イベントレポート ~先駆者たちが大集合!G7・五島ワーケーションサミット~(2021/6/6開催)
お久しぶりです。溝口翔太です。
6/6 (日曜)10:00~12:00に開催された五島ワーケーションサミットに参加させていただきましたので、その内容をレポートしたいと思います。
一般社団法日本ワーケーション協会主催のイベントです。元々は五島列島で現地参加型のワーケーションイベントを開催する予定でしたが、コロナの影響もあり、オンラインイベントの開催となったようです。
ワーケーション業界のトップランナーが語る内容なので参考になる部分が多いと思います。関係人口寄りの話になるので、ワーケーションを通して地域とつながりたい方や、ワーケーションを推進している自治体の方、ワーケーション関連の事業者の方向けの内容になります。
交流人口(観光の延長)的な形のワーケーションを想定している方にとっては軸が違う内容になるため、少し物足りないかもしれません。
概要
■講演■
「リモートワーク、ワーケーションを通した働き方、生き方の変化とは?」(株式会社KabuK Stlyeの大瀬良 亮さん)
時間:15分程度
内容:HafHを通して見えるワーケーションの実態をデータを基にご説明されていました。
「五島市のワーケーションの取組」(五島市地域協働課 庄司透さん)
時間:15分程度
内容:五島市のワーケーション、移住の取り組みのポイントについてご説明されていました。
■ディスカッション■
ファシリテータ:株式会社KabuK Stlyeの大瀬良 亮さん
パネラー:五島市地域協働課 庄司透さん
和歌山県情報政策課 桐明 祐治さん
鳥取県ふるさと人口政策課関係人口推進室 岡本 圭司 さん
毎日みらい創造ラボ・毎日新聞記者 今村 茜さん
一般社団法人みつめる旅 代表理事 鈴木 円香さん
日本航空株式会社人財本部人財戦略部 東原 祥匡 さん
時間:75分程度
内容:自治体、事業者、ワーケーションの実践者など多様な視点からワーケーションについての議論を交わされていました。
詳細についてはこちらからご確認ください
講演「リモートワーク、ワーケーションを通した働き方、生き方の変化とは?」(株式会社KabuK Stlyeの大瀬良 亮さん)について
【講演の流れ】
最初にHafHの紹介から始まり、その利用者特性から現在のワーケーションを取り巻く状況について説明されていました。
また、石川県で実施したワーケーションのイベントを踏まえつつ、ワーケーションのニーズについての分析もありました。
【講演のポイント】
コロナ禍という状況ではあったが、2019年から2020年でHafHの登録会員数は増加した。
その登録者を年齢別でみると、30代以下が72%を占めている。2019年から2020年にかけては40代は微増。
またサービスの利用傾向でみると、東京都周辺での利用率が高く、平日に自宅(生活拠点)の近くで使うという形が多い。
ワーケーションは広まってきているが、何故その自治体にワーケーションしにかなければならないのか。それを自治体から情報を発信していかなければ、人は集まらない。
例えば、和歌山・鳥取 ⇒ 企業誘致、沖縄 ⇒ 観光のように自治体ごとにどのようなワーケーションをターゲットにしているかを発信する必要がある。
5/21~30に石川県で開催したSlowワーケーションについて、そこでしかできないことがある特徴のあるホテルが人気だった。また1週間以上の滞在が多く、また参加者の50%程度が会社員であった。
1週間以上の期間の長いワーケーションというところが潜在的なニーズとしてあるのではないか。
講演「五島市のワーケーションの取組」(五島市地域協働課 庄司透さん)
【講演の流れ】
五島市でのワーケーション、移住に関する取組の紹介から始まり、どのようなポイントを気を付けながらそれらを進めたのかについて説明されていました。
【講演のポイント】
ワークインバケーションを誰のために、何のために取り組むのかこの2軸から考えた。
ワーケションを推進する目的は以下5つ
①移住、定住人口につなげるための関係人口増
②島内の事業創出
③観光閑散期(冬)の需要喚起
④市役所内の人材育成
⑤外部人材との知的、人的刺激を受ける機会増
上記の目的は最終的に地域住民(地域活性化)のために実施
ワーケーションはあくまで目的を達成するためのツール。
ワーケーションを進めるうえで、他の自治体との違いをアピールすることが大事。
