相手の心情を考慮して打つ君の玉はみにくい!💗『ピンポン』
《乱れ撃ちシネnote vol.004》 22.09.29
【Introduction】
この映画が公開された2002年当時ぼくはほとんど映画を観てなかったのですが当時の備忘録には2002年のベスト1と書き込んでありました。
昨日の『いま、会いにゆきます』とは正反対の強烈なキャラクターで登場した中村獅童には「この人だれ?」とビックリしたことを思い出します。
【Prologue】
汽笛の音とともにpinponのロゴマークの☆印にズームアップする。
画面いっぱいに広がった☆が少年のTシャツに描かれた☆にすり替わる。
「少年〜!」と声がかかる。
橋桁の上に立っている若者がゆっくり下を見下ろすと警官(松尾スズキ)が「何だかわかんないけど人生そんなに捨てたもんじゃないぞ。おじさんなんか競馬で負けて今60円しか持ってないけど頑張って生きてんだ。君が死んだらお父さんお母さんどう思うかな」と橋の上に立つ若者を説得する。
一拍おいて「死ぐ?」と若者。
「死ぐ、あ、ああそうさ。死ぐ気になりゃ〜なんだってできるさ」と警官。
「死がねぇよ」と若者
「そうかぁ」
「空飛ぶんだよ」
「おお、そいつは良かった」
「月にタッチするなんて分けないよ」
「うん、その意気だ」
「アイキャンフラ〜イ」と若者絶叫。
「イエース、ユーキャンフラ〜イ」と警官も絶叫がえし。
橋桁から突然川に飛び降りる若者。
川に落ちる若者がストップモーション。
カメラがストップモーションした若者の周りを周り始めると音楽がかぶさり若者と川を俯瞰で映したカメラは真っ青な空にへ。
(タイトル)
ピンポン
ここまで1分50秒のオープニングでこの作品への期待度が増しましたが若者の顔は写りません。
(画面変わって)
街の片隅の古ぼけた一軒家に「卓球タムラ」の看板。
室内ではピンポン玉の凹みをお湯で修理する派手な装いのオババ(夏木マリ)
その画面に被さり
「ここじゃ俺ペコで通ってるんだ」という声の主に呆れ目線の若いカップルの姿。
「あんたも揃えてくれていいよ学生さん」と声の主がラケットをいじりまわしている手元のアップ。
「ああ、ペコなあ」と男は呆れ顔で相方の女と顔を見合わせる。
主人公ペコ(窪塚洋介)の顔が初めて画面に現れ、
「そんかし俺が勝ったら、ちゃんと、さんくれろ」とソファから立ち上がり若者の頭にラケットを押しつける。
「ペコさん。そう呼べ」と言ってラケットで男の頭をこする。
「あいててて」と男はひるむ。
「毛ぇ抜けちゃったじゃねえかお前」と怒る男。
あわてた女が「あっくんは大学のエースなんだよ。あんたみたいなガキ左手で倒せるんだから」
だらけた口調で「オババ、3番台借りるよ~」とペコ。
「金かけて打つやつにゃ〜貸さないよ〜」とオババ。
この作品はガキ大将でヤンチャなペコと内向的なスマイル(月本誠)、性格の違う幼馴染の高校生二人の友情物語りです。
幼い頃にピンポンを教えてくれたペコはスマイルのヒーローなんです。
【Trivia & Topics】
✻感情を外に表さず無口なスマイルが一度だけ笑った顔を見せたことがあります。
✻俺は卓球で世界のてっぺんを目指すと豪語するペコ。
✻強豪風間(中村獅童)を倒すために中国から送り込まれた刺客も登場します。
✻常に冷静なスマイル。
卓球部の顧問小泉丈(竹中直人)はスマイルに惚れ込み大きな期待をかけていますが「卓球は命をかけるようなもんじゃないでしょ」と冷静なスマイル。
✻人間の生理的限界0.1秒を争う卓球は世界最速の反射神経を競うスポーツだと小泉は熱く語ります。
✻熱心に練習に励むものの人を蹴落として勝つほど卓球に入れ込む気にはなれないスマイル。
✻全国高校卓球最強の風間(中村獅童)は吐き捨てるように言う。
全力で戦うことが相手への礼儀だ。
月本君(スマイル)、私は君のプレイが嫌いだ。
相手の心情を考慮して打つ君の玉は醜い。
奢りがすぎる。
君にはラケットを握る資格などない。
私は嫌悪する。
✻スマイルの考え方。
どうせ気晴らしの卓球。卓球に人生かけるなんて気持ち悪いですよ。
✻この作品の特撮は見事に画面に溶け込み試合がとてもリアルに描かれています。
✻オープニング同様幕切れも見事でした。
✻クドカンのシナリオはいいですね。
本作はとてもていねいに練られた青春映画の傑作です。
✻受賞歴
第26回日本アカデミー賞
優秀作品賞
優秀監督賞
優秀脚本賞
優秀助演女優賞
新人俳優賞 中村獅童
優秀撮影賞
優秀照明賞
優秀編集賞
中村獅童は日本アカデミー賞、ゴールデン・アロー賞、ブルーリボン賞、日本映画批評家大賞、毎日映画コンクールで各新人賞5冠を受賞しています。
【鑑賞ガイド】
😁😁😁😁
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😁😁😁😁😁:見事な作品。
😄😄😄😄:お勧めです。
😀😀😀:楽しめます。
😔😔:苦手です。
🥵:途中下車。
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【巷のうわさ】
Filmarks:☆☆☆★(3.8)
u-next :☆☆☆☆★
本作には個性的なキャラクターが次々に登場しますが卓球部の太田キャプテン役の荒川良々がことのほかお気に入りなんです。
初めて荒川良々を知って大笑いした作品は女子高生二人の友情を切なくもコミカルに描いた青春映画の掘り出し物でした。
その作品を明日ご紹介いたします。
電子書籍「きっかけ屋アナーキー伝」を販売しています。
昭和から平成にかけての企画屋ならぬきっかけ屋の仕事史です。
映画、本、音楽に興味のある方はぜひご一読ください❗
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