令和の中学生を縛る?縛らない? 埼玉・栃木・群馬の高校にあって他県にないもの
早い学校では5月に体育祭がはじまりました。私の住んでいる埼玉県では、公立高校の共学化についてのアンケートが5月17日に締め切られました。
5月24日の埼玉新聞によると去年12月のアンケートでは、中学生の優先事項は「地理的便利さ」だそうです。教育委員会は他県も調査し、2024年8月以後になんらかの文書を出すと思われます。
「公立がすべて共学だったら、あれこれ違ってくるなあ」
2020年代に子供が二人高校受験をし、一人は高校生です。保護者にも、学校からアンケートのお願いが来ました。
わたしたち夫婦は二人とも他県出身者です。夫は千葉県の中学受験者、わたしは「公立に落ちたら、来年再受験すればOK」という長野県の公立出身でした。(今は現役主義だそうです。)
親子と塾が三位一体となって本命公立と私立の確約(一つでも複数でも)を取るなど埼玉独自の情報を、事前にご近所さんが教えてくれました。ありがとうございます。
子供は共学を選び、クラスで塾に通っていないのは一人か二人、という環境で通信教育で受験を乗り切ったので、別校についてはよく知りません。というわけで男子校・女子校について調べました。
まずは、男子校について。
タイトルの「体育祭に救急車が待機の学校」は、県随一の伝統校(公立)と言われる浦和高校です。現在男子校です。
浦和高校のある浦和区は百貨店の伊勢丹があり、埼玉のブランド地区です。地価が高く、常に教育熱心な層の人々が埼玉や東京のあちこちから移動してきて人口が減りにくい地域でもあります。少子化を理由に浦和高校を共学化できないでしょう。
この浦和高OBになりたい、しかし、なれないのは女子だけではありません。それは「体育ムリゲー」という男子です。
浦和高校には、7時間ほどかけ、50・2キロ(47.195キロのフルマラソンより長い距離です)を走る「古河マラソン🏃」が毎年あるのです。
古河マラソンだけではありません、一年生は2キロの遠泳もあります。宿泊つき。まあ、スキー合宿ならぬ水泳合宿でしょうか。
泳げない教員も練習に参加して泳げるようになることもあるそうです。2017年は車いすの生徒も遠泳に参加したという記事もありました。
戦前のようです。
在校生の保護者はもちろんのこと、医療職のOBもかけつけて盛り上げる運動会もあります。これらは伝統の名のもとに続くでしょう。
裏を返せば、共学化すれば行事も見直さざるを得ません。
女子の体力に合わせた行事になるか、男女別の距離になるのか分かりません。
全体を女子にあわせて見直すとしたら、マラソンや遠泳が苦手で他校に流れた学力の高い男子が入学して、レベルがさらにあがるかもしれません。
浦和高校の校章は<浦和>の文字と<三枚のイチョウ>(全日制)。学校のホームページは「頑張れば運動も勉強もできるようになる。それでこそ浦高生!」という感じが漂ってきました。
なんとなーく、「男子校が男性間の強固な絆(ホモソーシャル)を作り出す」と言われる理由もわかるような気がします。ひ弱な私には入り込む隙間がないように思えますが、他の人は入り込めるでしょうか。
男子校と男性間の強固な絆(ホモソーシャル)の問題点については、文春オンラインの【生きづらさを生む男同士の絆「ホモソーシャル」って何だ?】こちらが分かりやすいです。
男性だけではない、女性も含めた社会の問題です。
ホモソーシャルとはこちら。
男子校について書いたので今度は女子校について。
浦和高校の対の学校と呼ばれる通称・浦和一女です。
正式名称は県立浦和第一女子高等学校で、文化祭に行きました。コロナ前だったので、ネットで予約する必要もありませんでした。
一方、あちこちに顔を見せる<あひる>が気になりました。
2019年の文化祭のポスターは白いあひるが制服を着ています。制服には校章が見えません。ポスターはこちら。↓
文化祭で売られているクッキーが<あひる>でした。気が付けば<あひる>がそばにいます。
<あひる>といえば<みにくいアヒルの子>や<食べるための動物>のイメージしかないわたし。しかも童話ではあひるの子は<あひる>ではなく白鳥。
埼玉県トップの女子校のマスコットがなぜ<あひる>なのか。
「はて?」
ネットで調べたところ、【ご近所さんが「おしゃべりしながら坂を上る女学生をみて<あひる>みたいだ。そう思った】から。
学校横の坂も<あひる坂>。
浦和駅と浦和一女がコラボすれば<あひるの展覧会>という名前で開催。
校章は「浦和」の文字と埼玉を表す勾玉です。おぼろげな記憶によると、あひるのブローチをつけている生徒もいたような気がします。
浦和一女のホームページによると、対面式で<あひるバッジ>を先輩から一年生におくられるそうです。これかな?
