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水の空の物語 第5章 第5話
「外出禁止……」
枕をぽんぽんと、ボールのように弄びながら、飛雨がつぶやいた。
「風花の、夜の外出禁止、まだ続いてるのか?」
「うん……」
風花はさらに鬱々とする。
風花は父親に、門限を五時をくらっていた。ゴールデンウィークが終わるまでだ。
五日前、霊泉に行った時、帰宅が十一時を過ぎたのが原因だ。
風花は、火がついたように怒る父親に、一時間説教された。彼があれほど激昂したのは初めてで、本当に怖かった。
「禁止なら、霊泉には泊まれないな。優月は泊まるんだよ。どうせなら、みんな一緒にって思ったけど」
「え? 優月さん霊泉に泊まるの?」
風花は声をあげる。
じゃあ、みんなでお泊まりってこと?
「いいだろ? なんだか旅行みたいだ。楽しいこと、いっぱいする予定なんだぞ」
「いいなーっ」
風花は 絞り出すような声をあげてしまった。
うらやましい。
うらやましすぎて、目まいがする。
お泊まり……。
と、いうことは、ずっと夏澄くんたちは一緒だ。
そして、いろんなことをして遊ぶ。
旅行とか合宿みたいに、一日中一緒に、楽しいことをいっぱいするのだ。
楽しい楽しい時間が積み重なるだろう。
そして夏澄くんたちは終わりを惜しんで、きっといつまでたっても眠らない。
終わらない一夜だ。