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【ムーンライト・ガーデン】を読む
※この記事は性質上2024年9月18日に実装された【ムーンライト・ガーデン】のネタバレを含みます。
サクッと書くシリーズ第二弾。
長かった……本当に長かった。
実に18ヶ月ぶりのあさひのpカード実装なのだから、そう言わせてもらっても支障はないだろう。といっても間に『Wintermute,dawn』を挟んでいたので数字ほど長くは感じな……いやまあ長かったが。
ともかく、超久々のあさひメインのコミュである。基本的には上記イベントの後をベースとしてるっぽくて、急激に状況が変わりつつある他のメンバー(特に冬優子)と比較してもこれからの期待と想像を膨らませてくれるものだったように思う。次が出れば、だが……。
当時のイベントへの感想を備忘録的に置いておく。今回もこれぐらい過去コミュとの接続が感じられた箇所が散見されるが、全部裏付け取ってるとマジで時間かかるのでサクッと行きましょう。サクッと。
モチーフとしてのかぐや姫
今回、一番わかりやすく主題として置かれているのが「かぐや姫」(および「月」)である。コラボつながりでかぐや様は告らせたいと変則的に接続されてしまった。
パーティ会場でちやほやされ、可愛らしいわがままで男どもを振り回すあさひ。可愛らしいドレスを着ているのに平気で靴を脱いではしゃぐ(2コミュ目のタイトルからの想像)あさひ。木の枝や月をかぐや姫の物語へなぞらえるあさひ。そして、言ってもわかってくれない、という諦念。どうやら前回イベントで俗世と和解できたと思っていたが、その隔絶は未だ健在らしい。と思いきや、TRUEではしっかり「月まで迎えに行くべきだ」と言っている。あの時見せた人恋しさもまた真実らしい。実にわがままで気難しく、繊細で健気で可愛らしい。しかも、当の本人は迎えに来てもらう側ではなく月を追いかける側としてそう主張している。自分の感性が少しだけ特別なことには、まだまだ無自覚らしい。それでも、それが素晴らしいことだと言い続けるシャニPのことは少しだけ信じられるようだった。
ちなみに、ヘッダー画像にもある【ちぐはぐ姫】にもあさひと可愛らしいドレス、そして靴の話がある。そして両方とも、「(その衣装に合った)靴の有無はあさひの魅力を定義しない」というふうに描写されている。「靴に合わせる」ことをひとつの一貫したメタファーとして用いているシャニマスとしては大変に示唆に富んだ表現だと思う。
あさひと忘却
あさひは割とあっさり物事を忘却するという表現は、【空と青とアイツ】の頃から存在した。単純に好奇心のムラがあるだけとも言える表現でもあったが、どうも現世に執着が薄いという意味合いのほうが強いんじゃないかと最近は思い始めた。だからこそ今回のように古文の暗記をすることが、俗世との繋がりを保つという意味では非常に意味のあることかもしれない。他にも、今回のカプセルトイ(3コミュ目の選択肢次第で登場)然り、ふとした瞬間にあさひを現実に引き戻してくれるものの存在は、「おもい」として順調に機能し始めているとも言える。一方で、そういった俗世とのふれあいはあさひの持つ独特の神秘性、特別感を剥ぎ取ることにもなりうる。だからこそ、あさひは実態のない神秘性などではなく、自らの意思に基づいた無限大のエネルギーを操れるようにならねばならない。適切な重さと幹を身に着けて。
という前提を置いてみると、TRUEでのシャニPの台詞(「何度でもそばで伝えるから」「何度だって忘れてくれ」)は相当「重い」。しかし、それこそが大人の責任というものでもある。
好奇心とモチベーション
あさひのエネルギーの元になっているのは、その巨大な好奇心である。アウトプットが唐突なので感覚的なようにも思えるが、あさひにはその好奇心を知覚に変えて自分の知識と経験とする確かな論理的思考力が備わっている。特に今回は、自分の体の動きに関することであれば理路整然と説明できることも描写された。
一方で、自分の興味の範囲にないこと、今回であれば「歌のテストでは一番上手だという評価を受けたが、(あさひが職業アイドルである兼ね合いもあり)合唱コンクールのソロには選ばれなかった」という事象に対して、「そんなに歌いたかったわけじゃない」という理由で考えることを打ち切ってしまっている(その割に、自分が「剪定」に巻き込まれたことに関してのモヤモヤをずっと抱えている)。これは非常に惜しい傾向である。その先に見える答えが望むものではなさそうだからといって、疑問を残したまま解決を放棄してしまうのは思わぬ事実を見逃すことにもなりかねない。
もしあさひが星をめざして走り出すのであれば、そこに答えがあるから、ではなく気になったものがあるから、であってほしいというのは、私の勝手なエゴである。
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人間関係の拗れ
上述の歌のテストの際、あさひが音楽教師から称賛を受けているとき、クラスメイトの間には微妙な空気が流れている。こちらも前イベントで多少は解決を見せたと思ったが、決して消えてはいない問題らしい。直近のトワコレである【はじめましてラストダンス】で園田智代子がクラスメイトと良好な関係を築いていることが描かれたのとは対照的である。
そして、そのモヤモヤを割り箸のピストルに託していたあさひに対してシャニPが発した「撃たないでくれよ」の台詞。本人は理由がないから撃たないと言っているが、それは理由があれば撃つということでもある。彼女が俗世に見切りをつけて出ていくようなことも可能性としては引き続き残っている。どこまでも合理的なその考え方は、彼女の持つ生来の人懐っこさと両立するにはまだまだ扱いが難しいらしい。
無生物に意思を見出すこと
あさひは、時折無生物に対してその意思を疑問に持つことがある。今回であれば剪定された公園の樹木に対して、「ここにいて本当にそれでいいのか」という疑問を発している。
これは、【不機嫌なテーマパーク】でも似たような会話が見受けられる(シャニPが余計なことを吹き込んだせいという可能性もあるが)。
また、同じような表現を持ち出すアイドルとしてはやはり幽谷霧子が連想されるが、あさひは無生物を生命として見ているというより「意思を明示しないこと」に対して同情、あるいは共感(言ってもわかってくれない、という諦念の共有)しているようにも見える。雑にまとめていいのなら、「本当のことが知りたい」という態度が一貫しているように感じる。
あさひの中で優先されるべきものはやはり自分の意思であり、それと同じぐらい他者のそれも尊重したいという考えがあるようにも見える。そして、それが相反、あるいは矛盾したときに何が起きるのか。もっと言えば、まさに現在進行系でそういう悩みを抱えているユニットメンバーたちに対して、彼女はどういった判決を下すのだろうか。
剪定
結局、このカードを通して語られたのは「あさひの才能を最も守れる方法は何か」ということであった。気まぐれで合理的な天使を現世に引き止めた以上は必然の責任である。そして、今回の解答はあくまで「とにかく頑張る」であった。具体性には欠けるが、仕方ない。事前に対策するには可能性が膨大すぎるのだから。
そして、その愚直な熱意、「熱さ」は月に届く唯一の正解である可能性すらある。これを見せたうえで、パラコレがどうなるか。Wintermute,dawnを経てなお、問題が整理されただけで最初から言っていることは何も変わっていないこの課題に対して、どういう解答がお出しされるのかを楽しみにさせていただくこととしよう。石は無い。