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黒猫つむぎ


こんばんは。
わたし つむぎ。
黒猫のこども。

たぶん 生まれてまだ
 80日くらい。

かわいいでしょ。


わたしの右側(写真で言うと向かって左側)にいる
白黒ちゃんは
わたしの姉妹。

おねえちゃん。
わたしより 少しだけ
おおきい。

わたしも いっぱい食べて
いっぱい遊んで
そのうち
おねえちゃん抜くんだもん。

いつもなかよく遊んでる。

ここね、

にんげんが
お食事しに来るお店の裏なんだよ。
やさしい猫好きのひとが
 毎日 おいしいご飯
置いてくれてるの。

わたしの左側にいる
少しおおきい黒猫は
わたしのおかあさん。
(写真では 向かって右ね)

おかあさんも
まだ若い。
可愛いお母さんでしょ。

わたしたちに
ご飯を置いてくれるひとは
ここで働いていて
仕事終わりには
遊んでくれたりする。

おもちゃは たのしいんだけど
にんげんは
どうしてもこわくて。

なかなか
『ごはんありがとう』
って言えない。

あれ、なに?
まあるいの。
ころころ動くから
 むずむずしちゃう。
わたしの目も まんまる。

あ。
見て見て。
後ろにいるしぶい白黒猫、
わたしのおとうさん。

わたしたち 
よく似てるでしょ。

しあわせなんだよ。

おとうさんも
おかあさんも
おねえちゃんもいるんたから。




お外の風も感じられて
虫とかも たくさんいるから
おねえちゃんと
いっしょに いつもじゃれて遊んでる。

いつもご飯をくれるひとが
すぐ近くに大通りがあって
よく 猫が轢かれて
死んでるからって
とても心配してくれた。

だいじょうぶだよ。
おかあさんにも
いつも注意されてるの。
あっちには行かない。


おとうさん、いつもこんな顔してる。
かっこいいでしょ。

おとうさんとおかあさんは
わたしたちに
  先に ご飯を食べなさいっていう。
やさしい。

このまま なかよく
ずっと暮らして
わたしもおおきくなって
おねえちゃんよりも
おかあさんよりも
おとうさんよりも
うんっと おおきくなるんだー
たくさん食べるんだ。







だけど、


ある時から
すこし 身体がしんどくなった。
 息をするのが くるしい。

そのうち
 ごはんも食べられなくなってきた。

 ご飯をくれるひとがね、
心配してくれて
猫友さんに連絡してくれたの。


みぞおちさんっていうひと。




そのときの思い出写真。
わたしは にんげんこわいんだ。
遊べない。

おねえちゃんたら
にんげんは危険だよ、って
おかあさんから
教わってるのに
みぞおちさんが
持ってきた猫じゃらしに
夢中になってた。

わたしもいるよ。
気になるけど
こわくて
かくれたの。


にんげんが なにか話してた。
わたし 痩せすぎてて
心配されてた。

がんばって
いっしょうけんめい
おいしいご飯を食べたんだけどなぁ。

みぞおちさんが
会いに来たときには
ブロック塀に
わたしだけ上がれなくて
うずくまってしまったの。


それで、
猫友さんが
わたしたちを保護すると
いうことになった。



おねえちゃん、
すぐつかまったの。
わたし びっくりしたし、
こわかったし、



それに…
さびしかった。
おねえちゃん…


もうあえないのかな。


それからね、
お店が 閉店することになって
にんげんは とても心配していた。


みぞおちさんも
心配して
何度か見に来てくれていたらしい。

わたしは 会えなかったけど。



それから
わたしは そこのお店に行かなくなった。



おとうさんは ときどき
来ていたみたい。


わたし、
しんどくて 動けなくなってた。


また、やさしいごはんをくれるひとが
みぞおちさんに
連絡してくれたみたい。



『くろちゃん、だいじょうぶかな』
って。




わたしは だいじょうぶ。
おねえちゃんが
いなくなって
さびしくなったけど…




ふと 身体が軽くなった日の朝、
ようやく
みぞおちさんに抱っこされた。

身体は 冷たくなって
もう動かなくなっていたけど
みぞおちさん、見つけてくれた。
なんとなく
ここかな、って
車の下を 覗いたんだって。

そしたら
わたしが寝ていたんだって。



かなしくないよ。
わたし 生きたよ。
いっしょうけんめい生きたよ。

想ってくれる気持ちで
繋がるのが魂だから、って
みぞおちさんが
『つむぎ』って名前をつけてくれた。



紡いでいくいのち。


また、あおうね、って
お話した。




 何度だって 生まれ変わって
また 形を変えて
出会うんだから。

だから、
いつもあいしているよ。
すべてを。













少し つむぎの気持ちを 都合の良い人間寄りに書き過ぎたかなぁ、と思いますが。


数年前のことです。
猫友さんから バイト先に 野良猫親子が来ると聞いていました。
写真や動画も よく送ってもらっていました。

可愛いと 呑気に見ていました。


家から 遠くて なかなか行くことは出来なかったのですが、

その頃 原付きはあったので
黒猫つむぎの様子がおかしい、と聞いて
一度 直接 見に行きました。


その後、
白黒の姉妹は 保護できて、
(猫友さんが保護しました)
無事 ずっとのおうちも見つかり、今はもう 大人になって 幸せに暮らしているようです。

気になっていたつむぎは
その後 見かけなくなり お店に来なくなったということでした。

お店も閉店ということになり、
いつもご飯をもらっていた親子が心配だったので
近所の人に お断りして、
しばらく ご飯を 少しずつ持っていくようにしていました。



会えなくなって 一週間くらい経ったある日の早朝、
ふと、つむぎに会える気がしました。

ただ、
元気な姿ではないかも、というのも わかりました。

まだ薄暗い4時頃だったのですが、
原付きで ひとり向かいました。


こういう時は 確信があります。


すぐに 見つけました。



つむぎは、お店の隣りの家の車の下で
横たわっていました。
目やにがついて固まっていて、
がりがりで
骨が浮き出ていて、
虫が 少し集りかけていました。

身体は冷たいけど
まだ 硬直はしていませんでした。

朝方にかけて
亡くなったのだとわかりました。


しんどかったね。



よしよししました。




どうしようかな、と思ったのですが
このまま帰ることもできず、
つむぎを 連れて帰ることにしました。


連絡をくれていた猫友さんに 伝えると、
ありがとうと言ってくださって
引き取って 供養するということだったので 渡しました。

あとで
色とりどりのお花に囲まれたつむぎの写真を送ってきてくれました。




野良猫たちとは、いろんな思い出がありますが、つむぎはまた 記憶に強く残ったいのちです。

なんにもできず、
明らかに 体調が悪いのは気づきながらも 
救ってあげられませんでした。

直接 元気な姿を見たのは
一度だけでした。


 つむぎが 生まれて初めて
にんげんの手に撫でられたのは
永遠の眠りについてからです。



 だけど、つむぎは諦めていません。
幸せになるんだそうです。
何度だって チャレンジするのだそうです。


まっすぐなひとみで
そう伝えてくるようでした。


つむぎから 感じた気持ちです。



こういういのちに出会う度
わたしも 強くなるんだ、と思います。

 つむぎは、
こうして わたしの中にも
ずっとずっと残って 生き続けるのです。






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