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反体制とサイケデリックで浮かれる60年代スウィンギン・ロンドンにやってきた妖精のような女の子💗『ジョアンナ』

《乱れ撃ちシネnote vol.232》

『ジョアンナ』 マイケル・サーン監督 1968年 イギリス

【Introduction】
歌手、俳優、映画批評家の肩書きを持つマイケル・サーンが自ら脚本を書いて監督したデビュー長編映画。
音楽はロッド・マッケンが担当(作詞・作曲)し、ウォーカー・ブラザースのスコット・ウォーカーが歌っている。
ジョアンナを演じるのは南アフリカ出身の新星ジュネヴィエーヴ・ウェイト

この映画はブライアン・デ・パルマ監督の怪作『ファントム・オブ・パラダイス』に似た感触を持つぶっ飛んだカルトムービーだ。
フランス人形のように愛らしい顔立ちと抜群のスタイルでヴォーグから抜け出たような鮮烈なファッションに身を包むジョアンナが登場した場面から目を見張った。
顔つき、声、スタイルすべてキュートで明るくてちょっとおバカな女の子ジョアンナ。今では使われないコケティッシュという表現がピッタリで少女のまま大人になってしまった透明感あふれる女の子。

そんなジョアンナが夏休みにロンドンのお祖母さんの家に居候しながらロンドン王立美術学校のサマー・セミナーに通い、友達をつくり、恋をし、不倫をして捨てられ、またまた恋をして夏の終わりとともにロンドンを去る。

泥沼状態となったベトナム戦争、マーチン・ルーサー・キングが暗殺され、初のロックミュージカル「ヘアー」がブロードウェイで上演され、若者たちの間で反体制意識が芽生え、ミニスカートやサイケデリック・アートで身を包んだ若者たちで賑わった60年代“スウィンギン・ロンドン”を舞台に繰り広げられる一人の女の子の成長物語だ。

【物語の概要】
王立美術学校に通うためジョアンナ(G・ウェイト)はひとりロンドンにやってきた。若く美しい彼女の、青春の日々が始まったのである。
やがて絵の教師キャスと親しくなり、黒人娘バリルや、その兄ゴードンらと知り合っていった。そしてドミニックという若者とも。ある夜、パーティーの席で若い百万長者ピーター(ドナルド・サザーランド)と会った。彼はバリルと恋に落ち、ジョアンナやドミニックをもつれてモロッコの別荘へおもむいた。
海と夕陽の美しい浜辺。だがピーターには不治の病気があり、長くは生きられないと、ジョアンナにだけ打ちあけるのだった。短い命を人を信じ、人を幸福にし有意義に終りたいと語りジョアンナを感動させる。

やがてロンドンに帰り、再びジョアンナの華やかな生活が始まった。若くて気ままでフリーなセックス。どんな時でもジョアンナは魅力的な娘だ。キャスとの関係も再び始まった。そんなある日、ロンドンの画廊でキャスの個展が開かれ大成功に終った。後援者はピーター。だが彼は、キャスという若い芸術家を世の中に送り出したことに無上の喜びを感じ、その生涯を閉じた。

一方ジョアンナはバリルの兄ゴードンと再会しやがて本当に愛しあうようになった。“あなたは何故黒人なの?”と、無邪気に問うジョアンナ。彼女の、恋の遍歴は終った。愛するのはゴードンだけ。
しかしゴードンは彼の仕事のナイトクラブの経営のことから、町の不良といさかいを起し、男を一人殺してしまった。逃亡したものの捕まってしまい十年の刑。
彼の子を身ごもっていたジョアンナは、たったひとつの本当の愛のために彼の子を生む決心をする。両親のもとへ帰るジョアンナ。駅まで見送るキャス。だが見送りに来たのは、彼ひとりではなかった。
彼女を知るすべての人が、駅のホームに、ずらりと並んでいた。そして、“ジョアンナ、ジョアンナ、あなたは本当に素晴らしい!”と歌うのだった。

〜映画.comより〜

【Trivia & Topics】
✥ドナルド・サザーランド

ロバート・アルトマンの『M★A★S★H』(1970)ダルトン・トランボの『ジョニーは戦場へ行った』(1971)、ジョゼッペ・トルナトーレの『鑑定士と顔のない依頼人』(2013)などで顔なじみになったサザーランドを初めて観たのが本作で、強く印象に残っているとても上手い役者だ。
息子は『24 -TWENTY FOUR-』のジャック・バウア役でブレイクしたキーファー・サザーランド
本作では気に入ったアーティストのスポンサーになるような資産家ピーターを演じる。今日は美しい夕陽を観ながら食事をしようとジョアンナたちを連れて自家用ジェットでモロッコまで遊びに行くほどの大金持ちだ。
ロッド・マッケンの美しい音楽がバックに流れモロッコの砂漠に落ちていく真っ赤な夕陽を浴びながらたんたんと人生の意味や自分の哲学をジョアンナに語った挙げ句「これはみんなには内緒だよ、ぼくの命は後一年くらいなんだ」と秘密を打ち明けるシーンが美しい。

ジュヌヴィエーブ・ウエイト
本作の次に同じくマイケル・サーン監督、ラクエル・ウエルチ主演の性転換した男の物語『マイラ-むかしマイラは男だった』に出演。たった2作で映画界を去っている。
引退後はフォークグループ「ママス&パパス」のメンバーのジョン・フィリップススコットマッケンジーのヒット曲「花のサンフランシスコ」の作曲者)と結婚その後離婚し、2019年5月18日71歳で死去している。

【鑑賞ガイド】
😄😄😄
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😁😁😁😁😁:見事な作品。
😄😄😄😄:お勧めです。
😀😀😀:楽しめます。
😔😔:苦手です。
🥵:途中下車。

【巷のうわさ】
Filmarks:☆☆☆★

YouTube:

オープニング・シーン。


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