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関東在住の人間が「東海北陸」のNコンの観覧に行ってきた話

折角行ってきたので備忘録として。

はじめに

私は今まであまり東海・北陸地域にはご縁がありませんでした。金沢や名古屋、恵那(岐阜)に行ったことがある程度です。
(北海道で生まれ、京都の大学に進学して、東京で就職するというよくわからない動き方をしています)

それなのに何故「東海北陸」コンクールに行ったのか。
結論から言えば昨年の全国コンクールに出場された、福井市の明道中学校さんの演奏を直に聴きたかったからです。

昨年のコンクールでは一人一人が伸びやかに歌ってて、本当に楽しんで歌っているのが伝わってくるような演奏をされていました。眩しすぎないちょうどいいくらいの溌溂さが、当時様々な事情で精神的に少ししんどくなっていた私の心の支えになっていました。
全国コンクールのCDが買えると知った時は物凄く嬉しかったのを覚えています。

以下のリンクはNコンに興味を持ったきっかけについて認めた記事と、昨年の全国コンクールの動画ページです。

もちろん今年の明道中学校さんに全国に行ける実力がないとは思っていません。それでも「自分が好きな演奏」と「Nコンで評価される演奏」はおそらくイコールにはならないわけで。必ず全国に行けるという保証はありません。
もし全国に行けなければCDに収録されず、確実にフルで聴く手段が「3年間のネット公開」だけになってしまいます。それも今年から「全国コンクールのみ」になる可能性も捨てきれません。
(現に2022年度分から都道府県コンクールは公開対象外になっています)

それならばいっそ自らの耳目で直接鑑賞したい。

そう考え現地に赴くことを決めました。コンクール3日前に。
このコンクールのためだけに日帰りで愛知まで行ってきました。

宿泊して他の観光地に足を向けることも考えましたが、コンクールの情報量が多すぎて楽しめない上に、肝心の演奏に対する感想が脳みそから零れ落ちてしまいそうだったので本命一本に絞りました。
翌日の小学校・高校部門に行かなかったのも同様の理由です。

会場に着くまで

行くと決めたはいいものの、成人してからこういった類いの催しに行くのは初めてなので何を準備していけばいいのかさっぱりでした。

色々と考えた末にいつもの鞄に追加したのは以下の通りです。

・課題曲の楽譜
どこの学校も演奏するはずなので当日の予習や暇つぶしにはぴったりだろうと。相変わらずほとんど読めませんが。
そろそろ音階くらいはスムーズに読めるようになりたいところです。

・龍角散ダイレクト
喉の乾燥予防に。(本来の用途ではないかもしれませんが)
会場ホールが飲食禁止な可能性が高かったので、水分が取れなくても咳き込んだりしないよう休憩時間までは保たせられるように使ってました。
今回は熱中症対策のために各学校の準備時間や課題曲と自由曲の間に水分補給してもいいとのアナウンスがありました。

・厚手の風呂敷
いつもは梱包材代わりにしたりエコバッグにしたりしていますが、今回は体温調整用(ひざ掛け代わり)に持って行きました。
恐ろしいくらいに体温調整がへたくそな人間なので、上着も薄手の長袖(袖を捲れるもの)にしました。
幸い室温がちょうどよかったので会場内では使用せずに済みました。

当日は新幹線で名古屋駅へ行き、名鉄とバスで稲沢市の会場に。
かなり時間に余裕があったので会場内のレストランで昼食を済ませたり隣接する図書館で時間を潰したりしてました。

正直「来ちゃったよ……」という気持ちの方が大きかったです

あと20分くらいで観覧席開放かな、と何気なく図書館の窓から会場を見てみると既に結構な行列が。
さすがブロックコンクール、親御さんの熱意がすごいなと思いながらしれっと並ばせてもらいました。30℃超えの日でしたがアーケードのおかげでそこまで苦になりませんでした。

会場の様子

入場開始直後は皆さんやはり前方の真ん中に向かっていました。
私も前の席にしようか一瞬考えましたが結局中段の端っこに座りました。
あくまで主役は生徒さんなので、親御さんや関係者の方を優先させるのが筋かなと。

