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水の空の物語 第4章 第29話

『なんか、嬉しそうだね。どうしたの?』

 夏澄が声を弾ませた。

「……なんでもない」
 風花はわらいを堪える。

 自分が精霊になったような気がします。なんて、恥ずかしくていえない。

 こんな気持ち、子供っぽいだろうか。我に返ってそう思っても、わくわくは止まらなかった。

 自分は精霊たちと一緒にいる。

 そんな夢みたいなことが、改めて実感できた。

『えー、教えて欲しいな』
『そうよ、気になるわ』

 姿が見えないせいか、夏澄たちの声音は、いつもより色濃く聞こえた。

 夏澄の声は、ぴちゃんぴちゃんと水面に落ちる雫のような響きの、澄んだ声だ。

 スーフィアの声は優しい。

 色をつけるなら水色で、凪の海のようだった。



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