水の空の物語 第3章 第23話
「ありがとうございます。……立貴にも感謝しております」
いった優月は、スーフィアのひざの上のうさぎで視線を止めた。
「その仔はなかなか起きませんね。……草花」
遠くの草花に声をかける。
「この仔はどこがわるいんだ?」
「小毬は栄養失調だよ。ビー玉は、鶏卵場から逃げてきただけで元気。今朝会ったの。ここに連れてきたらみんなが怒るから、頑張ってもらい手探したのに」
「鶏卵場って、にわとりが教えてくれたんですか?」
スーフィアがふしぎそうにする。
「草花だけが動物と話せるんです」
優月は笑顔で答えた。
「草花ちゃん。小毬ちゃんはだいじょうぶよ。さっき夏澄が癒したの。完全に回復したら、目を覚ますから」
「ほんとにー?!」
草花がふいに立ち上がり、スーフィアの前に駆けてきた。
夏澄とスーフィアの手を握り、上下に振る。
「ありがとー、水の精霊さんたちっ。やっぱり霊力強いんだねっ」
「草花、立っていいとはいってないぞ」
優月の言葉を聞いていないように、草花はうさぎを撫でる。
「ねえ、優月、この仔たち、うちの仔にする。いいよねっ!」
「ビー玉は野生じゃ生きていけないからいいけど、小毬はだめだ。元々野生の仔だから、山に返す」
草花は瞳を見開いた。
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