水の空の物語 第5章 第30話
「私たちは、何度も湖に足を運びました。でも簡単に願いを叶えてもらえるはずはありません。でも通ううちに、私たちは、頻繁に湖を抜け出す龍を見かけるようになります。それが立貴でした」
「そのときが初対面か?」
「ええ。他の龍はあまり湖から出ないのですが、立貴は逆でした」
「なんで?」
「彼にとって湖は、居心地がわるい場所だったようです。立貴は湖龍ですが、明日野湖の龍の一族の血縁ではなかったのです」
「え?」
「立貴は生まれてすぐ、明日野湖に捨てられていた龍だそうです」
そうか、と飛雨はつぶやく。
でも、今は優月たちがいるもんな。
飛雨はそういって、瞳を伏せた。
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