こちらが共学化したら、あひるがどうなるのか。男子も<あひるバッジ>をつけるのか大変興味深いです。
他の学校の校章は、川越女子は「文と雁、川のせせらぎ」
川越高校(男子校)は「飛躍する三羽の雁」。
さくっと埼玉県の女子校・男子校について書きましたが、この共学・別学問題、ほかの県ではすでに終わっている問題です。公立(進学校を含め)は共学が主流です。別学進学校は大学進学率がほぼ男子のみ、という時代の産物ではないかと思っています。今とは背景が違います。
埼玉県と同じく別学校(進学校)が多い栃木県と群馬県の様子をネットで探してみました。私は共学賛成なので賛成派を探しました。
まず、栃木県です。県のホームページ「栃木県高校再編」によると平成17年から共学化の準備が進んでいるようです。
2021年、弁護士ドットコムのホームページに現役教員からの意見が寄せられたそうです。一部抜粋です。太字は私がしました。
2023年の段階で、計画案では職業系高校の統合が優先され、進学校の男女共学化は含まれなかったようです。先生の苦悩がうかがえます。
次は群馬県。
高校教育改革検討委員会審議結果報告により、
令和2年4月「男女別学校については、高校教育改革の中で、社会の変化や県民のニーズ等を踏まえ、地域や関係者の理解と協力を得ながら、共学 化を推進していくことが望ましい」と報告書が出ています。
それを受けて、7か月後に民間団体から民間(新聞購読者)への新聞紙上での意見表明の一部です。こちらも太字は私がしました。
こちらもマイルドですね。しかも別学校への配慮を感じます。個人的にはたどり着く先が共学化であれば、理由は学校のクラス編成でも生徒の減少でも教員の働き方改革や人員配置の一環でも男女平等でもかまいません。
必要なのは環境を整えることです。
学歴が全く役に立たない時代や、学歴や収入の差で人間の上下を判断しない時代になれば、<学歴>は趣味の一つになるので別学でもいいと思いますが、現実そうではありません。
学歴で差をつける人達はたやすく絶滅しませんが、幸いZ世代は団塊のジュニアより頭が柔らかいようです。Z世代が親になるとき、どうなっているのでしょうか。
それにしても公立高校の入試の書類欄に、男女の申告欄がない県が大半とは初めて知りました。現在の埼玉県はないそうです。
では埼玉はこちら。
県としては苦情処理委員が約20年前の2002年(平成14年)に早期共学の実現の勧告を出していますが、反対キャンペーンが行われ、教育委員会が拒否していました。
2018年(平成30年)に埼玉県教育委員会は高校再編の方針を出していますが、別校に関しての記載はありません。
2023年8月、埼玉県男女共同参画苦情処理機関(県の第三者機関)が埼玉県教育委員会教育長へ勧告を出しました。一部を載せます。こちらは公から公への公的な意見表明です。太字は私です。
2024年5月埼玉新聞で、「勧告書の一部の訳の訂正が行われましたが、おおよその内容はおなじ」と報道されました。
お役所系列が作っているのでかたいです。ここで「だけでは」という言葉が入っていますが、これがあるとないとは大違いです。
この文章には「あれこれ総合的に考えるとどうだろうね?」というニュアンスが隠されているのです。
2024年5月13日、埼玉新聞の社会面15面で「間接差別について」のが載りました。見出しは「総合職厚遇は男女差別」です。2007年にはじまった改正男女雇用均等法で導入された「間接差別の禁止」によるはじめての判決だそうです。
