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Sly&The family stone Fresh 別ミックス版 (1973)

今回はSly&The family stoneのFresh(別ミックス版)を紹介します。スライのフレッシュは暴動と並ぶ後期スライを代表するアルバムです。実はこのアルバムは別ミックスがリリースされています。今回はその経緯、僕の感想なんかも書いていきます。

スライは1973年に新アルバムリリースのために録音をします。しかし、何を思ったのか完成したマスターテープを捨てて再録音します(In timeを除く)。そして73年にLPでリリース(邦題は輪廻)。その後91年に日本でスライのアルバムのCD化されることになりました。しかし何故かアメリカから送られたテープは破棄された方。しかも誰もそのことに気が付かず(もしくは気づかないふりをして)リリースされました。
見分け方としてはリリース年が91年になっている、ジャケのSlyが赤(正しいものは黄)、帯に書かれた値段が1800円になっています。またボーナストラック付きのCD、配信のオルタネイトトラックは別ミックス版と同じものです。
内容としては別ミックスのほうがホーンやコーラスが小さく、逆にベースの音が大きくミニマルな印象を受けます。

今ではこういったことを知っていますが、初めて借りた時はそんなこと知りませんでした。後になってベスト盤に収録されている曲と音が違うことに気づいて調べるまでずっと知らずに聴き込んでいました。だからオリジナル版を聴いても違和感があり、ついこちらを聴いてしまいます。

メンバー

スライ:ボーカル、キーボード、ベース、ギター、ハーモニカ他
フレディストーン:ギター
ローズストーン:キーボード
シンシアロビンソン:トランペット
ジェリーマルティニー、パットリッツォ:サックス
ラスティアレン:ベース
アンディニューマーク:ドラム
リトルシスター:コーラス
英語版ウィキペディアにはラリーグラハムが二曲にノンクレジットで参加とありますが本当でしょうか?

曲紹介

In time
この曲だけ正規版、別ミックス版共に同じテイクです。ノイズが入ったチープで少しこもった音質が逆にかっこいいです。

If you want me to stay
かなりミニマルなファンクです。スライの語りっぽい歌もクセになります。正規版だと微妙にテンポがあげられ、ホーンとギターの音も大きくスライもちゃんと歌ってます。

Let me have it all
短いフレーズをループさせたような曲。ひょっとしたら本当にループさせているかも(スライなら有り得そう)

Frisky
ひとりごとに演奏をのせたような不思議な曲(ボーカルがひとりごとやパッと思いついたメロディに合わせて適当に歌っているようなのは全ての曲にいえます)。かなり密室的です。

Thankful n’ thoughtful
チープで音数の少ない曲。ミーターズの曲をスライがカバーしたらこんな曲調になりそう。奥に引っ込んでいるホーンがここでは全面にでて逆にリズムギターが引っ込んでいます。

Skin i’m in
ドラムは疾走感あるリズムですがベースとホーンはそれについていけてないような不思議な曲です。中盤あたりから足並みが揃うのも面白いです。

I don’t know(satisfaction)
若干ストーンズのサティスファクションに似たフレーズも出てきます。しかしこの曲では満足が分からないことに対する屈折した感情が漂っています。この曲もホーンが目立っています。

Keep on dancin’
少し投げやりなdance to the musicのコーラスで始まる曲。ワウとリムショットがかっこいいです。踊りすぎたことへの疲れを感じます。

Qué será será
ドリスデイのカバー(この人のことはビートルズのDig itの歌詞に出てくることしか知らない) Qué será seráとはなるようになる(だから心配しなくていい)みたいな意味らしいですがここではなるようにしかならないという諦めに近い諦観も感じます。スライ流ニューソウルみたいな曲調です。

If it were left up to me
ポップなコーラスと演奏が印象的でこのアルバムの中では若干浮いてます。でも時々聴こえるスライのボソボソした声を聴くとハッとします。

Babies makin babies
最後はまた密室ファンクです。この曲だけは正規版の方が好きです。

スライの代表作暴動と同じレベルのいいアルバムです。正規版を先に聴くべきですがボーナストラックのオルタネイトバージョンが気に入った人、スライの曲を聴けるだけ聴きたい人にはおすすめです。珍しい盤ですがプレミアはなく(ブックオフで500〜700円ぐらいで売ってます)入手は簡単です。