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"レス社会"から生まれる新たな創造

毎日暑い日が続いていましたが、すっかり秋の空気に入れ替わり、涼しくなってきましたね。
新型コロナとどのように付き合っていくのか、いわゆる"Withコロナ社会"における新しい生活様式が随分と定着してきたように感じます。

外出する時はマスク着用は当たり前で至る所に手指消毒するスポットができ、3密(密閉、密集、密接)やソーシャルディスタンスという言葉が市民権を得て、国民皆が意識して過ごす状況になりました。
飛沫感染対策として、レジでは現金のやり取りから交通系、IC系といった"キャッシュレス"決済も一般化しました。
在宅ワーク中心で仕事ができる方達は"ペーパーレス"化となり、会議もZoomを用いたウェブ化により移動時間はゼロとなり、世界と名実ともに"ボーダーレス"に繋がることが出来ます(子どもがやっている「フォートナイト」といったネットゲームなんか本当にすごいなぁと思ってしまいます)。

こうした社会を「レス社会」と呼ぶようですが、効率化・合理化のためだけにいろいろなことを"レス(Less:より少ない)"していけば良いという話だけでもないと思います。
例えば、飛沫感染対策として対面ではない"コミュニケーションレス"が行き過ぎれば、場の空気感や相手の表情などを踏まえた人間関係(信頼関係)の構築に支障をきたすのではないかと思いますし、逆に"レス"による弊害が人としての社会性や地域コミュニティのつながりをさらに弱めてしまうのではないかとも思ってしまいます。

時代にあわせた解釈で再定義

少し話は脱線し、会社からの帰り道、メルセデスベンツの"GLC"というSUVを見かけました。しかも"クーペモデル(左側)"の方。

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車好きの方なら"SUV"や"クーペ"というキーワードはすぐにおわかりいただけると思いますが、そうでない方のために少し補足します。
最近ブームになっている"SUV"とは「スポーツ・ユーティリティー・ビークル(Sport Utility Vehicle)」の略で、BMWは"SAV"「スポーツ・アクティビティ・ビークル(Sport Activity Vehicle)」と呼んでいます。
未舗装路や悪路を走ることができる走破性や荷物がたっぷり乗せられる積載性が他のモデルに比べ長けています。
かくいう私も "SUV"好きですが、"SUV"と一言でいっても「街乗りSUV=2WD・4WD、SUV風(トヨタ ハリアー等)」から「本格SUV=4WD、最低地上高が高い、サスペンションのストロークが長い(ランドローバー ディフェンダー等)」といろいろなタイプがあります。

もう一つのキーワードである"クーペ(Coupe)"とは、フランス語で「切られた」といった意味で、箱型の2列シート馬車を2つに切った意味合いで名付けられています。
"クーペ"と聞くと、「2ドア車」、「スポーツカー」といったイメージではないでしょうか。

話を今日見かけた"GLC"に戻しますが、この"SUV"には"クーペモデル(左側)"が設定されています。
上記の説明でいえば、"SUV"でありながら、「2ドア」、「スポーツカー」という解釈になります。
しかし、写真を見ていただければお分かりの通り、「2ドア」ではなく、セダン(いわゆる乗用車と呼ばれる4ドア車)より車高が高いようなモデルとなっています。
メルセデス好きの方には失礼な表現になるかもしれませんが、"GLC"は「"SUV"風+"クーペ"風」なモデルです。
走破性はいわゆる「街乗りSUV」ですし、"クーペ"のようにかっこよさやスポーティー性を重視していることで積載量もそれほど見込めません(セダンよりかは大きい)。

このように、"GLCクーペモデル"はそもそもの"SUV"や"クーペ"の解釈を現代のデザイン言語に読み替え、再定義して生まれたモデルといえます。
「"SUV"はこうあるべし」「"クーペ"はこうでなくてはならない」というボーダー(境界)にこだわるのではなく、"ボーダーレス"な視点を持つことで、あらなた価値の創造に発展するのです。

抽象化から新たなイノベーションの芽を育む

車のことを少し熱く語ってしまいましたが、本題として皆さんにお伝えしたいことは、「地域包括ケアシステム」や「地域共生社会」これまでの福祉サービスにあった「〜こうあるべし」「〜こうでなくてはならない」といった社会的機能がだんだん曖昧になってきて、福祉サービスの"ボーダーレス"化が進んできているように感じます。

地域共生社会

福祉サービスにあった「〜こうあるべし」「〜こうでなくてはならない」といった価値観にあまりに固執し過ぎてしまうと、サービス提供についても現代に合うよう読み替え、抽象化することで再定義が進まず、イノベーション(ひらめき・気づき)の芽を育むことにはつながらないでしょう。

例えば、介護保険法には、デイサービス(「通所介護」)は以下のように定義されています。

「通所介護」とは、居宅要介護者について、老人福祉法第五条の二第三項の厚生労働省令で定める施設又は同法第二十条の二の二に規定する老人デイサービスセンターに通わせ、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うこと(利用定員が厚生労働省令で定める数以上であるものに限り、認知症対応型通所介護に該当するものを除く。)をいう。


どこにも「折り紙や塗り絵、脳トレをしなければならい」とは定義されておらず、しいていうなれば、「当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うこと」の一つでしかないのです。