超氷河期に就職活動をした頃、同じ総合職でも世帯主の男性と出産退職する可能性のある女性のお給料が違うのは当然でしたし、男性と同じ勤務体制では体力的に勤務を命じにくい女子が医大に合格しにくいのも当然でしたが、令和の現在どちらも変わりました。
人がいなくなるという大義名分があれば、おだやかに制度が変わると実感します。間接差別は雇用だけでおきるとはかぎりません。
この8月の勧告を受けて共学ネット・さいたまという民間団体が、2024年2月3日にはワークショップを、4月10日には会見、4月27日には、2010年に県立高校の全校共学化を行った宮城県の浅野史郎元知事を呼んで講演会を行いました。これが興味深いてんまつになりました。
男女参画の団体が呼んだのに「(共学化したのは)男女参画からではない」と知事が発言したのです。
この話題はヤフーニュースや東京新聞、毎日新聞各紙、埼玉新聞にも載ったのですが、埼玉新聞(ネット)には「なぜ元知事が別学を進めたのか」が理由が書いてありませんでした。
なので、書いてあった東京新聞の記事を紹介します。一部抜粋です。太字は私です。
共学化について、議員さんはどうしているでしょうか? 別学・共学、どちらにも議員さんはいるようです。
共学ネット・さいたまと共産党が懇談した記事がありますが、「支持」とまで言えないようです。
一方別学派。埼玉県の県議会で質問された方がこちら。松坂喜浩議員(埼玉県民)令和6年2月、定例会です。
超おおざっぱにまとめると、「別学賛成。教員数や男子校の女性管理職がゼロとは別の問題じゃない? <共学化すれば、男女の役割についての定型化された概念が撤廃される>という考え方はどう思う? 地域性を考えて。」
教育長のお返事は
「男子校における女性管理職については増やすようにします。
<共学化しなければ、男女の役割についての定型化された概念が撤廃されない>とまでは言ってないかと。地域性については中学生を含め、広く意見を聞く」
当たり障りない返答です。
国会ではこちら。令和6年2月、二度に分けて、鈴木宗男参議院議員が男女別学について質問主意書を出しました。別学派。
質問主意書とはこちら。提出されると、内閣の決定を含めて1週間以内に答弁書を出さないといけないそうです。
鈴木議員は北海道が基盤の人ですが、別学派の埼玉県出身で浦和高校OB・作家佐藤優氏と知り合いだそうです。その関係でしょうか。
こうしてみると、埼玉新聞といい県議会といい、別学派の機嫌を損ねないようにしているかのようです。
共学派の民間団体がネットに詳しい情報を載せない理由が分かる気がします。邪魔されたり、中傷されて、家族に迷惑がかかりそうですから。
2月7日分を簡単に言うと、
「埼玉の勧告は知っているのか、共学化はなぜ? 人格形成上、別学で問題ある?」という感じで、
返事は「勧告について知らない。具体例なことは答弁困難。別学・共学については設置者等が適切に決める」でした。
質問主意書はこちら。
鈴木議員側は、この答弁書を受け取って一週間後、二度目の質問主意書を出しています。二度目の再質問書では県立ではなく、国立高校について質問しています。
回答2で「お尋ねについては、女子差別撤廃条約に違反するとは認識していない。」
と、一文で答えています。
二度目の質問主意書はこちら。
ところで、答弁書では「違反するとは認識していない」と言っています。
「違反につながる事実はない」もしくは「違反である事実は認められない」とは言っていません。
裁判や検事ドラマでよく使われるんですが、法律的に認識と事実は別物です。
例えば黒と濃紺の区別のつかない人が、濃紺を見て、「黒だと思った(認識)」としても、実際(事実)は濃紺です。ざっくり言うとこんな感じです。
