れんげ畑の紳士
小さい頃から
不思議な出来事がたくさん起きる。
大人に話しても
信じてもらえなかった。
夢なのだろうか。
何かの見間違いなのだろうか。
そのうち
実際どうであったか、というよりも
その時 どう感じたかを大切にしよう、と思うようになった。
心の奥の方に そっと持っておく。
そんな不思議な経験の中の話のひとつ。
わたしが 子供の頃、
まだ両親のもとで暮らしていた就学前、
柴犬を飼っていた。
むかしは
犬を放し飼いにしている家が多かった。
うちもそうだった。
柴犬は わたしをよく山へ連れていった。
気分が乗らなくて
「行かない」と言うと
無理やり 服を咥えて引っ張る。
(この柴犬の話は
また ゆっくりと書いてみたいです)
🐕
家の裏から入る山は、わりと深い。
今思うと、
小さい子供がひとりで
山の中で遊ぶのは危険で
考えただけでも はらはらしますが。
でも 柴犬がよく連れていってくれたおかげで
その山は
わたしにとって 駆け回る広すぎる庭みたいになっていた。
そして、
何が危険か
何が美しいか
たくさん学校では教えてもらえないこと教わった気がします。
柴犬がどこか出かけていない時でも
よく ひとりで 出かけていた。
ある日、
いつものように山へ入り
大きな高い樹々が生い茂る間の細道を
抜けた広い場所に
れんげ畑を見つけた。
「わあ!」
と喜んで
れんげの花を摘んでいると、
ふと 何かを感じた。
見てみると
ハットを被った、
燕尾服の紳士。
怖いともなく
なんとなく不思議で
暫く ぼんやりと見た。
小さい頃は 人見知りだったので
咄嗟に
その人(?)に くるっと
背中を見せて 走って帰りました。
でも あの時の、
れんげ畑で 人の形をしていたけど
人ではないような不思議なあの紳士を
ここまで忘れられないことになるなんて
思わなかった。
あの記憶は
わたしにとっては
大切で必要な記憶。
どれだけ 励まされたか。
あの紳士に。
今日は 優しい記憶のひとつを
書いてみました。
ヘッダーは
「みんなのフォトギャラリー」から
お借りしました。
素敵なれんげ畑です。
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