ため息俳句 吾亦紅
この時期になると、目に触れさせておきたいという草花がいくかある。
吾亦紅もその一つである。
吾も亦紅なりとつひと出て 虚子
すぐに思い出す句であるが、この句の成立はその名をアイデアとしている。
吾亦紅は花の姿に惹かれるというより、その名が誘う哀れさのような感じが、秋に似合うのである。木の実のような形のものは、小さな花の集合であって、それもバラの仲間であるらしい。それにしても地味な花ではないか。
虚子の「ついと出て」という観察とも感想ともとれる表現は、吾亦紅に目立たぬものの中にあるきりっとした意思の現れを感じさせられるが、擬人法的な作為が甘さになっていると思う人もいよう。
自分としては虚子の優しさもちょこっと感じて、誰にも理解されやすい好きな句である。
ともあれ「吾も亦紅」と云うのも幾つもある命名の由来の説の一つであって、確定的なことではないのだが。それも、ついそれにひっぱられる。
野山に普通にあるらしいが、自分は森林公園まで秋の野草を見に行く際の目当てにしている花の一つだ。
秋になると懐かしくなる花の一つだ。