介護職員処遇改善加算が一本化「介護職員等処遇改善加算」について
11月30日に「第233回 社会保障審議会 介護給付費分科会」が開催されました。
議題として、「介護人材の処遇改善加算」が取り上げられました。
論点として、「論点①:処遇改善加算の一本化(全体像)」「論点②:職種間配分ルール・賃金改善の方法」「論点③:新加算への移行・経過措置」の3つに整理されています。
今回はこの3つの論点について取り上げ、「介護職員等処遇改善加算」についてみていきましょう。
論点①:処遇改善加算の一本化(全体像)
「介護職員"等"処遇改善加算」の概要
現在、いわゆる処遇改善加算といえば、「介護職員処遇改善加算」、「介護職員等特定処遇改善加算」、「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが設定され、それぞれに算定要件も異なり、施設・事業所側からすると、事務手続きの手間が多く生じていました。
それを受け、処遇改善加算を一本化し、特定処遇改善加算のように介護職員以外にも配分できるよう「介護職員"等"処遇改善加算」と少し名称を変更し、Ⅰ~Ⅳの4段階の加算区分になるようです(現時点では確定要素ではないため「~ようです」とあえて表記としています)。
現行の3つの処遇改善加算がどのように一本化されているかがまとめられています(以下にコメント欄の内容を補足して記載します)。
「介護職員"等"処遇改善加算」の加算率は以下の通りです。
現行の3つのパーセンテージの合計となっており、特養では新加算Ⅰでは①+④+⑥の合計の12.6%となります。
現行加算の3つの加算Ⅰを算定していれば、「ウ.職場環境等要件」の見直しが予定されますが、新加算Ⅰの算定は出来るのではないかと思います(ただし、「論点②:職種間配分ルール・賃金改善の方法」で月額賃金改善が強化されるため、それへの対応が必要)。
着目していただきたいのは、新加算Ⅲでは①(処遇改善加算Ⅰ)、新加算Ⅳでは、②(処遇改善加算Ⅱ)になっています。
処遇改善加算Ⅱを算定していた特養では、新加算Ⅲでは2.3ポイント相当額(①-②)、新加算Ⅳでは2.7ポイント相当額(②-③)が賃上げされることになります(これってもしかして…)。
現行の配分ルールからの主な変更点
要件の変更点としては、「①グループごとの配分ルールの廃止(いわゆる2:1:0.5)」と「②新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分」、「③職場環境の更なる改善、見える化(職場環境等要件の見直し)」です。
「②新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分」については、「論点②:職種間配分ルール・賃金改善の方法」で取り上げます。
①グループごとの配分ルールの廃止(いわゆる2:1:0.5)
「特定処遇改善加算」の算定要件で一番やっかいな用件でしたが、これが「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な 配分を認める」こととされ、撤廃されます。
③職場環境の更なる改善、見える化(職場環境等要件の見直し)
生産性向上及び経営の協働化に係る項目を中心に、令和7年度以降、人材確保に向け、より効果的な要件へと見直しがされます(以下、イメージ参照)。
新加算Ⅰ・Ⅱ(特定処遇改善加算に相当)では、区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上うち⑰又は⑱は必須)、新加算Ⅲ・Ⅳ(処遇改善加算に相当)では、区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組んでいることが求められます。
論点②:職種間配分ルール・賃金改善の方法
職種間の配分ルールについては「事業者・自治体の事務負担を踏まえ、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・ 技能のある職員に重点的に配分することが望ましい」という基本的な考え方」を踏襲し、施設・事業所内での柔軟な運用が認められます。
ただし、「介護職員の月額賃金の改善をより強力に促す観点から、現行のベースアップ等支援加算のベースアップ等要件を見直し、一本化後の新加算に適用してはどうか。具体的には、介護職員等処遇改善加算の配分方法について、新加算Ⅰ~Ⅳのいずれの場合においても、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件としてはどうか」と記載されています。
特定処遇改善加算のグループごとの配分(2:1:0.5)の配分ルールは撤廃されますが、「新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てる」が新たに設定されます(新加算Ⅳの加算額の1/2以上の月額賃金改善はサービス種別により異なりますので注意が必要です)。
「新加算Ⅳの加算額の1/2以上の月額賃金の改善」のイメージは上記を参照してください。
処遇改善加算相当額を賞与などの一時金として全額支給していた施設・事業所も少なくないと思いますが、今後は月額賃金の改善に重点を置いて、新加算Ⅳの1/2相当額を月額賃金に上乗せして支給することが要件として求められます(すでにベースアップ等支援加算で「賃金改善額の3分の2以上は「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」に充てる賃金改善を実施すること」を実施している場合、具体的にどれぐらいの影響が出てくるのか、シミュレーションソフトを作ってみようと思います)。
また、現行のベースアップ等支援加算(2.4%)を取得していない事業所は、一本化に伴って増えた加算額のうち、現行のベースアップ等支援加算に相当する額の 2/3(1.6%)以上の新たな月額賃金改善が必要となります(「「介護職員等処遇改善加算」のイメージ」の資料の※3参照)
論点③:新加算への移行・経過措置
新加算への移行に際し、「処遇改善加算等の一本化により、既に行われている処遇改善の原資が損なわれ、介護職員の処遇が現行より下がる(下記資料の【☆】部参照)ことがないような制度設計が必要であるという意見に対応すべく、事業所における早期の移行は支援しつつ、激変緩和のための令和6年度中は適用を猶予する経過措置」を設けることになりました。
猶予措置内容は以下の通りです(上記資料の「対応案」より抜粋)
「「介護職員等処遇改善加算」のイメージ」の資料の※2に現行加算の取得状況に応じて、令和6年度末まで、以下の経過措置区分が示されています。
【☆】のような状況に該当しそうな施設・事業所は確認してみてください。
介護職員の月額6,000円ってもしかして…
と強調していますが、本当にそうなるのでしょうか。
「介護職員等処遇改善加算」の加算率でみた2%弱相当額の賃上げが6,000円アップだった…という落ちがないようにしていただきたいです。
介護職員の賃上げも大事ですが、施設・事業所の経営の安定なくして、職員への還元も、継続した利用者へのサービス提供も維持できません。
基本報酬できちんと評価してもらうような働きかけがはやり必要。
そろそろ次期介護報酬改定のやりとりも最終局面です。
管理人
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