Jimmy Smith . A New Sound - A New Star.Vol1(1956)
本作は記念すべきジミースミスの初のアルバムです。元々バドパウエルと親交がありピアノを弾いていたジミーは1955(52説も)年頃からオルガンに転向し、R&Bバンドでのツアーで独自のスタイルを磨きます。彼がブルーノートと契約するきっかけになったのはとある歌手がブルーノートに吹き込む時のバックバンドに指名したこと。どんなやつか事前に聴いておこうとライブ会場へ向かったブルーノート社長のアルフレッドライオンと副社長フランシスウルフはその演奏に圧倒され録音を決意。初めはオルガンでジャズを演奏することができるのかという疑問もあったようですが結果的にはヒット。ブルーノートの経営を安定させると同時に新たなジャズを作ることになりました。
メンバー
ジミースミス:オルガン
ソーネルシュワルツ:ギター
ベイズリーベイペリー:ドラム
The Way You Look Tonight
一曲目からゾクゾクとする演奏です。バップでありながらもブルースやファンキーな要素もある演奏は肥えた耳を持つアルフレッドを驚かせると同時にあまりジャズを聴かない黒人にも売れたことが不思議ではありません。
You Get ‘Cha
ブルージーなナンバーでジミーのベースプレイがグルーヴィです。ソーネルのソロは同時代のリーダー作がある著名なギタリストと比べても遜色ないものでなぜ彼がアルバムを一枚作らなかったのか、多くのセッションに参加しなかったのか不思議です。
Midnight Sun
まろやかなトーンで歌うようにフレーズを弾きつつベースをスウィングさせるジミーは後の演奏ではあまり聴かないように思います。コテコテのジミーもいいですがこういうジミーもまたいいです。
Lady Be Good
ここではオルガンの特徴であるロングトーンを使わず速弾きをしています。バップなジミーもかっこいいです。控えめながらも時々「ヤー、オー」と掛け声?が入っているのでノリノリで演奏するジミーが目に浮かびます。
The High And The Mighty
くつろいだジャムセッションのような演奏の曲。ジミーというとコシのある音ですがここではピャラピャラした音で演奏しています。
But Not For Me
シンバルを多用した急かすようなドラミングがかっこいい曲。ジミーのプレイも迫力いっぱいの演奏です。
The Preacher
ホレスシルバーのナンバー。ファンキーなナンバーをオルガンで演奏ということでソウルフルな音を期待していましたがホレス以上にハードバップっぽい演奏をしています。でもこれはこれでありです。この曲はジミーのお気に入りだったようでこの曲が入っているライブ盤もあるのでもしソウルフルなこの曲が聴きたいならライブ版(個人的にはThe Masterがおすすめ)も聴いてみてください。
Tendely
この曲ではオルガンらしいロングトーンを多用しています。アニタオデイのスウィンギーなバージョンに聴き慣れているのでこのコテコテの演奏はちょっと不思議な感じです。
Joy
少し有名な話ですがアルフレッドライオンは録音の時オリジナルの「ブルースナンバーを書いてくること」というのが条件でした。そんな条件に応じてジミーが書いたのがこの曲です。ジミーの演奏はそこまでブルース感はないですがソーネルのケニーバレルのようなブルースギターはこれぞジャズブルースといった演奏でかっこいいです。
参考文献
小川隆夫著 ジャズ超名盤研究3 シンコーミュージックエンタテインメント(2020)