水の空の物語 第5章 第13話
「だいじょうぶ? 優月」
隣に立つスーフィアが、不安気にする。
こんなときでも、優月は背中をまっすぐ伸ばしていた。貴族のように、姿勢を崩さない。
「申し訳ございません。自分の木から遠く離れるのは初めてなので、少し疲れたようです」
「すわって、優月」
夏澄が駆け寄り、優月の肩を支えてすわらせた。彼は水色に光る手を、優月の額に当てる。
霊力で癒やしているのだろう。
やがて、優月の表情はやわらいだ。
スーフィアは優月のとなりにすわる。
「どう? 優月。これがあなたが見たがっていた霊泉よ」
優月は目を見張る。まぶしそうに、じっと霊泉の見つめた。
「……ふしぎな、美しい色をしていますね。思ったとおりでした。この霊泉からは浄い力を感じます。特別な泉なんでしょうね」
スーフィアたちは、なにやら楽しげに話し出す。
だが、それと同時に、スーフィアのもうひとつの声が、風花の頭の中に響いた。
スーフィアが、風花たちの心の中に声を送ってきた。スーフィアは風花たちと霊力で会話がしたいらしい。