「デイサービスのレクリエーションはこうあるべし」といったように、施設・事業所が大切にしてきた価値観やノウハウの上に、サービス提供が行われていると思いますので、それを否定するつもりはありません。
しかし、デイサービスであれば、いつまで折り紙や塗り絵、脳トレと称した計算ドリルをしなければならないんでしょうか。
私が歳をとって、デイサービスに通うことになって、そのようなことをしいられたら、確実に次の日から拒否するでしょうね。

女性利用者はおしゃべりすることで楽しく過ごすことができるかもしれませんが、特に男性利用者の過ごし方はどの事業所においても課題になっていると思います。
利用者一人ひとりに道具箱的なケースを用意し、通所日に継続して取り組めるもの(脳トレ、塗り絵、工作、読書、編み物などなど)を用意したり、各自が有意義な時間を過ごせるような働きかけをしているデイサービスもあります(一日中、何もしないで椅子に座っているなんて、とても苦痛です)。
すでにWiiを用いて身体を動かすレクリエーションを導入したり、iPadなどのタブレットでゲーム、脳トレ的なアプリを活用しているデイサービスもありますから、タブレットによる指先のトレーニングとして位置付けられる日はそう遠くないといえます。
ある事業所では、iPadなどのデジタルデバイスの持参に関わるトラブルを回避するため、使用同意書を取り交わし、故障や紛失について意思確認をした上で持ち込んでもらえるよう働きかけはじめました。
ただ単に時間潰しのために使用してもらうのではなく、ケアプランとのつながりを意識しながら、効果的に使用することが重要です。

こうしたことも、デイサービスは「〜こうあるべし」「〜こうでなくてはならない」という職員目線の”ボーダー”を引くのではなく、いかにデイサービスに求められている社会的機能は何かといった大局の視点で解釈し("ボーダレス"的視点)、新たな価値を創造するかが、イノベーション(技術革新、ひらめき)を生むことにつながるのです。
短時間の機能訓練に特化したデイサービスは、男性利用者のニーズにうまく応えたビジネスモデルの一つだと思います。

保育園では、日々の連絡帳がクラウド化し、保護者がスマホを介して閲覧することができるといったことが日常的になってきましたから、このようなデジタル化は待ったなしでしょう。

”レス(少なくする)”する一方で、増えることへの対応を

支払いが"現金"から交通系やIC系といったデジタル決済に移行するように、"レス社会"の到来により、これまで当たり前だったことが違う方法に置き換えられ少なくなってきますが、その一方で増えることが出てくるはずです。

顔を合わせて行ってきたサービス担当者会議がZoomを用いたオンライン担当者会議が一般化するかもしれませんし、FAXでやりとりしているケアプラン(給付費管理票)がクラウドに保存され、もっとスピーディーかつ多職種協働化が促進されることで、地域包括ケアを推進することにつながるかもしれません。
福祉業界はデジタル化が非常に遅れているということは常々伝えている通りですが、ケアマネジャーはZoomの使い方は熟知されていますか?、クラウドって何?という方はいらっしゃらないでしょうか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)に着手しはじめている法人では、"レス社会"を迎えることによる業務の効率化・合理化を図る一方、DXにより新たに取り組まなければならないこと(準備、課題)にいかに対応するかが、"Withコロナ社会"における組織的な対応力を大きく左右することになります。

DXとは、一言でいうと「企業がデータやデジタル技術を活用し、組織やビジネスモデルを変革し続け、価値提供の方法を抜本的に変えること」です。
 (SELECTより)

先ほどのように、Zoomの使い方を知らないケアマネジャーがウェブでサービス担当者会議を開催することはできませんし、ケアプランをクラウドにあげて多職種連携体制を構築することなんて出来ません。
個人情報の保護という観点で、名前にマスキングを施していまだにFAXでやりとりしているなんて、世界がインターネットでつながっている現代社会において、ナンセンスです。
個人情報の取り扱いに関するセキュリティレベルを高めたり、個人情報保護法に則った取り扱いについての管理体制を強化する取り組みを始める方が、よっぽど建設的といえます(健康管理だって、Apple Watchがやってくれれば、バイタルチェックの手間が省けるかもしれません)。

このように"レス社会"を迎えることで、少なくなっていくことと、逆に増えていくこと(DXに関わること)が出てくるはずです。
これまでの慣習を見直し、新しく増えること(DXに関わること)に対処することが必然的に増えてくるでしょう。
GLEクーペのように、これまでの"SUV"と"クーペ"の概念にとらわれるのではなく、全く新しい発想に基づく創造が必要です。

2021年度中にはデジタル庁が発足し、社会全体のDXはさらに加速することが見込まれます。
DXが進めば、"ペーパレス"、"キャッシュレス"、"コミュニケーションレス"は当たり前となるでしょう。
”レス社会”とは、イコール"DX社会"に適応するためのピボットといえるでしょう。
第5次産業革命が目前に迫った中、社会福祉法人や福祉サービス事業所においても、"レス社会"への対応、 "DX社会"への適応力が試される時代に突入するといえます。

最後は、大好きなスカパラの「Paradise Has No Border」(Live Ver. ゲスト:さかなクン)」でしめたいと思います。

管理人

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