見出し画像

2024/04/17


今日は電車に乗って美容室まで出かけた。髪を切るのは半年ぶりだろうか。成人式のために伸ばし続けた長い髪は先日後撮りをしたことで役目を終えた。背中の真ん中まで伸びていた髪を鎖骨あたりまで切り、ブリーチせずにピンクブラウンにしてもらった。春だしね。極度の面倒臭がりな私には手入れが必要なブリーチをせずとも染めれるのはありがたい。

せっかく髪を切ったのだからこのまま帰るのは勿体ないなと思った。誰か友達に見せたいけど、今暇?なんて聞けるフッ軽な友達は私にはいない。誰かと遊びの予定入れとけば良かったな、なんて思いながら、特にやることも見つからないので本屋をぶらぶら渡り歩いた。
買おうと思っていた本はどこにも無かったけれど、好きな作家の詩集があったのでつい買ってしまった。東直子さんの「朝、空が見えます」という本だ。365日の空を1日1文で書き留めてある。東直子さんは表紙も文章もとても魅力的で、本屋で見かけるたびに手に取ってしまう。


そういえば、惰眠ちゃんはこの近くの飲食店で働いていたな。今日は水曜日、確か惰眠ちゃんのシフトが入る曜日では無かった気がする。だけど、もしかしたらいるかもしれないし、髪を切ってすぐ1番の友達に見せに行くっていう行動自体がすごく素敵じゃないか?と思ってそのお店へと向かった。バイト先の人にロマンチストですねと言われたのも頷けるな。

店内を覗くと、ベテラン臭漂うお姉さんと喋るのが好きそうな女性がカウンターにいる。予想した通り、惰眠ちゃんはいなかった。
時間は3時。ちょうどおやつどきだったのでプリンとコーヒーを注文した。プリンはとても甘く、生クリームとアイスが乗っていて砂糖の暴力だ(美味しい!!)。
お客さんもあまりいないしお冷がなくなるまで読んでから帰ろう、と本を開く。東さんの比喩に唸ったり共感したりしながら頁を捲っていると、「こちらサービスです」と昆布茶が目の前に置かれた。コーヒーの苦さでは打ち勝てないほどのプリンの甘さに支配されていた私の口には、それはまるでオアシスのように感じられた。

昆布茶がなくなるまでゆっくり本を読む。
レジへ行くと、店員さんから「プリン美味しかった?」と聞かれた。「とっても美味しかったです~!」と元気よく答える。ここで会話が終わるかと思われたが、店員さんは「何読んでたの?なんか一生懸命読んでたよね」と話を続けた。そういえば、惰眠ちゃんは店員じゃなく常連客だった時、読んでいた本の作者名をあだなとして呼ばれていると言っていたな。好きな作家の詩集です、と答えると「詩集!明日来る子もね、そういうの好きなのよ」と明るい声で言う店員さん。「なんて名前の人ですか?」「え~とね、惰眠ちゃんっていう子」やっぱり、と心の中で思いながら「その子友達なんです。今日いるかな~って思って来て」と続けた。「あら、そうだったの!?惜しかったね」と店員さんは出勤曜日を教えてくださった。
また来てくださいね~という声に見送られながらお店を後にした。なんか、幸福感。

帰りのバスに乗りながら「夕立ダダダダダッ」という曲を聴いている。爽やかな夏のはじまりを匂わせる曲の雰囲気と、少しだけ開いた窓の隙間から吹き込む風に髪を揺られながら春の終わりに包まれている今が重なって、それが髪を切って晴れ晴れした心に馴染んで自然に口角が上がってしまっている。
なんだか爽やかな気分になってきたから、明日は朝から水源まで散歩しようっと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?