空き家銃砲店 第二十話 <鬼瓦>
屋根の両端を飾り、古くは厄除けとも考えられた鬼瓦(おにがわら)。これも特別注文の品だ。鬼瓦に焼き付けられた九曜紋、星を丸で表し、中心の大きい丸は太陽、その周りを小さな八つの星が取り囲む紋、その紋の下に生まれ、育った。すべてを語り終えた今こそ帰ろう。私を待っている夫の元へ。この家は数奇な運命を持つ姪が引き受けてくれるだろう。
私の役目は記録すること、この家は存続するために彼女を呼んだのだ。
この家と姪に幸あれ。
おまけ
思い出したのだが、火薬を保管するための火薬庫があった。さすがに街中に作る訳にはいかないので、川の中州にあった。
取り壊す前に行ったことがある。ぽつんとした建物だった。中には入りたかったが、「子供は危ない」と父に言われ外から見ただけだが、今なら迷わず入っただろう。
あの火薬庫から、足が悪かった祖父と中学生の母で「私は両手、英男さん(母は祖父のことをこう呼ぶこともあった)は一個」必要な分だけ運んでいたらしい。
母が東京に出た後はご近所さんに手伝いをお願いしていたと聞く。穂高銃砲店はご近所さんの助けも借りていたわけだ。ありがたいことだ。
祖父の亡きあと、一年ほどで火薬庫の避雷針がダメになって、父が安全のために300万円かけて工事をしたが、その半年後に祖母は店を閉めた。
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