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Louis Jordan - Rock'N'Roll

大きな目をぐりぐりさせたユーモラスな風貌でアルトサックスはソウルフル、歌も下世話なアップナンバーからしみじみとしたバラードまでお手の物。大衆芸能の真髄ともいえるルイジョーダン。その音楽性はロックンロールを、風貌とアルトサックスはメイシオパーカーを思わせますが過小評価されすぎな気もします。ロックンロールはブルースとカントリーの合いの子だとかチャックベリーが始祖だというのが定説ではあるものの彼はロックンロールができる前にそれを完成させています。ですが細かいことは言わずにその派手な演奏とノリに身を任せるのが良いと思います。本作は1950年代になってマーキュリーに録音したものでほとんどは1940年代にデッカに吹き込んだ曲の再録です。大体再録ものはオリジナルを忠実に真似ようとして劣ってしまうか変に今風にアレンジしてオリジナルが一番となるのがオチですが、ルイのパフォーマンスには衰えは一切なく、クインシーもどこまでなら今風にしてもおかしくないかをしっかりと考えているので再録だからと敬遠するのはあまりにももったいない一枚です。

メンバー
ルイジョーダン:アルトサックス、ボーカル
1~14
アーニーロイヤル:トランペット
ジミークリーブランド:トロンボーン
バドジョンソン:バリトン、テナーサックス
サムテイラー:テナーサックス
アーニーヘイズ:ピアノ
ミッキーベイカー:ギター
ウェンデルマーシャル:ベース
チャーリーパーシップ:ドラム
クインシージョーンズ:アレンジ、指揮
チノポソ:ボンゴ(11~14のみ)

19から21(15から18は不明)
ドロシースミス:ボーカル
ジャッキーデイヴィス:オルガン
アーヴィングアシュビー:ギター
ビルハドノット:ベース
マーヴィンオリバー:ドラム

Ain't Nobody Here But Us Chickens
アップテンポのジャンプナンバー。イントロの荒っぽいアルトとギターのユニゾンなんか並みのパンクより荒っぽくてかっこいいです。

Choo Choo Ch'Boogie
列車の走行音をまねたアルトがかっこいいジャンプナンバー。この疾走感はロックンロールです。

Knock Me Kiss
しっとりとしたバラードナンバー。甲高いトランペットや最後にキス音が入るのが下世話な感じで好きです。この時期のポップシンガーならやらないよね。

Caldonia
ミッキーベイカーのブルースをベースにしたパンキッシュなギターがかっこいい曲。ギターが目立つせいかかなりロックンロール度高めです。

Let The Good Times Roll
ブルース度高めのミディアムナンバー。ちなみにブルースブラザーズで出所して部屋に戻った二人が聴いていたのはこれのオリジナルバージョン。もし生きていたらルイもあの映画でユーモラスなパフォーマンスを披露していたかもしれません。

Is You or Is You Ain't (My Baby)
ダイナワシントンやダイアナクラールもカバーしたバラードナンバー。これらのカバーではしっとりとしたジャズバラードでしたがルイのバージョンはしっとりとしつつもブルースが見え隠れしています。

Beware Brother Beware
まくし立てるルイとはやし立てるバックが賑やかな一曲。まくし立てるルイを聞いているとラップも突然無から生まれたわけではなく、ここら辺もルーツの一つかもしれないと思います。

Big Bess
ノリのいいスウィングが楽しい一曲。ここではバリトンが聞こえるのでテナーはサムテイラー一人のはずです。この頃のサムはクインシージョーンズのアルバムにも参加していて一番ジャズをやっていた時代です。

Cat Scratchin
ブルースにジャズ風のホーンセクションがのった曲。ギターがかっこいいです。

Don't Let The Sun Catch You Crying
切ない雰囲気のバラードナンバー。アップは激しくアグレッシブに、バラードは奇をてらわずストレートにしみじみと攻める。古き良きチャンバラ映画やマカロニウエスタンに通ずるものを感じます

I'm Gonna Move To The Outside Of Town
スローテンポのブルースナンバー。ホーンセクションもトランペット以外は控えめでジャムセッションの終わりのような雰囲気です。

Salt Pork West Virginia
スウィンギーなブルースナンバー。シンプルながらも強力なスウィングビートとブルース由来の荒っぽいギターやサックスのソロの組み合わせが最高に痛快です。

Run Joe
ここからはチノポソが加わっていてラテンフレイバーが加わります。チノはディジーガレスピーと共にキューバンジャズを作ったチャノポソの親戚(を自称していた)人でコンガや拍子木みたいな音が加わった賑やかな曲になっています。

Early In The Moring
ラテンビートを使った曲でアーニーヘイズのラテン風ながらも端正にスウィングするピアノが印象的です。

Morning Light
カリプソ調のラテンナンバー。この楽しければなんでも演奏してやろうぜ感がたまらないです。

Fire
サイレンをまねたホーンが面白い破れかぶれなまでにアップテンポな曲。ギターといい力強いベースといいたまらないです。

Rock Doc
シンプルなジャズベースをベースにしたジャンプナンバー。

Ela Mae
ウォーキングベースのロックンロールナンバー。ジャズ→ジャンプブルース→ロックンロールという線が見えてきます。

The Jamf
ここからはピアノに変わりオルガンが使われます。さぞコテコテになると思いきや意外と端正にスウィングするインストです。ただこれはこれでかっこいいです。

Saturday Night Fish Fly
意外とあっさりとしたR&Bナンバー。ルイは1908年(明治時代)生まれなのでこの時40代後半ですが当時の若者と同等のセンスを持っているのは驚きます。

Got My Mojo Working
マディウォーターズで有名なブルースナンバーですがカウントベイシーやアールグラントのようなオルガンが印象的なスウィングジャズです。オルガンを弾くジャッキーデイヴィスはジミースミス以前のジャズオルガン奏者としてもっと聴きたい人です。