入場前待機列におけるオクラホマミキサー
序論
オクラホマミキサーってご存知ですか?
小中学校のフォークダンスでたぶん誰でもが聞いたことがあるでしょうし、各種作品やCMでも流れたあの曲です(筆者的には、「あらこんなところに牛肉が♪」から始まるハッシュドビーフのCMが頭に残る)。
Wikipedia先生によると、正確にはオクラホマミキサーとは曲名ではなくダンスの名前であり、そのダンスで使われる"Turkey in the Straw(藁の中の七面鳥)"が正しい曲名とのことです。とはいっても、知名度は圧倒的に「オクラホマミキサー」の勝ち。以後、本稿でもこのダンス名と曲名を同一視します。
一斉入場方式
同人誌即売会の入場方法として、一般的なものとしては一斉入場方式があります。開始時間になったら一般参加者用ゲートオープン、スタッフによる走らないでの合唱のなか速歩きで一般参加者がなだれ込む、よくあるアレです。前に並んでいた人ほど先に入館できるため、混むサークルが目当てであってもいち早く並ぶ、なんなら並ばずに購入することさえできる可能性もあります。メリットとしては、わかりやすい、大人数への対応が容易、早く来ることに意味がある、などがあります。
並んでいればそのうち中に入れるシンプルさは、誰もが納得できる入場方式としてメジャーなことからも明らかです。人を並べる場所さえあれば、ちょっとしたオンリーから、世界最大の同人誌即売会コミックマーケットでも採用できる懐の深さを持ちます。列は基本的に前から館内に入れるため、早く来ればその分先に入れます。一部イベントでは、最前部のブロックごと反転させたり、コミック某でよく見るホールの入り口を同時に複数箇所開くなどにより前だから有利というセオリーを崩したりもしますが、それはまた別の機会に。
オクラホマミキサー入場方式
一斉入場方式に数多くあるメリットに対し、オクラホマミキサー方式を採用するためにはいくつかの必要性があります。まずはオクラホマミキサー入場方式とはどのようなものであるかを説明します。
開場時間前後になったら、一般参加者を入場させます。そこまでは一斉入場方式と変わりはありません。しかし、このタイミングでは列の人たちは開放されたわけではありません。誘導するスタッフを先頭に、列は会場内を練り歩きます。基本的には一番の大通りを周回するルートとなります。この入場方式を取ることのできる一般参加者の数は、会場内を周回する流れが輪となって不自由なく歩き続けられるまでとなります。これを超える人たちは、後から一斉入場となります。
ところで、あなたは椅子取りゲームはご存知ですよね。
参加者よりも少ない椅子が背を向かい合わせで用意してあり、音楽が奏でられている間は回り続けなければならない。そして音楽が止まったらその瞬間から椅子の取り合い開始。座れなかった人が負けとして除外される。そんなゲームです。小学校のとき好きでした。
オクラホマミキサー入場方式は、椅子取りゲームに似ています。
入場した一般参加者は、会場内に鳴り響くオクラホマミキサーの曲を耳にします。音楽が奏でられている間は、入場はしても購入することはおろかサークルに並ぶことさえ許されていません。ただひたすらに環状に列を進めるだけです。これをやる際、スタッフとしては入場前の一般参加者にこう伝えると思います。「今から皆さんは館内に進みますが、まだサークルに並ばないでください。列のまま入場して、音楽が止まったらその時点で好きなサークルに向かってOKです。音楽が鳴っている間は会場内を列になってぐるぐる回ってもらいます。」まるっきり椅子取りゲームですね。
メリットデメリット
オクラホマミキサー入場方式のメリットは、早めに館外の待機列を吸収することができる、早期来場のメリットをなくせる(そのメリットはまた別項にて)、そして単純に楽しい。
館外の待機列を早めに吸収することにより、外向きのトラブルを予防することができます。会場周辺で資格試験をやっていたり、会場がそもそも住宅街の場合、会場外に大人数を待機させてしまうと、それだけでクレームの原因になる可能性があります。また、雨を始めとした天候の影響を受けにくい館内に収容することで、一般参加者の快適な参加体験に寄与することもできるかもしれません。
早期入場者と、オクラホマミキサー入場方式で吸収できるギリギリの順番に来場した人とでは、実質隣同士になります。早く来た人とギリギリに来た人がほぼ変わらない条件になることで、早く来る必要性がなくなります。日曜イベントであれば、プリキュアを見てから家を出ても十分間に合うかもしれません。身体的・精神的に余裕ができますし、スタッフも早朝来場の対応コストを削減することができます。
楽しい。たのしい!音楽に沿って人が流れて、音楽が止まったら途端に個別の動きをするの、楽しくないですか??
オクラホマミキサー入場方式のデメリットとしては、大人数の対応がしにくい、コストがかかる、トラブルが多い、などが挙げられます。
大人数の対応ができないことは、この方式の構造的なデメリットです。館内で周回できるだけの人数しか受け入れられません。それを超えたら、一斉入場方式になってしまいます。
コストとしては、音源を用意し、音響係を用意する必要があります。会場に音響設備がない場合は、自前の音響を用意する必要もありますね。また、この入場方式は一人でも抜け駆けする不埒者が出た段階で崩壊してしまいます。しっかり説明し、館内で常に監視・誘導するスタッフがたぶん複数人必要です。あまり見ない入場方式であるため、スタッフ内での教育コストも必要です。
トラブルが多いことは、この入場方式の最大のデメリットです。先にも挙げたように、抜け駆けは予想されますし、館内を回遊するということは特に島角の机に一般参加者の体やかばんなどが引っかかり、最悪机がひっくり返るという大きなトラブルに繋がるかもしれません。また、素早く歩きにくい肢体不自由者は同人誌即売会のみならず社会にたくさん存在しているので、危険を避け、なおかつ不当に不利にならないよう配慮する必要もあるかもしれません。
終論
オクラホマミキサー入場方式とは椅子取りゲームを入場方式に援用したものであるということを説明し、そのメリットとデメリットを見てもらいました。
結論としては、ほとんどのイベントにおいて使うべきではない入場方式です。デメリット多すぎ。でも、楽しい。またやりたい。だからこの原稿を書いて知ってもらいたいと思いました。
あなたかわたしが参加する同人誌即売会で、いつか(また)オクラホマミキサー入場方式が採用されるときを楽しみにしています。