかが、利用率の回復にも良い影響を及ぼすでしょう。
論点②:業務継続に向けた取組
2つ目の論点は事業継続計画(BCP)に関する内容です。
福祉サービス第三者評価の項目にも事業継続計画(BCP)の作成が必須事項として設定されていることはお伝えしている通りです。
しかし、災害マニュアルや防災マニュアルといった域を超えておらず、事業継続のための計画には至っていないケースが多くあります。
現在、防災士の資格取得の勉強をしていますが、そもそも、事業継続計画は製造業におけるサプライチェーンが進展し、原材料や部品の供給、輸送、販売などを担う取引先が被災すると、連鎖に事業を中断せざるを得ない状況がは休止、事業停止に陥るリスクが増大しています。
福祉においては、サービス提供自体は施設や事業所で完結する場合が多いですが、障害福祉の通所系の例でいえば、保護者や利用者が住んでいるグループホーム、入所施設と日中活動先がどう連携しているか、日中活動先で被災した場合、送迎や待機の取り決めになっているかなどは詰めておく必要がある要素と言えます(そのための備蓄を通所先で確保できているでしょうか?)。
被災した→事業休止となってしまっては、利用者に対するサービス提供がストップしてしまいますし、その結果、事業存続が難しくなる可能性もあります。
事業休止に至ったとしても、いかに可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順などに加え、被害を最小限にする事前対策などの視点も防災・減災の視点として計画に付け加えておくことが事業継続計画には求められます。
事業継続計画で平常時に準備すべきポイントは以下の5つです。
①重要業務(中核事業)を特定する。
②目標復旧時間・目標復旧レベルを定める。
③取引先とあらかじめ協議しておく。
④事前対策や代替策を用意しておく。
⑤従業員と事業継続計画(BCP)の方針や内容について共通認識を持つ。
事業継続計画の策定のポイントは以下の通りです。
①迅速な意思決定を行うための指揮命令系統の明確化
②同業者や取引先との連携など代替拠点の確保
③重要業務の継続に必要なキーパーソンを洗い出す、要員の確保
④複数の情報発信及び情報共有ができる手段の確保
⑤実効性を確認し、担当者・組織に定着させる訓練・演習の計画・実施
日々の防災訓練などで、事業継続計画(BCP)に沿った動きを確認し、内容のアップデートをしていくことが重要です。
今年でいえば新型コロナウイルスによる利用自粛の影響もあり、5月が底辺となり、徐々に回復傾向を示しています。
民間事業所は利用制限をかけたり、閉鎖に追い込まれ、利用者が他事業所を利用する羽目になるケールもあるそうです。
先が読めない時代だからこそ、さまざまな視点でリスク管理を行うことが求められます。
南関東における福祉避難所に指定されている施設のうち、660施設では浸水リスクがあることがわかりました。
安全だと思われていた場所が、実は命の危険がある可能性を孕んでいるのです。
皆さんの施設においても、そのリスクがあるかどうか再度確認し、事業継続計画(BCP)の作成につなげていただきたいと思います。
給付費分科会では、事業継続計画(BCP)の作成を求めていくとともに、3か年の経過措置が取られることが提案されています。
いずれにせ、事業継続計画(BCP)の作成が求められていますので、計画的に準備していくことを検討してください。
経営リスク以外に、感染症や災害に対する対応力強化が福祉施設の事業継続に関わる大きなリスクに位置付けられるようになりました。
感染症や災害対策について、1法人1施設のような小規模法人では十分な体制を確保することが難しいと推察されます。
"社会福祉連携推進法人"の推進や緊急時に備えた平時からの応援体制の構築を進め、地域全体で人材派遣のコーディネートや物資の供給などの連携体制の確立が急務といえます。
社会福祉法人や社会福祉施設として、万が一に備えた体制強化を検討されたい。
管理人