音響のことはよく分かりませんが、壁との隙間に鞄を置けたり前の席がないため足を伸ばせたりで入場時点で既に緊張状態にあった私にとってはありがたい席でした。
開始時間間際に「椅子に荷物を置かないでください」という旨のアナウンスがあった程度には人が入っていたようです。

コンクールの感想らしきもの

各校ごとに表現の手法が異なり、課題曲だけを比較しても学校によって大きく印象が異なることを改めて認識させられました。

きびきびとした歌い方もあれば、堅実で安定した歌い方、語りかけるような歌い方もありました。そこに様々な感情を載せられては脳みその情報処理が追いつきません。

自由曲でもこの曲はどんな世界観なのだろう、この歌い方で何を表現しようとしたのだろう。そんな疑問や解釈で頭がいっぱいでした。
おかげで改めて味わいたくなった曲がまた増えました。

中には技巧的であってもあまり好みではない演奏もありました。それも今回の観覧で初めて感じた印象だったので貴重な経験になったと思います。

本当は感じた印象などをすぐに書き留めたかったのですが、15分くらいの休憩時間では言語化が間に合いませんでした。

一番印象に残ったのは最後の全体合唱でした。
100人は超えるであろう演者が一斉に歌うので声の圧がすごいのは当たり前なのですが、どこかそこに「順位がつけられる」という重荷から解放された安堵に近い感情が含まれているようにも感じました。
(コンクールを否定している訳ではないです)

もちろんこれは関係者ですらない「観客」という立場から生じる傲慢な印象に他ならないのは承知の上です。金賞以外の学校、特に全国を目指していた生徒さんたちにとっては悲嘆の感情でいっぱいなはずなので。
それ故か、同じ曲なのに哀歌と凱歌が入り混じったような不思議な感触の合唱であったのも確かです。

せめて出場された皆さんが楽しく、悔いなく歌いきれたことを願うばかりです。

おわりに

結局個別の感想や印象は帰りの新幹線で書いてました。

かなり好き勝手に書いてるのでモザイクかけてます

音楽に限らず芸術全般に対しては「どんな印象を受けたのか」を文字に起こすようにしているのですがやはり難しいですね。
ポジティブな感想もネガティブな感想も分け隔てなく巧く表現できるようになりたいところです。

ほぼ勢いでコンクールの観覧に行きましたが、想像以上にたくさんの収穫がありました。
至極当たり前のことなのですが、演奏中は演奏にしか本当に意識が向かないんですね。上手く説明できないのですが「今この体は目の前の演奏を聴くためにある」ような感触というか。
演奏やコンクールの空気への向き合い方もテレビやネットでの視聴とは大きく異なり、どの学校にも誠実な態度で向き合いたいという思いがかなり強かったです。

今回の本命である明道中学校さんには、決して当人たちには届かない「お礼」に近い感情を持って聴いていました。
しんどい時の支えになったこと、合唱や楽譜に興味を持たせてくれたこと、コンクールを観覧するきっかけになったこと。
何が人生の方向性を変えてしまうかわからないものですね。

昨年同様、課題曲は体の動きも交えて楽しく、自由曲は詩に込められた世界観を自分達なりの解釈で演じるように演奏されていました。
会場の空気がどこか柔らかくなったのを今でも覚えています。

審査結果発表の時も祈らずにはいられませんでした。関係者ならともかく、一般人が入れ込み過ぎるのは少し危なっかしいのかもしれません。
邪な感情は微塵も持ち合わせていませんが、妙な勘繰りをされても困るので。
残念ながら全国出場は叶いませんでしたが、直に聴くことができて本当によかったです。


実のところ今回の遠征は一年以上ぶりの遠出になります。
勤務先がバタバタしてており、休日は寝ているか、体力が残ってれば近場の図書館か美術館に行くかくらいしかできていませんでした。

ただ今回のような非日常的な時間を過ごして、旅行の楽しさをまた少しずつ取り戻せているような気がします。そろそろ止めていた歩みを再開させるいい頃合いなのかもしれません。
その歩みの最中に見えた気色をまた綴っていけたらなと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。