そして政治家・官僚用語だと「認識」とは「ある客観的な事実に基づいた意見」だそうです。
では最後に別学維持派の意見です。
2023年8月の勧告の後、2023年12月20日にネット署名(www.change.org/p/埼玉県立高校女子校-男子校の-共学化に反対します)を集め始めました。
発起人は埼玉県立浦和高等学校 卒業生有志・ 卒業生保護者有志 です。
参画者はおもに各女子校・各男子校の卒業生有志・保護者有志・在校生有志です。
共学の高校でも名前を連ねている学校もあります。別学が共学になれば自分の高校と生徒を奪い合う関係になる進学校だと思われます。
個人ではヤフーニュースのコメントに代表される匿名コメントから拾いました。
「異性がいない世界で救われた」「異性がいないからのびのびできる」「性別による役割分担がない」です。
異性がいないからのびのびできる人も、同性だけではのびのびできない人もいます。
同性でも異性でもひどい人はいます。
「性別による役割分担がない」のは、同性しかいないから。
そして同性しかいない状態でも、異性の影を求めることもあります。男子校での女装したミスコンしかり、女子校のかっこいい先輩への憧れしかり。
有名人では、東スポWEBが2024年2月1日、作家佐藤優氏の「共学、別学を維持し多様な選択肢を」の記事を載せています。一部抜粋です。太字は私です。
「違和感」は個人的な感情なので、人によっては違和感を感じることもあるでしょう。
しかし、「A(国)がしていることをB(県)にみとめられないのは理屈はない」の理論を使うなら、そのまま「40以上の都道府県で認められること(公立共学)が埼玉県で認められないという理屈はない」となってしまいます。
また、2月14日の答弁書で「設置者等が適切に決める」とありますので、「国は見守ります。」というスタンスではないでしょうか。
この記事によれば「浦高同窓会も去年12月に現制度を維持すべきとの意見書を提出している。」とか。
もしこの同窓会が「早く共学にすべき」と意見を表明するものであったなら、22年前に共学化されていたと思います。
また、伝統を残したいのであれば、東京女子高等師範学校(現、お茶の水女子大学)同窓会が私立桜蔭学園を創立したのを見習って、浦和高校同窓会で私立男子校を創立するのはいかがでしょうか。
国立の付属校については<国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議>が設置され、やはり男女参画の観点からも見直しが提言されています。
この場合の参画の観点とは男女別学ではなく、「共働き家庭の子でも入学できるよう配慮が必要」というものです。
2024年、5月、子供の通う埼玉の公立高校で、新学期の恒例行事・PTA総会で、学校側のお話を聞く機会があったので、楽しみに参加しましたが、「別学・共学」の話題はまったくでませんでした。残念です。
別学存続派の意見について色々書きましたが、理屈と膏薬(こうやく)どこにでもくっつきますし、別学派と共学派は平行線なのでこれくらいにします。男子校の存続は「はて?」ですが、女子の社会進出のためにも女子校は存続する気がします。
東京都では、令和6年の受験生から、都立高校の男女別募集定員制は廃止になります。
というわけで、埼玉・群馬・栃木にあって他県にないものは「公立の別校(進学校)」です。三県の中学生を縛る鎖が切れますように。
1日1にっこり。 たまに違う「ほっこり」でないものも書きますが、よろしくお願いします。「いただいたサポートはノート内で使う」というポリシーの方を見習い中です。