lopess live report vol.0.1 即狂 2023.07.14
tooniceの玄関口では、既にシン・パンツの姿が確認できた。
地下へと向かう形で広い階段の下に広がるエントランスに据え付けられた長椅子で、彼は見知らぬでかい髭面のおっさんとくっちゃべっていた。
私はどうにも尻の座りの悪さを感じつつ、一歩引いた位置でタバコを燻らせ、二人の話を聞くともなしに聞いていた。
どうにもリハーサルは3時間以上先であることと、髭のおっさんのバンド“七区”のメンバーとシン・パンツが友人であること、二人はこれまで顔を合わせた事があるものの、ニアミスでコンタクトを取れていなかった事等が、何となく窺えた。
私の心は少しだけ、着込んだ鋲ジャンの如く殺気立っていた。
入りたくても入れないもどかしさが、何故か敵愾心へと変質していったのだろう。
そしてそのささくれだった気持ちが、より一層重圧を浮き彫りにしていったのだ。
悪循環から一人ナーバスを噛み締めて居ると、髭のおっさんが話し掛けてきた。
髭「えっ。今日の演者なん?」
私「あ、はい。そうです」
髭「フライヤーに名前ある?」
私「いやー、無いかも知れません。はらぞーと申します」
髭「あー、and moreかなぁ。何処から来たん」
私「愛媛は新居浜からやってきました」
髭「へー、そうなんや。なんできたん」
私「いや、そこの長髪に誘われて」
髭「えっ。二人知り合いなん」
パンツ「そうなんですよ。なんかこいつ変な感じなんですけど、昔のバンドメンバーなんです」
髭「なんなんそれ。ちょっと気使ったやん」
私「すいません。なんかどうやって入ったらええか分からんくて」
髭「なら丁度ええな。今パンツとも話してたんやけど、アカデミックなセッション集団に反抗勢力として同盟組もうや」
まさかこの会話が私の人生を大きく変えることになるとは、この時、夢にも思わなかった。
髭は、自身をサンドマンと名乗り、脱落した前歯ではにかみながら、アンダーグラウンドシーンをプロレス業界に例えつつ、ミーティングと称して自身の働く店へと我々を誘った。
店の名前は失念した。
この時もう一人サンドマンの連れの女性も同行したのだが、物腰の柔らかい、カラフルな女の子だなぁ。と言う第一印象しか持てず、絡みはサンドマンとシン・パンツの三人に限定されていたので割愛したいのだが、そう言う訳にもいかないかな。
彼女は絵描きで歌い手でパーカッションで弾き語りもやるシマダさん。成レノ果テ名義で活動をしていると聞いて、私は成レさんと呼んでいる。
後々のステージングで、雑な私の演奏を丁寧に拾ってくれる、何気にかなりの信頼を置いている人物なのだが、今回これ以上の絡みはない。
私は普段、ライヴ前には決して飯を食わず、ましてや酒を飲んだりすることもなかったのだが、まあこの日は飲んで食った。
主にサンドマンとシン・パンツの会話に合いの手を入れる成レさんのやり取りから、時折飛んでくるサンドマンの同意や合図にしどろもどろで応える、みたいな流れだったのだが、重圧や緊張や話に付いていくための必死さをアルコールで流し込むしかなかった私の心境など、他の誰にも図ることはできなかったと思う。知らんけど。
この日食べた鶏南蛮とハイボールの味は、忘れない。ちゃんとタバコも吸えるし、少々妙な佇まいで訪れても浮かないし、飯はうまいし店員も良い感じでおまけにリーズナブル。言うことないね。
店を後にしてtooniceへ戻ると、既に演者は揃っていた。
Minamiguchi Eri
HORI
サンドマン
yaju(YHPRUME EIIDE)
河本(ミズウミ)
BEN
Yusuke Otsuki
真(シン・パンツ)
北村(OLDEMADA)
詰沢脇市(c o n c e p t)
おおくらだいすけ(んねじれる)
ハラゾー(私)
このメンバーからくじを引いて、総当たりで即興をやる感じのシステムだった。
リハーサルは、まとまってやってきた私、シン・パンツ、サンドマン、河本さんの四人でやった。
昨日の晩がっつり練習してきた私とシン・パンツは最早チートでしかなく、私の糞演奏を懸命にフォローしてくれるシン・パンツに感謝した。出だしは好調だが、問題は本番だ。
先ずは一発目。
詰沢脇市。
私が昔ちょろっとドラムを叩かせてもらっていたCOMCEPTのギターボーカルだ。COMCEPTの練習終わりにマクドでくっちゃべりながら遊ぶボードゲームがとても楽しくて、私はこの人がとても大好きなのだ。
この時は俳句の読み手らしい。
二発目。サンドマン。
謎のギターを掻き鳴らす、謎のグラサン髭オヤジ。リハの時、ドラムの前に陣取り、私にアイコンタクトを送ってくれた心優しきヒール。
三発目。ハラゾー。
そう。私だ。サンドマンもCOMCEPTでやってるって言うし。これもうCOMCEPTじゃねぇか。
四発目。シン・パンツ。
言わずもがな。感覚的には昔シン・パンツとやってたバンド、unclesamとCOMCEPTの混合以外の何者でもない。
もしも神が存在すると言うなら、私は彼の胸ぐらを引っ掴み、問い質したい。
こんなうんこに糞みてぇな啓示するのがあんたのやり方だって言うのなら、殉教者にとってはこれ以上の神罰はないぞ、と。
これが仮に仕組まれた何かだとしても、私の生きる道は最早ここで確定したと言っても過言ではない。
ならば受け入れるしかないだろう。
演奏は、あまり口で説明すべきじゃないと思うんだ。それでも敢えて、脇市さんのブログから転載させていただく。
なんかある時期のCONCEPTみたいなメンバーw
俺、いろいろ本を持ってきたけど使わず。自力で俳句。とブブゼラとフレクサトーンとアゴゴ。(いつも○ブブゼラと✕ブブセラとで迷う)
まあこんなんwベース君が形作ってくれる感じやな。
俺がタイムキーパーをやったが、もっと指示をだすべきだったかと。ちょっとずんやりって感じはあったかなあ。。ドラムがやったほうが良いと思う。
いやまあドラムがなかなか糞だったんだけど、即興と言うには余りにまとまり過ぎていた。特にシン・パンツは、脇市さんの述べるように、完全に曲の形を作っていたと言える。
他の方々もまとまっていて、即興と言うには凄かった。流石は手練れの集まりだ。
そして最後にもう一回くじ引き。
川本+べんさん+オペラ+野獣+井川+ハラゾー+おおくら+脇市
なんだろう。サンバ?ファンク?民族音楽?兎に角お祭りですげー楽しい音楽で、即狂は幕を閉じた。
てか一ヶ月置いてレポートしてる訳なんだが、詳しい資料として脇市さんがnoteに書いていたことを大いに参考にさせていただいた。
後々礼を述べねば。
そして脇市さんのブログを読んで知ったのだが、成レさんが最後の演奏録画してるっぽいんだよな。
また見せてもらうことにしよう。
演奏が終わり、リハで一緒になった河本さんが人的にも音的にも凄く気になり、少し話した
なかなかすごい人らしいのだが、その時は良くわからず、とても格好良いギタリストとしか思わなかったが、これを切っ掛けに徳島へ遊びに行くこととなる。
この日から、私はサンドマンから廃漢光の名前をいただき、lopess新居浜の肩書を押し付けられることで、第二の人生を切るに至った訳だ。
次回は愛媛は松山の音溶のレポートとする。
おせーよwww
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