五島市の場合は2020年のワーケーションイベントはあえて(観光資源の乏しい)真冬にワーケーションイベントを開催することで差別化を図ったが、50人定員に対して、62人が参加し、イベント期間中の1カ月の間に市民を含む682人がイベントに参加。
経済波及効果も1060万円と成功をおさめた。
ワーケーションは加者、企業、市民というステークホルダーが存在する。そのため行政としても部署横断(商工、観光、広報、地域協働課)で対応が必要なため、行政内のコミュニケーションがとても大事。
ディスカッションについて
【参加者】
ファシリテータ:株式会社KabuK Stlyeの大瀬良 亮さん
パネラー:五島市地域協働課 庄司透さん
和歌山県情報政策課 桐明 祐治さん
鳥取県ふるさと人口政策課関係人口推進室 岡本 圭司 さん
毎日みらい創造ラボ・毎日新聞記者 今村 茜さん
一般社団法人みつめる旅 代表理事 鈴木 円香さん
日本航空株式会社人財本部人財戦略部 東原 祥匡 さん
【流れ】
大瀬良さんがファシリテータを務め、行政の視)、事業者の視点、ワーケーション実施者、ワーケーションに社員を送り出す企業目線でワーケーションに関する議論を行った。
【ポイント】
企業としてワーケーションをどうとらえているのか
社員を送り出す企業目線(東原さん):
ワーケーションは自由度が高いため、自分で考え行動する自立型人材でなければ実施するのは難しい。
まだまだワーケーションしたいという動機のひとは少ない。そのため、間口を広げて全員来てくださいだと難しいと思う。
コワーキングスペースがあればいいだけではななく、ニーズに合わせて受け入れる準備をするのが必要だと思う。
ワーケーションに関する行政の取り組みについて
行政目線(五島市庄司さん):
五島のワーケーションは民間(Business Insider Japan主催)から始まって、行政に広がった。
行政目線(和歌山県桐明さん):
最初は行政が旗をふっていたが、今は民間に移行している。
参加したい人の気持ちを理解している民間主導の方がいいものになっていると思う。
行政目線(鳥取県岡本さん):
自治体主導で入るところは多いのが実情だと思う。
鳥取県で言うと、最初は行政が旗を振っていたが、
現在はDMOが補助金をとったり、民間が参入してきて自立的に進めてくれている。
また、ワーケーションを始めた当初は地元の盛り上がりが弱く、オンライン関係人口未来プロジェクトを効果的に活用し外部の力を積極的に借りるなどしてワーケーションを軌道に乗せた。地元を盛り上げるということについては行政が入らないとなかなか進みづらい。
行政目線(桐明さん):
行政目線でみるとワーケーションは複数の部署が絡むため、総合力のいる活動だと思う。
ワーケーション実践者目線から見たワーケーションの現状
事業者目線(鈴木さん):
現状観光ベースに考えてる自治体が多いと思う。プログラムも観光周遊系の時間がかかるものや、体力的に消耗が激しいものが多い印象で、子連れワーケーションという視点で見ると仕事時間の確保や、移動すると疲れる面もあるので、ワーケーションする人のニーズに合わせたプログラムの考え方が大事。
あとは、また行きたくなるような人との出会いがあるかどうかというのが大事だと思う。その出会いがあれば、そこが第2、第3の故郷となり関係人口増加につながると思う。
五島市のワーケーションイベントで取り組んだこと
事業者目線(鈴木さん):
子連れでワーケーションするというニーズに合わせて、地元の保育園の一次利用や、小学校の体験入学などいろいろ構えたが、行政の方が中心となって進めてくれたため、非常に助かった。
行政目線(庄司さん):
脚を使って1件1件相談ベースで話をさせてもらった。最初は先方も半信半疑だったが、市の重要ミッションに紐づいているということを理解していだいた後は積極的に協力していただけた。
また、事業者さんに対しては委託額以上の経済効果を出してほしいといことは常々お願いしていました。
事業者目線(鈴木さん):
(庄司さんの発言を受け、大瀬良さんの質問(委託額以上の費用対効果を要求されることのプレッシャーは?)に対して)
最初のワーケーションイベントで委託額の2倍、その次も延期になったが登録者ベースで3倍の費用対効果は見込めれていたのでそれほど不安はなかった。
ワーケーションイベントを成功に導くには?
