Cannonball Adderly- Quintet Plus (1961)
この不思議なタイトルは当時のレギュラークインテットにウィントンケリーが加わった編成で録音されたことから来ています。レギュラーメンバーのピアニストのヴィクターフェルドマンもウィントンもキャノンボールとの録音は珍しいので貴重な一枚です。また本作を最後に純粋なハードバップから離れソウルやファンキー、モード等に移っていくためビバップをするキャノンボールの集大成とも言えます。
キャノンボールアダレイ:アルトサックス
ナットアダレイ:コルネット
サムジョーンズ:ベース
ルイヘイズ:ドラム
ヴィクターフェルドマン:ピアノ(1、6)、ヴァイブ(2〜5)
ウィントンケリー:ピアノ(2〜5)
ロンカーター:チェロ(8)?
聞き慣れないメンバーであるヴィクターフェルドマンはイギリス出身のピアノ、ヴァイブ、ドラム奏者で幼い頃から才能が話題になっていたようです。キャノンボールアダレイの他にもグレンミラーやウディハーマンやジューンクリスティとも共演経験がありリーダー作もリリースしています。マイルスデイヴィスとはSeven Step To Hevenを共作しバンド加入を誘われますが金銭面を理由に断ると西海岸でセッションミュージシャンとして活動します。この頃はスティーリーダンやジョニミッチェルのアルバム録音に参加しています。(マイルスのバンドにはジョンマクラフリン、デイブホランド、ポールバックマスターと意外にもイギリス出身の人が多いです)
Arriving Soon
Work Songのようなスローテンポの重厚なメロディから始まりアップテンポに転調するハードバップナンバー。まるでカーチェイスか戦闘機のドッグファイトのごときホーンアンサンブルがめちゃくちゃかっこいいです。
Well You Needn’t
ビバップのような早いテンポでアドリブ多めの曲。特にヴィクターのクールな音色の楽器なのに熱々のヴァイブソロがかっこいいです。オリジナルはセロニアスモンクです。
New Delhi
ナットによりリリカルなコルネットとヴィクターのヴァイブがメインの曲。ナットのコルネットがマイルスデイヴィスそっくりなので同じヴァイブ入りの編成で録音されたマイルスのBag’s Grooveを思い出します。実際アドリブの順番とかコルネットとヴァイブの絡みとかがよく似ているしキャノンボールの曲なのにほとんど出番がないのでサックスがいないBag’s Grooveを参考にしたんじゃないかなと勝手に想像しています。ヴィクター作曲。
Winetone
ケリー作の不思議なテーマの曲。スローで気怠いホーン2人とルイヘイズのドラミングが印象的です。ドタバタしたドラミングだとマックスローチやフィリージョージョーンズもいますがこの2人が力も強くパワーを感じのに対してルイはそこまで力強さはなく個性が微妙に違います。
Star Eyes
スウィンギーなミディアムナンバー。ナットの甲高いコルネットが印象的です。また珍しくサムジョーンズのベースソロも入ります。
Lisa
アップテンポのファンキーながらもビバップ的なソロが印象的な曲。ウィントンのソロの時バッキングでマイルスのSo Whatに似たフレーズを吹いたり兄弟ならではの息のあったホーンセクションと聴きどころがとても多いです。CDではボーナストラックとしてtake3が追加されています。
O.P.
CD化の際に加えられたボーナストラックでこの曲ではキャノンボールは参加していない代わりにチェロ奏者が加わっています。データが残っておらず不明ですがプロデューサーのオリンキープニュースはロンカーターではないかと言っており、そう紹介されることが多いです。この頃のロンカーターはエリックドルフィーのグループでチェロを弾き、リバーサイドと契約していたピアニストのボビーティモンズのバンドでベーシストをしていた時期なのでその可能性は高いと思います。
コネクション:English Man In Vee Jay
ヴィクターフェルドマンはヴィージェイというレーベルからソロアルバムを出しています。ヴィージェイはシカゴのマイナーレーベルでジョンリーフッカーやウィントンケリー、ウェインショーターなどのレコードを製作したこのレーベル実はビートルズのレコードをキャピタルより先に販売しています。