水の空の物語 第2章 第6話
「では……」
ふいに、ひろあが声に力を込める。鞄からノートを取り出した。
ずっと前、高校合格発表の日に三人で買った、花模様のノートだ。
ひろあは顔の前でノートを振り、注目を集めようとする。
「ほら、『想い出ノート』だよ。みんなで書こうーっ」
「そんなこといったって、今日は書くようないいことなかったのに」
「だからね、今日のテーマは、未来のお祝い会のプラン」
ひろあはにっこりと風花たちを見た。
『想い出ノート』は、中学のときからの約束だ。
みんなで高校生活を記録しようと決めていた。三人で日記のように好きなことを書くのだ。
初めに書いたのは、高校一年の一学期の目標だった。
風花の目標は、獣医になるために、成績をあげること。
ひろあの目標は、同級生の彼氏を見つけること。
貴人に会う前のひろあは、同級生の彼氏と一緒に修学旅行に行き、一緒に卒業するのが夢だった。
香夜乃の目標は、和服の似合う落ち着いた大人になることだった。
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