事業者目線(鈴木さん):
能動性をもってきたもらうマインドセットが大事。お客様気分ではなくコミュニケーションを自らとること。
事業者としてはコミュニケーションが取れる環境は提供するので、その中で自律的にコミュニケーションをとることでイベントは盛り上がるし、ワーケーションの満足度もあがる。
五島市の例ではSlackで地域の人、自治体、参加者がやりとりできるようにしました。
ワーケーション実践者目線(今村さん):
旅行ツアー感覚だと難しい。
一緒に作り上げるマインドが大事。私も五島市のワーケーションイベントに参加したが、参加前にやることが多くて途中で脱落していく人もいたと思う。
事業者目線(鈴木さん):
移住に繋げたいという期待もあるので、熱量の高い人を集めることが重要だと思う。そういう点ではある程度参加するのにハードルがあってもいいのかもしれない。
ファシリテータ(大瀬良さん):
HafHが開催した石川のイベントも、コロナの影響で兼六園のような観光地が締まっている時に開催したが、今考えてみるとそれが一つハードルとなっていたのかなと思う。(観光資源の乏しい中であえてワーケーションに参加するという点で)
ワーケーションに対する県、市町の立場の違いについて
行政目線(岡本さん):
ワーケーションは一つの街では完結しない場合が多い。
そのため、複数自治体を組み合わせて考える必要がある。
その中で、まずは尖った活動をしている自治体と一緒に進めながら、そこの活動を発信して広げていくという形で鳥取では進めています。
地元でのワーケーションの認知度について
行政目線(桐明さん):
ワーケーションを始めた2019年から比べると、和歌山県の弱い2次交通などもDMO主導でパッケージを用意していただいたりしており、認知度はだいぶ上がってきていると思う。
ファシリテータ(大瀬良さん):
私が最近和歌山県をワーケーションで訪れた際に、空港から宿泊先までタクシーで移動しましたが、タクシーの運転手もワーケーションについて知っていて、かなり認知度が高まってきているなと感じましたね。
事業者目線(鈴木さん):
五島市のワーケーションイベント期間中はワーケーション専用のタクシーチケットを作って、それを使って移動してもらうようにしました。そのおかげで島内タクシー事業者の中ではワーケーションの認知度がかなり高まりました。
ワーケーション実施時の事故について企業はどのように考えますか?
企業目線(東原さん):隠れワーケーションのような形で実施されると企業としても守ることができないので、どこで働いているのかなどの情報は報告してもらうようにしています。
完全に業務外(例えばサーフィンなど)は労災に該当しないと思うが、業務内に発生したことは労災に当たると思う。ただ案件ごとの判断が必要になると思います。
後は、性善説に従って進めるだけかなと思います。
今後のワーケーションについて?
ワーケーション実施者目線(今村さん):
ワーケーションするためには自分から情報を発信して、周りに認知してもらうことが大事だと思う。あとは、子連れワーケーションという点だと子供は大人よりも順応性があるので、迷ったらまずはやってみるのがいいと思います。
企業目線(東原さん):
短期の生産性でみるのではなく、長い目線でみてワーケーションは取り組むべきことだ思うので今後も積極的に取り組んでいきたい。
行政目線(五島市庄司さん):
どういう人に来てほしいかを発信することが大事。
事業者目線(鈴木さん):
参加者の満足度を徹底的に考えることが大事。結果的にそれが地元の方にためにもつながると思う。
おわりに
事業者、行政、ワーケーション実施者、企業など多様な目線でワーケーションに関する情報を発信していた。
どちらかという関係人口よりのワーケーション向けの話であったため、地域とつながるためのワーケーションを考えている方、行政の方にはとても参考になる内容だと思った。
イベントの中で印象的だったのは受け入れる側の情報発信の重要性(どのようなワーケーションができるのかを)、ワーケーションはあくまでもツール、その先の目的を考えることが大事などは多くの方がおっしゃいた。
地方とワーケーションする人をいかにマッチングしていくか、ワーケーションの目的を踏まえどのように設計していくが重要になると感じた。
地方とワーケーションする人をつなぐという点においてはパラレルコミュニティコーディネーターの岩田さんやグミさんのように地方と人をつなぐような活動をされている方が重要になると思います。
一方で、クロスマーケティング・山梨大学のワーケーション調査報告では交流人口的なワーケーションを希望する人が多くみられるため、そのようなニーズを持っている人からすると少し期待する内容とは違うと思われるので、今後ワーケーションのイベント自体がもっと多様化していのではないかと思う。
以上、溝口がレポートさせていただきました。
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